2008/02/26
感情ドライブ

実感するということ、日中は「ピッグ・イン・ザ・ミドル」の稽古場にいく。舞台監督ともろもろ打ち合わせ、具体的な舞台も客席も決まり、一安心だ。
稽古をみた。今回のこの芝居、病気を持つ少年、少女の話。言葉のひとつ、ひとつが空を舞う。演出が的確なダメを出していた。「実感が足りない」
その通りだった。これから、その実感を埋めていってほしい、こころで、ね。
演出と俳優の話し合いは、ここの主宰の得意とする「イギリス」演劇流なのか、
あたしは理屈っぽい話し合いは無意味だと想う。俳優はだめを消化し、とっとと演ればいい。演れていないから、ダメが出ているのだ。
そんなことを想いながら、「開かれた稽古場」に向かう。板橋の大山から浅草橋への移動。遠い気がしていたが、携帯で検索して、案外近いことがわかる。通い慣れた水道橋まで地下鉄に乗り、なつかしい横断歩道を渡って、総武線。
本日の出席者 12名、見学1名。稽古場に入るととてもいい空気が流れているようになってきた。それぞれのペースで習慣化してほしい想い。
歩く。イメージを持って歩く。今日は他者との共有を繰り返す予定でスタートした。イメージはそれぞれに描く。違うイメージを持った他者と対峙する。
まず想像力を膨らませるためのウォーミングアップだ。稽古場の空間使いを提案もする。回遊魚じゃないのだから、それぞれがそれぞれの方向を探してほしい。一言提案するとそれが形になった。この稽古場はこれがいい。皆の心がとても柔らかい。心は、こころのありようでとても柔らかくなるのね。
感情を持って歩く。怒り、憤り、不満そのあたりまで。数名、怒るための怒ろうとしている。アドバイスする。本日、初参加、ダンサーのMさん。心はダンスにも必要だと想う。一緒にすべて参加してもらうことにする。
その感情のまま、他者と対峙する。所謂、気がたった状態なので、他者との間に強いなんとも言えない感情が渦巻く。しかし、怒りの原因や結果が違うので、接点は生まれにくい。対峙の相手を変えながら、4回。対峙したときの感情、言えば他者からの感情を感じるための訓練。それぞれが感じたものに反応してほしい。声も身体の一部ということを皆、ミゴトに全員忘れる。やっとKぞうから声が出る。Kぞうはリズム感がいい。心が柔らかい。言葉が出る。全体の身体が他の創る空気に反応したとても素敵な一瞬が収穫だった。
幸せ、歓び、充足感。愛情表現の感情をもっとドライブさせるために、今回からプラスの感情を。何をやればいいの?という感じのままここまで参加していた初参加のAさんからとてもいい笑顔を出る。表情があまり変化しないS川くんからもとてもいい笑顔がこぼれた。見回すと素敵な笑顔がたくさん歩いている。温かい空気だ。Mもとは感情のドライブが著しく進歩している。俳優の中身が変われば、空気がかわるのだ。それは観客に見えるのだから。
Nちゃんの険しい顔と優しい顔のコントラストも素晴らしい。この俳優に今、大量のせりふが言わせてみたい。そろそろセリフ劇がみたい。とても柔らかく変幻自在になってきたから。ダンサーMさん、少しずつ心は動く。しかし、表現することに走る。そうではない。
再び怒り、怒りの対峙。感情が動き始めたのか、NちゃんとダンサーMさんの間に強い強い感情のぶつかりあいがみえる。最高。手を叩き、その部分を切り取る。中央で再度。感情も行動もなぞってはいけない。まわりの俳優はそこに絡んでほしいと指示する。1回目、回りの俳優全員に魂胆がみえる。止める。ニュートラルな状態で。2回目、Mもとがいきなり絡む。止める。これは感情と身体表現の訓練だとアドバイス。3回目。ふたりは確実にいい。感情が、身体がぶつかりあえている。まわりの俳優にも変化がみえる。Eりなは絡んでいけない。インスパイアはされるが、絡んでいけない。これはよくない。身を任せてみることも大事なんだ。今日はY山くんがいい。発火点にはなれないが、積極に絡んでいける。S川くんは内面が動いているが、弱い。
発声。ブリッジによる声の受け渡し。声は相当強くなっている。Mもとよ、さらに10倍鍛えたい。Kぞうが意外にいい声で、まめに参加するために強い声を獲得しつつある。初参加のダンサー Mさん、Aさんはこれから鍛えていかなければ。自主稽古。Y山くんの身体能力の高さ、声も追いつきたいね。
エチュード連発。今日は歓びの感情表現。願いが叶う。
設定は「何かに合格した瞬間」そう、この瞬間の感情の針がビュンとふれることを目的とした。
何かをやろうとしなくていい。だから、難しい、込み入ったシチュエーションはいらない。実感と想像力の訓練だ。そっか、みな、電話。電話をきっかけにしていた。想像力で何でもできるのだから、あたしならもっと大きな会場の舞台の上に立つけどね。アカデミー賞とかね。
