2011/05/16
相乗効果

今回は1週間、開かれた稽古場の稽古をあたし自身の中で発酵させてみた。勢いで書く稽古日記にしたくない、ある感触を持ったから。それは、芝居の土台にな る相乗効果、ということだ。役者それぞれの魅力が火花を散らして、大きな花火になって打ち上がることを旗揚げの時から求めてきた。それは、花火職人のよう に火薬を詰めて、作為的に創ることではないという漠然とした確信のもと、ずっと応えを探し続けている。月曜日の開かれた稽古場。ギリギリに変態公民館に到 着するとKちゃんが佇んでいた。S井さんを同行して。秋に大きな公演を決めて走り出している彼女が、こうして稽古をしにやってくることが嬉しい。参加者5 名、見学2名。
課題は感情を動かすことに徹底して組み立てていく。歩きながら、感情を交換する。誰もが素直に感情を交換するので、ゆっくり空気が動き始める。息づかいが動く。
さらに、感情を言葉で交換してみる。Kちゃんがいい。はっきりした感情が瞬発力のある言葉に乗る。これがなかなかできないのだ。だが、次第に空気がうねり始める。
R音もMケルもA子もS井さんも、それぞれの感情を動かし始める。次第にそこにはシーンがいくつもちらばりはじめた。非常に劇的。
さらに、言葉を封じ、息と声と身体表現で感情を交換していく。自由に動き始める感情と身体。何かをしようとすることがどんどんなくなっていく。
感情が渦になり、身体がうねうねと動き、5人の役者の動くモニュメントが出来上がった。最後に心の声を発する。素晴らしい共鳴ができた。
続いて、強い怒り、深い哀しみ、絶望、希望。そして、叫び。からの身体表現。
細かい修正点はそれぞれにダメだし。しかし、今回の感情は強く、たおやかに、柔らかに、よく動いた。空気が鮮やかに染まっていく。嬉しい。
音と役者の共存が叶った。一連。
歌舞伎の名台詞のよる発声、及び身体表現。A子、Mケル、R音は声をもっと鍛えていきたい。Kちゃんには少々難題を提案してみる。Kちゃんには武器がある。S井さんの声、姿は存在感があり、素敵だった。
リアリズムのための課題。奇妙な部屋。2本。日常と非日常。リアリズムを細かく追うほど、このシーンは信じられるシーンになる。日常に戻ろうとする習性が やや弱い。その点を極めていくと面白くなるはず。S井さんのひとりごとがいい。Kちゃんの瞬発力と発想力がいい。A子の静かなリアリズムが心地よく、R音 の日常に想像力が加算されると尚、いい。
実感のための訓練。だるま。これはそれぞれが痛みや身体を極めて極めて実感できたなら、首のない「声」が背筋を凍らせることができるはず。
Mケルの実感と集中がよかった。いつもこのレベルでいてくれるといい。ブレないでいけるといいね。想像を絶するもの、想像を絶する真実を提出できるようになりたい。
らうめん絶滅。これも実感。それぞれの反応を同時多発で。3日10日3ヶ月6ヶ月10年の実感。きちがいじみたKちゃん、最高。それほどかい!
身体と心を2時間かけて動かしている。その結果、役者の表情は活き活きとして、感情が構えずに零れてくる。そこで、恒例相関図。2本。
いい仕上がり。
KちゃんもS井さんも活躍している役者さんたち。それでも、稽古場にやってきて、柔軟体操のように日常訓練をする。稽古はいつまでもいつまでも継続できる。
それは役者の意思によって。
最近、見学にくる異業種の方たちがいて、それぞれに「面白かった」と言ってくださる。少しずつ、稽古場が底上げされてきたような気がする。さらに精進、精進だ。

今週のピンター研究会は心から自由に、やっとピンターの「言葉」をクチにできたようで、手応えを感じた。これはあたし自身のこと。
ここでも想った。相乗効果。