2012/03/05
どろどろの芝居を久方ぶりに書いてみた。抉る。

また雨。開かれた稽古場の日は雨が降ることが多い気がする。いつかは帰り道、コワイくらいの雪が落ちてきて、息を飲んだ。
今回は去年の夏あたりに知り合い、ぐっと距離を縮めている芝居友達からうちを紹介されたという女優からの参加希望メールが早速きた。尖った友人からの紹介 だということで、いい女優さんに出逢えるといいな、と想った。
前回あたりに四の五の気に入らない発言をしたHでともついったー上で軽くジャブを飛ばしたら、素敵な素直さで受け入れてくれたようだった。
この二人の参加、見学1名で新作「さいのかわらのものがたり」を。
作・演出 森島、音 Dub, 出演 玉井英棋・奥村M
フリークス、わかるかな?と言うと二人ともわかりません、と言う。畸形だね、との会話から作品の流れを説明した。
客電消え、ぼんやりとした明かりと音が入る。そこは黄泉の国である。
手足をもがれ、心を無くした死人たちの舞。感情を取り上げられた、言葉を取り上げられた死人たちはフリーキーに蠢き、踊る。
それはとてつもなく哀しい情景である。
息づかいだけが無機質な音のようにきこえる。
と、風船を、肉を、空気を刺す音が連続してきこえてくる。
男も女も痛みを感じることなく、まるで身体から空気が抜けるような、反応しかしない。

が、やがて、血が噴き出し、肉体が裂けていく。心も身体的苦痛も失くしていた死人がそれらを想いだしたように、もがき、苦しみ、のたうちまわる態。
阿鼻叫喚地獄絵図の如し。

暗転。
無音。
静寂。

明かりが入ると男と女が佇んでいる。

ふたりは歌う。黄泉の国の歌。
ふたりは交わす、黄泉の国の歌。

歌が終わると暗転。明転。
ふたりは背中を向けて佇んでいる。
歩き出すとその先には死の光景。
フラッシュバックするような、死の光景が次々に訪れる。
泣き、叫び、吸い込まれていく。
死の光景が覆い被さる。押し寄せる。
号泣。

じわじわと暗くなる。
続く。
台本公開以上。

ふたりは死と向き合うシーンを重ねながら、気付くと胎児の死体の海の中に佇んでいる。我が子を探し、我が子の亡骸を抱きしめ、立ち竦む。やがて、手に抱い た亡骸がどろどろと溶け始め、流れ落ちていくのだ。男、女は心神喪失していく。
辿り着いたら、黄泉の国。発狂す。

暗転。

以上。
二人とも実に丁寧に創ることができた。初参加の奥村さんは表現のための表現になり、感情が溢れすぎ、玉井も感情が溢れすぎる部分は感情を抑え、修正する。
様式と掴まえきれない感情をきっかりわけてシーンを構成していくことで、哀しみも苦しみも痛みも際だってくるということ。
ふたりの心が蠢き始めたことで、シーンを重ねる度に切り裂かれるような痛みが空間を覆い始めた。
地獄絵に辿り着くとき、どうしようもない哀しみがその空間を包んだ。
いい女優に逢えた。心が動き、それを抑えることもできるようになってほしい。H玉井も今回は頭を使わず、ダメ出しによる修正もスムーズ。素直に心が動いた 時、濁りのない結果が見えてきた。
今回、とてもいい作品が仕上がった。見学していた娘が言った。「胎児はどんな素材で創ろうかな」
胎児の海、是非よろしく。
とラストシーンあたりにMケル現れる。残念乍ら、今回は作品には参加できず。
休憩後、「懇願とか哀願とか」から加わる。どうしてもネタに走る。乞うという逼迫感がほしいのだが。逼迫した環境をまず想像することが足りていないね。三 人とも。そのまま、「求愛」に移る。軽いままシーンが流れてしまった。
最後の恒例相関図。Mケル、Hでの二役、無対象1人、Mさん。
人物作りが緩い。キャラクターの感情が宙を舞ってしまった。Mケルのチャラ男さん、奇々怪々のゴネはよかった。最後のMさんの選択のあとのそれぞれの反 応、今回は感情がほとんど見えず、失速した。
以上。
繰り返し、組み立てて、創っていこう。
そろそろ、明かりと観客がほしくなってきたな。