2010/05/31
いつでもここには稽古場があり、いつでもあたしはそれぞれの志を待っている

昨日からピンターの稽古がはじまったらしい。あたしはまだ参加できない。「草迷宮」初日10日前の6月になった。早速昨日は劇場打ち合わせだった。スタッ フ全員の参加で細かいことがいくつか確認できて、演出の顔にもほっとした色が見えた。劇場の打ち合わせは大事なスタッフコミュニケーションなのだから。
実は、今回のこの「草迷宮」は生前の理生さんからいつも貰っていたあたしの劇団旗揚げのエールにやっと応える気持ちになって、今年のうちの公演は棚上げにして引き受けた。いつもなら寺山の命日に公演の報告をして、6月には稽古に入っているわけだから。
思いが強すぎて、主宰にたしなめられたこともあったが、あたしの予感通りの現状になっている。主宰は熱い。制作も熱い。尺八のD井さんも20曲も作曲し、鬼気迫る。スタッフもコツコツとがんばってくれている。
チケットが売れていない。今回若手の出演が8名もいるのに、チケットの山だ。あきれ果て、稽古場で説教をした。チケットを売れでもノルマでもない、お客様 に観て貰いたいという思いが足りない。えらそうな口をきいてもちゃんちゃらおかしい。主宰の恩に応えるには、芝居のしの字もできないのだから、ただ一生懸 命になれってことだ。
作品も演出も素晴らしい。そこに追いつきやがれ。
月曜日は恒例開かれた稽古場だった。稽古の前に古典に出演するという友人が何故か心配になり、老婆心からいろいろアドバイスしたりして、それでもいやな予 感がなくならなかった。稽古が終わってメールをみると若手の女優から笑止千万なメールが入ってきて、呆れて顎が外れた。漫画のように。
まあ、やっと心配してた友人の結末もついたようだし、若手生意気女優も理解をしてくれた。で、やっと稽古日記だ。
参加者3名。見学2名。このところ、少数の稽古ではあるが、参加者は同じではなく、いろんな人がやってきている。今回はダンサーY子がついにやってきた。 あたしはこの稽古のことをこうして書き、宣伝ではなく人に話している。彼女とは他の座組で出会った。それを縁に彼女のダンスを観たりもした。
芝居も身につけたらいいのに、表現として捉えたらきっと踊りももっとよくなるのに、と想ったりしていた。その彼女がその気になり、稽古場に来た。こういう ことしかないと想っている。稽古の内容はこれから記していくが、きっと彼女はこれをきっかけにはできたわけで、これができたことが大きい。彼女の友達たち も友達だし、あたしのこの稽古場は知っているが、ここには来ない。
それがうちでなくてもいいけれど、結局、こういうことが修行のはじまりなのだ。
歩く。感じる。シーンを創る。Mケルの歩き、安定してきたのだが、気が散る。それが見えると場が落ちる。M本、安定している。かっこいいと想う。Y子はリ ラックスすることを見せてしまう。リラックスを知ってはいるが、余計なところに力が入り、それを抜こうとする。これは表現ではなく、袖でやってほしい。歩 く姿は素敵なのだが、持続しないので、コマ送りのように見える。
シーン、3本。アイディアは面白いが、広がっていかない。想像力がまだまだ足りない。何度も言い、何度も書くが、予想のつくことは「劇的」ではない。予想を裏切るために裏切るのではなく、想像してほしいのだ。
Y子、発する言葉は味があり、面白いのだが、きこえない。声の大小ではないと想う。発信することができていない。
さらに感情を動かしながらの歩行。強い怒り。怒りがなかなか強くなっていかない。声を飛ばしながら、怒りの想像について話す。何に対して怒るのか。
感情を持ち、佇む、感情の調整のための課題。感情をどう見せていくかの表現の為の課題。身体表現まで。M本は身体表現を繰り返していくうちに呼吸が表現に なるのだが、そうしているうちに感情が抜けてしまう。つまり、感情と呼吸にずれができていく。これは精神の過呼吸状態と同じだと感じた。
Y子は感情はよく動き、感心。ただ、これが自由に動く身体と連動していかない。身体の表現が切り取られたダンスになってしまうので、表情が消えてしまうのだ。Mケル、とにかく感情を動かすことをおざなりにするので、ダメ。どうやろうかばかりで薄っぺらい。
続いて、深い哀しみ。はじめての挑戦でY子は涙を流せた。このダンサーの感性はいい。M本、感情が自由に動いていたのに、今回は非常に作為的だった。涙は流れない、当然だ。Mケル、継続、持続だね。すぐに0になってしまうから。
3つの感情の連動。強い怒り、深い哀しみ、安堵。それぞれに感情を変えていく。同時多発。Y子は丁寧にやれていた。これからはそれをもっとはっきり、細か くやれるようになりたい。M本はできるのだが、荒すぎる。細部を埋めていかないと。そこそこできるじゃだめじゃん。Mケル、手を考えても一生できない、丁 寧に感情を動かすのみ。
続いて、強い怒りのぶつけ合い。5連発。歩き、他者と怒りをぶつけあう。M本、瞬発力にムラがあるが、まあまあ。Y子、かわすことばかり。かわすのは、割合簡単なこと。上に、上に怒りを乗せていくことが必要だ。
Mケル、相手不在。怒りの方向が失速している。
それぞれにアドバイスし、怒りの課題、正対。8連発。次第にY子の怒りがはっきりしてきた。よい。
M本、もっと強いもんがほしい。Mケル、ネタは面白い、認める。ただ、中身ね。
エチュード。奇妙な部屋。まあまあのできのホームドラマ。笑。Y子の人間的魅力。今後、実感することを課題としていきたい。3名とも表面的和気藹々。違うんだなあ。
泥酔者の吹きだまり。1本。Y子に色気路線が見えたので、止めて、それを指定してみる。2本目、全然できないじゃん。相手の身体に触ると指定したが、できず、腰までひけていた。次回、こってりやろうね。
彼女の部屋にて。愛情のエチュード。2本。燃えるような愛や嫉妬が見えない。やっぱりホームドラマ。それぞれの人間性は面白いが、それを劇的なところにしなければね。
結局、つきつめてみることだと想う。その時の感情をはっきりと、相手への思いをはっきりと。どれもこれもが中途半端。
続いて、訪問者。愛情のエチュード。Y子の混乱がもっと見えたらおもしろくなるだろうね。Mケルのホモ恋人が愛情が見えた。それ、男性のときに見えないのは何故だ?
M本から毒が抜けていくのはつまらんね。ちょっと書いておくね。
最後は身体表現。ダンサーY子の参加にリズムはっきりのダブ音でちょっと失敗。面白かったし、M本も愉しんでいたが、ダンスだった。音と息と身体と声と。 陶酔状態が創りたい。どう動いているかを追ってしまえるような表現では違うんだなあ。それぞれのリズム、う〜ん、伝わらないなあ。でも、続けるのだ。Y子 にももっと先のアドバイスと要求がしたいのだ。
以上。

この稽古場は死ぬまで開いていくので、役者がふらりと自己点検や鍛錬にきてくれる場所でありたい。
これからも皆さん、大歓迎。