2012/01/16
すべては想像力をもて

新しい年も相変わらずの日々。忙しいのだ。今週はピンター研究会も稽古始めを無事終えた。ピンター作品と向き合いながら、あれやこれやと舞台上のリアリズ ムについて、あたしは考えているわけだ。そして、この稽古には出来る限り役者としてのポジションで参加していたいと望んでいる。しかし、調整しなければな らないこともあったりして、制作と役者のバランスが難しい。来週にはいよいよ映像の本番を控えて、来週早々の衣裳合わせもある。久々の衣裳、しかも和物で 愉しい。制作ではないが、配役をしたので、結局制作みたいで時間を縫っての準備をしてもいる。昨日は若いメイクのスタッフをかつらの打ち合わせに送り込ん だら、厳しいかつらやさんに叱られて、打ち合わせもせずに帰ってきてしまった。それをあれこれ解決する。結局、できないつもりでプロの世界の方たちとはお つきあいすることが大事なのだ。何とか仕切り直しでかつらは間に合うのか?本物になるためには、どの持ち場でも人付き合いも含めて日々精進だよね、と今週 久しぶりに呑んだ師匠からも教えられた。
ま、後は野となれ、山となれ、で撮影本番までがんばるかな。
月曜日の開かれた稽古場では、今年は想像力の幅を広げたいと想う。のようなことをできるだけなくしたものを創っていきたい。全体を仕上げるためには細部に 拘ることだと想う。
参加者4名。今回の作品は「妄想鎖」作・演出 森島 音 Dub 出演 松本渉・Mケル・Hで・Y子
確実な実感は想像を広げること。松本は新年のエンジンがやっとかかってきた。Hでは出てくるものが中途半端。役者は加減ばかり考えていると決していいもの はでないってことだよね。Mケルは集中までに時間がかかってしまうので、それを解消できればいいんだけれどね。Y子は言葉が繰り返すことで次第によくなっ ていった。身体表現の部分と台詞の部分の凸凹をなんとかしないと、と想いながら、ダメを出していると少しずつよくなる。Y子自身があきらめずに1行ずつっ てことなのではないかな。Dubさんはきっかり音を用意してくれた。でも、それはそうじゃないよね、という質感の音があって、ここらへんも今年もバトルし ようと想う。

さて、気まぐれで今回はシンプルな分量なので、台本を公開してみる。如何でしょ?この文字列からどこまで想像力を産めますか?

「妄想鎖」
晴れ渡るような、明かり。
男、女が所在なげに登場、空を見上げる。
しばしの時間、男も女も空を眺めている。

空が赤く染まり、
やがて空からパチパチと火の粉が舞ってくる。

女 きれいな・・・
男 肉踊る・・・憎しみの連続技だね。

男、そして女の身体に火の粉がまとわりつき、燃える。

クローズサーキットを走る車のエンジン音が鳴り響く中、
者どもは七転八倒、火の海を転げ回る。
金属音が響くと
桜の花びら。火の海は桜の花びらに変わっている。
それに気付くおんな、
気付くおとこ。

男 いまいましい。かならずや見つけ出してやる。そして、刺す
女 きれいな・・・嘘つき!

桜の花びら舞い上がり、落ちてくるバター。溶かしたバター。
身体にまとわりつく。香ばしいかほり。

男、女 空を見上げる。
しばし、見上げる。
空が裂ける。
空の裂け目から振り落ちてくる、裸の男女。

情念の、情欲の態。。


激しい金属音。
電動鋸。鳴り響く。

男 つかのまの・・・
女 鎖に縛り、縛られ、ハラハラ落ちる。わたしの身勝手な心の意味は、
  あなたをいつでも追いかけていくの。待って・・待って・・待ちやがれ。

男 つかのまの、オレの欲望のはけ口、マネーゲームだよね。

男、哄笑する。
女、立ち竦む。

刺す。
刺せよ。
刺す。
刺せば。

男、女
佇み、空を見上げる。

空を見上げ続ける。

産声が遠くから、きこえてくる。
しかし、男もそして、女も空を見続けているだけである。

暗転。

激しいすすり泣き。

無音。


悲鳴。


ダンス曲。

さあ、今年も精進、精進。
どうぞ、道場破り大歓迎。