2010/07/19
劇的を追い続けていく。

そういえば、今年の誕生日はタタールステーキのディナーだった。亡きパパは世界中を飛び回った人で、美食家で、大きくて、あたしには英雄だった。病に倒れ てからも毎日毎日世界中の美味しいものやゴルフ場の話をしてくれて、少しも病人らしくなかった。「もうすぐ別の世界にパパは行っちゃうけど、おまえにドイ ツのタルタルステーキだけは食べさせてやりたかったな。」
叶わなかった。
もう10年以上グルメ番組に関わってきた。父が死んでからもさまざま情報を求めたけれど、はっきりとした情報は得られなかった。幾星霜か経ちまして、やっ と確かな情報を貰い、やっと食べることができた。それももう2年前のこと。
忘れた頃の、この誕生日、相方はハンドルを握り、またその店の前に着いた。嬉しかったなあ。ありがとう。
今週も稽古場。皆本番や稽古中なので、さて、ピンターの稽古をと稽古場へ。開いていたら、Mケルがやってきた。ダメをだしての個人稽古だったので、詳しい ことは書かないが、こうして役者は育っていくのだろうと想う。
うちの芝居に出演する前から稽古場に来ている彼、うちの芝居の打ち上げでは「芝居はもう二度といいです」と言った彼。ところが、芝居がはねてからもこの役 者だけが実にコンスタントにここへやってくるのだから、頭の中を覗いてみたかったり。
今まで出なかった声が出る、表情が出る。身体が急に動き始める。
今回のマイケルはそうだった。あたしがしきりにあたし言語で話す劇的についてや感情や身体の表現ということについても、よく食らいついてくる。
もう二度と舞台に立たないと宣言している役者を鍛えているのも、面白くなってきた。
いったい彼はどこに向かって歩いていくのだろうね。
うちの稽古場に熱心に通っていた役者がふたり、実業の世界にきっぱりと行った。あたしにふたりは同じことを言った。「稽古場で学んだことを活かしてがんば ります。」と。いいのかなあ、だが。ま、いっか。
劇的なるものを追い続けて、劇的な役者たちと劇的な芝居が創っていきたい。