2010/06/14
心の振動が伝わるように、感じること、鍛えることは心を柔軟にして、心を優しくする。優しい役者の、毒がほしい。

いつものように稽古場に行く。深夜まで草迷宮の打ち上げと返しをしていた。何があっても夜が明ければ稽古場に通う。ずっと続けている習慣。
観に来てくれた役者たちも今日はお客様ではなく、役者としていつものように稽古場にきた。参加者3名、見学3名。
今回は1時間の連続した課題を用意した。発声から感情の鍛錬まで。対峙して、声による煽り、四股。3本。声で煽り、身体で煽る。声が次第に息から増殖して いく。これまで鍛えてきた発声課題を感情と繋げてみる。M本はすべてが繋がってきたが、身体表現を伴うとやや様式になってしまう。Yき、声は非常に強く なったが、身体と繋がらない。Y子はまずは発声からだが、感情の動きがとてもいいので、四角張った発声訓練でなく、こうやって鍛えていこう。身体がなかな か動いていかない。それぞれにアドバイスすると改善されていく。煽りを息だけで、音だけで。自身の感情、相手への感情、表情が自然に変化しはじめる。闘争 に繋がるような強いものが少しずつ見えてくる。Y子、Yき、M本、それぞれの目がギラギラしてくる。
続いて、言葉で煽る。言葉での煽りあいに言葉だけが強くなっていくとバランスが悪い。身体の自由ということなのだし、目技も欲しいところだ。
煽りあいの身体表現にも辿り着きたいね。
動かしてきた感情を役作りに繋げる課題。やくざと娼婦。3本。役になるということをひとつずつ。類型的な表現も求めるが、なにより内面や背景をどんどん想 像していくことをアドバイスしていく。Y子には魅せるための動きをアドバイスしていく。M本、Yきは状況を変化させていく想像力が弱い。同じ場所で同じこ とを繰り返しているだけではつまらんよね。
絶望を感じるための課題、10連発。まず、3連発からはじめた。それぞれの絶望という感情に納得したものが見えてこないので、問いかけを投げながら、10 連発していく。それぞれに感情がはっきりしてくる。そういうことを実感していってほしいのだ。Yき、秀逸だった。Y子は感情を重ねることがまだできない が、それでも感情の記憶が少しでもかさなっていけば、繰り返す毎にはっきりしてくるわけだ。コツコツと繰り返そう。M本は抱える物語がまだ大雑把なのだと 思う。細部をもっと埋めて想像力で。
絶望を抱えたまま、歩く。歩きに見事な変化が見えたYき、それを忘れないでほしい。
続いて連続した感情変化。深い哀しみ、強い怒り、諦めまで。同時多発。Yきは丁寧な感情の動きが見えてよかった。M本は、やはり感情をどう切り替えていく かが、まだうまく見えてこない。それぞれの感情はよいのだが。所謂ブリッジも考え、表現できたい。Y子、深い哀しみが溢れてくるまでしかできなかった。丁 寧でよいと想うが、要求されたことは全うしてほしいのだね。
最後に感情の受け渡しの課題。感情だけの会話と言ってもいい。心を動かすことが劇的な会話となるのだということだ。これはあたしも参加する。対峙する相手 から受ける感情、こちらから投げて、ぶつけていく感情、非常に愉しかった。よく動いたなあ。(笑)M本とは以前にも一度演った課題だが、今回はよく反応で きていた。眼もしっかり通った。Y子はある感情の渦の中に入り込んでしまって出てこなかった。それをどう切り、どう感情を変化させていくかが、この課題の ポイントでもある。しかし、その感情に入り込めたことはよいことでもあると言っておく。Yきは対峙している時に突発的な感情変化をする冷血な感触を受け た。あくまでもあたしが参加しているので、客観的な判断ではないが。
エチュード、奇妙な部屋。求めることを話す。その求めることに引っぱられすぎて、シーンがぐるぐるぐるぐる同じループをしてしまった。思いつきがさきか、 想像力が先か、実感が先か?どう想う?すべての要素が必要なのだけれど。ひとりごとをこの課題の必要要素としているのだが、独り言にも実感が必要、今回は 全員が要らぬ説明台詞になっていた。状況を説明する必要はない。独り言で、状況が見えてくるのだ。そこを全員がはき違えた。
たとえば、かならず登場するYきのかめ。「おいしいか?」とつぶやけば、それは生き物だとわかる。「かめちゃん」と呼べばそれはかめなのか、かめという名の犬なのか、そんなことは釈然としなくてもいいってことで。
今回は面白くなかったなあ。過去にヒットは出ている。それはそれぞれが実感できたことだ。何故かそれぞれが日常に戻ろうとする当たり前の行動が面白かったのだ。Y子は気付かない芝居がへたすぎた。次回アドバイスしよう。
奇妙な部屋から相関図へ。やってみたが、うまくいかなかったので、仕切り直す。久しぶりにベッドルーム。ベットにいる自分の恋人と他の男。誰もが感情の機 微が見えない。あ、そんなもんですかあ?という感じ。驚愕やとまどいや嫉妬や愛や、もっていきようのない怒りや切ない哀しみが、まったく見えないので、心 が動かない。観客の心を動かしたいのなら、豊かな心の襞を鍛えなければね。ベットルーム2連発。やはり、それぞれの感情が鈍い。ちんちん露出して歩くのは いいのだけれど、それをみる2人は実感のある反応がほしい。言い訳するなら、実感のある言い訳。そうすれば、笑えて、哀しいシーンができていくのにね。
以上。
心を鍛えて、人の愛も、哀しみも、痛みも、無限大の感情がわかり、感じることができ、反応できるような、そういう役者になっておくれ。