2008/03/04
ここは芝居の稽古場である

日中、用意した衣裳をガラガラ転がし、稽古場へ向かう。道すがら、小道具の打ち合わせをお世話になっているT小道具のUさんとする。いつもいつも予算から時間まで無理をきいてくれる。今回も今日の明日の無理を言う。演出に確認メールをして、するすると段取りがついた。今日は録音もあり、うちの座組のYきの力を借りる。稽古場ではじめての通し稽古を観る。録音はYきのリードで芯のあるいいものが録れる。音響の友人 Fの男勝りの仕事ぶりにも感謝。ダメだし。駄目出しの途中から俳優の理屈攻勢がはじまる。演出が応じるが、どうきいても平行線の無益さ。つい口を挟む。延々とした無益な時間が流れる。衣裳の調べ時間、ほんの10分。慌ただし過ぎる。ここは稽古場だ。と想う。くだらない。
気分を切り替え、気分をあげて、開かれた稽古場に向かう。
本日の参加者 16名 見学1名。稽古場につくと倉庫に熱いエネルギーが溢れている。所狭しの稽古場にとにかく稽古をするのだという、プラスのエネルギーが充満している。こればかりは人の気が産むもの。素晴らしいことだと想う。稽古開始。
歩く、イメージを持って歩く。今日ははじめての参加者 3名。説明を少し丁寧にする。イメージを持つこと、イメージを広げていくこと。16回目となったこの稽古。歩くこと、イメージを持つこと。言葉のない稽古だけれど、それは雄弁だ。これこそ、俳優業の課題だと想うけれど、何も無いものは、何もないものとして、見えてしまう。今日の己のペースを決める時間にもしてほしい。イメージが湧かないならば、想像力を駆りたてていかなければならない。
具体的に、詳細にイメージをしていくことだ。俳優というカメラは自在なカメラなのだ。今日は新しい試み。イメージを言葉、唄、声にしてみる。なかなか声が聞こえてこない。初参加のRねが今の気持ちを言葉にしはじめる。自己アピールを感じたが、まずはこれでいい。全員に今の気持ちを言葉にすることを提示、それぞれに言葉が同時多発にはじまる。非常に日常的な言葉しかきこえてこない。まずはここからでいいが、面白くなかった。怒りの感情をもって歩く。気持ちが表情や身体に表れてくるまで。Nちゃん、Eりな、Kちゃんがいい。ダンサー Mさん、S、Rねは何かをしようとしてしまう。違う。気持ちを拡大していくこと。あたしは表情の前に気持ちがないものはいらない。
まずここを確実に掴んでからしか身体表現も型もない。気持ちのデッサンができない俳優に抽象画はかけっこないよ。Tえ、Yき、Mもとはそれぞれに何かを掴もうとあがく姿。それぞれに早く次へあがれ。Mな、S川くんはだいぶ心が動くようになってきたね。初参加 Aっこ、怒りのベクトルを階上のあたしに向けてきた。なかなかやるじゃないの、と跳ね返す。意欲よしね。
歩く、幸せ、充足の感情を持つ。今日は全体的に技巧的だと想った。自然にこぼれる笑みで充ちたい。違う。温かい感情も大事だよね。
発声。まずはブリッジによる声の受け渡し。この稽古場の時間だけでも繰り返してきた発声強化で、著しく声は鍛えられてきた。限りはない。俳優として声は確実に身につけていきたい。もっともっと。Tえ、しっかり声が落ちている。日々精進。Y山くんの身体能力の高さ、声も身体の一部だ。声を身体に追いつかせてほしい、かならず、活きるから。ダンサーM.、Mな、Hずみさんは腹式呼吸から教えたい。Mもとも確実に声は鍛えられてきたけれど、不安定だ。煙草をやめろとは言えないが、腹式の確認が必要かな。
そのまま、シーン創り。目をつぶった状態から起きる。それぞれのイメージで、他者と連動していく。あたしは各自をみているが、全体もみている。お互いに待っていても、そこからは炎は上がらない。それぞれがもっと積極的になってほしい。Rね、Kぞう、Eりなの部分がちょっと動いたので、早速切り取る。そこから、シーンを広げてみる。Yきが空回り。リアリティがない。案外これは難しい。ゼロに立ち戻ってほしいと想った。シーンをドライブさせていきたい。勢いが足りない。演技空間に出ていくときの覚悟が足りないのだと想う。迷いながら、考えながら出ていくなよ。それはすべて観客に伝わる。ダンサーMちゃんの入り方がよかった。他者からの何かを受け取って、それをさらに動かしていくこと。反応の連鎖が足りない。うむ、いまいち。