感情がドライブしていかないのは、あきらかに想像力の不足だと想う。
これといったものがない。それぞれにそんなもの?程度。間違ってはいないが、つまらない。Yきはどうしてもハードボイルド路線が抜けない。早く抜けてほしい。泣きじゃくること、なかったかい?歓びの感情は、とてもとても大事。初参加のAさん。いい瞬間もあるのだけれど、冷めているように見える。もったいない。心は熱く。早く熱く。S川くんもしかり。感情の導火線に火をつけてほしい。N山さん、この数回でどこで身につけたのかのへんな構えが身体から抜けてきた。ここからスタートだ。感情にもっともっと向かってほしい。
エチュード2本目、連発。殺人者。申し訳ないけれど、早速いただく。殺人をした。数年以上、逃げ延びていて日常生活をしている。そこに警察がくる。逮捕するために。想像力の極みのエチュード。殺人を実感しなければ、あとには何も出てこないと想った。今日は半分の俳優に課す。実感が足りない。あたしの即興では難しいのかな。今日からときどき殺人者の想像を続けてほしい。
頭で考えてもできないが、頭も必要。経験も必要。経験出来ることはどんどんして、芝居に活かせばいい。観察もそれを補う。
意外にダンサーSさんが一番よかった。なぜか心が動いたみたい。
身体表現。リズムに合わせて歩く。連続して使ってきたルーリードで。歩くことをさらに発展させる。楽しんで、もっと表現にしてほしいと課す。2回。2回目であがってきた。声が欲しい。Kぞう、Mもとが空気を創る。いい。S井くん、いいよね、この俳優。もっと扉を開きたい。感情も素直に動かせるし、身体も想った以上にリズムを持っている。もっと外に流れ出すと嬉しい。
Aさんはどうにもクール。もっと楽しんでほしい。そして、どのシーンもひとりが落ちれば、全体が落ちる。つまり、全員で上がってほしいのだ。
身体に音を取り込む訓練。曲をかけて、ん?と想う。「これ?」と音担当の相方に聞く。音の注文は後刻、相方に御願いした。今日の音はきっかけやリズムがはっきりありすぎて。俳優たちは動きやすかったようだが。音から身体を連動させて動かすことの目的から遠い。音に乗って、踊るに近くなる。
しかし、Mもと、Nちゃん、Eりな、Kぞう、S井くんは音と身体が連動してきたと想う。ダンサーMさんは何かを表現しすぎ。もっと水のように、ね。
S川くん、やってみるという意識が足りない。待っていても何も産まれないよ。Y山くんはかなり積極的になってきた。そうそう。
Mきちゃんは急に活き活きした。苦手意識は無用、のアドバイスを活かせている。しかし、リズム感はあまりよろしくないな。
Yきも今日は動けていた。けれど、今日は動きやすい曲だったのは失敗だな。
曲が立ち過ぎるとよくない。
発声。腹筋強化の声の受け渡しから声の増殖まで。声の増殖、身体をともなってくれ!!今日は寝た状態から。半分の俳優が目をつぶっている。目は開けて。回りを感じ、そして見ていないと。これも共同作業。芝居はすべて共同作業だ。
エチュード連発。恒例相関図。 YきとMきのカップルから。Yきの設定はどこかずれる。おい、頼むよ。いいところは伸びてきた。もっと敏感になってほしい。そこが導火線発火地点なのだから。止める。再度。う〜ん、違う。止める。今にしてほしいとアドバイス。スタート。Mもとが現れる。今度はMきがちんぷんかんぷんな反応。止める。おいおい!!
再度。感情をドライブ、丁寧にドライブさせてほしいと前説した。今日は良かった。苦笑も笑いも涙も同感も、さまざまな感情が動いた。ここにきて、初参加のAさんがやっと感情を動かしたかな。何かを掴んで帰れたら嬉しいが。
今日はYき不調だね。この相関図でも空回りしていた。
途中、号泣エリア。空間への意識を課すことで、やや号泣への意識が拡散したかもしれない。拡散してほしくない。Nちゃんがよかった。Kぞう、そこからあと一押しすれば、あふれ出るところだよ、きっと。
Mさん、Aさん、S川くん、何かが溢れるところまではいかないとね。加速をよろしく。S井くん、確実なものがある。しかし、弱いの。もっと輝けるはず。
Eりな、感情をもっているのに、うまくドライブしない。まずはあたしだけでも信じて出してよ。N山さん、泣ける。狂乱という次までいこうよ。安全地帯で立ち止まらないで。Yき、日常訓練で頭を使いすぎているのでは?号泣でそう感じた。理屈じゃない。
なぜ、あなたは泣くのですか?みんな、そこが大事よ。
泣こうとしてもなけないさ。
稽古が楽しい。とてもいい稽古だ。
いい俳優になろう。絶対なろう。
そう想う方は、是非。