エチュード、喧嘩。煽り合う。Tえ,Aっこ。Aっこの持ついいものを感じた。それをどう演劇としていくか?攻めて、攻めて、攻めまくることは必要。今の倍の強さとエネルギーが欲しい。Tえ、弱い。すぐに折れてしまう。何かが怖いのか、折れてしまう。一度手を打ち、Mなに相手を変えて再度。立ち向かって、跳ね返す強さを持って欲しいよ、Tえ。Mなはふにゃふにゃだったけれど、今日は芯が通っていた。見直す。
S川くん、Y山くん。S川くんは今日は最初から気概が違う。良かった。Y山くんは考えすぎ。弱い。頭はいらない、こ、こ、ろ。心を動かすこと。
怒ろうとするのではないから、お互いが大事。どんなシーンもひとりではできないよ、Yき。気負いすぎだな。
Kちゃんは確実にコツコツと俳優を続けてきたアンカーがある。シーン作りの発想も面白い。しかし、もっと気持ちがはっきり見えたい。シーンに追われるきらいありかもね。
歩く、出逢う。演劇的な会話。演劇的とは何か?答えを探している。何か答えを提出してほしい。ヒントかな。こんにちは、からはじまる会話がそこかしこから。つまらない。4連発。今日は切り取れるシーンなし。残念。
今日はSが埋もれている。面白いのだから、埋もれてはいけない。俳優は修業の課程でうぬぼれをなくすことは大事、けれど、己をよく知り、己を死守することも大事。いろんな落とし穴がある。これ、あたしの経験的実感。
発声。腹筋強化。声を受け渡していく。Hずみさん、腹筋弱すぎ。声もゼロ。まず、声を一から鍛えなければ。発声は腹筋も鍛える。腹筋は強い声を産む。
声は、しつこいけれど要だ。
エチュード連発。ベッドシーンエチュード。Mもと、Eりなカップルで全員。
愛して、信じているひとのベッドシーンに遭遇する。その「時」の反応がみたい。今日は登場方向を変えてみる。Nちゃん、Kぞう、ダンサーMちゃんが良かった。次は変化していく、どんどん高まっていく感情の動線をみせて。
皆、決してクールなのではないはず。心がざわざわと動かない。動くはず。想像力があきらかに足りない。しかし、繰り返すことでしか想像力は鍛えられない。人は愛したひとをそんなに冷静に諦めないと想う。否、愛するということは何か?って、ことかもね。
本気の恋、必須ね。
殺人者イメージシーン。今日は全員同時に。試み。イメージを持てている人はまだいない。Kぞうはいいんだよね。何だろう?油断せずにいけば、得ていくもの多いと想うな。シーンとしてもまだまだ。殺人は経験出来ないからね、想像力の鳥を高く飛ばせてほしい。このシーン、創りたい。
続いて号泣エリア。初参加のHずみさん、Aっこはまだ泣けない。早く泣けるようになってほしい。Sも泣けていないね。N山さん、もっと自由に奔放でいいよ。泣けていたはずが、弱くなる。Tえは今日はよかった。Nちゃんの泣くまでの時間が短縮された。凄いね、このひと。Eりなもよかった。Rみねはやる気は感じる。が、どこか浮き足だった感じ。どう転ぶかな。泣けていない。
Kちゃん、Kぞうは今日は今ひとつ。S川くん、Mなちゃん、ダンサーMちゃん
泣けてきたね。目指すは全員狂乱、放心までね。終わりはないのね。
リズムに乗って歩く。少しずつ、踊りにしていきたい。う〜む、リズムに乗るってやっぱりそれぞれの体内のリズムだ。なんか、ださい。これは演劇のシーンでありたい。スタイリッシュになりたいのだ。クラブやディスコじゃない。心して。
身体に音を取り込む訓練。初参加のAっこ、Hずみさん、Rみねはまだ何がなんだか状態だった様子。繰り返していくこと。Y山くん、頭で考えすぎ。焦るな。大事なのは音を聴き、それに身体を反応させていくこと。柔軟に。
今日の音は良かった。Dちゃん、これからもよろしく。他者との連動、Mもとがいつもより能動性に欠ける。だめよ。あるレベルは死守しなければね。
S川くん、少しわかってきた感じ。そこで、掴むこと。Tえ、今日のこれ、よかった。ここでやっと動き始めたのかな?Kぞうはいいのよ、面白い。
Nちゃんはオリジナリティが出始めた。あたしが焦る。そう、あたしも舞台に立ちたい。蛇足。
恒例相関図。2連発。それぞれに心でこのシーンをやれるようになってきた。
もっと細かく追いたい。起爆剤がいくつもあって、事件はどこにでも起きる。
演劇的でありたい。活きたシーンでありたい。
気持ちほど、強いものはない。
身につけていけば、間違いない。
まだまだ燃えて、上がっていくぜ。