2008/04/21


開かれた稽古場だった。偶然、本当に偶然、神様が「どんなつまらないことでもいい。楽しみなさい。」と言ってくれたような日。いつもの稽古場に防音の相談で昔からの信頼すべき俳優仲間が来てくれることになった。寺山さんの墓参りの4日の次の日の稽古から防音をしたいので、急なお願いに応じて貰う。
少し早めに稽古場に行く。防音シートの案配を訊きに二階に上がった。うふふ、聞いていたけれど、大好きな大仁田さんに逢う。なんという偶然。今日は大仁田さんがこの同じ場所で仕事をしていたのだ。昔からプロレス好きのあたしは大仁田さんが大好き。やんちゃで好き放題で、彼の高校生も政治家もこの前の友人の芝居への出演も、彼らしいと想っている。楽屋で紹介してもらって、街角で偶然逢って、今日もまた逢った。手を振るとわらってくれた。ヤッホー。帰り際「どうして?」と聞くので、「あたし、ここで稽古してるんですよ」とツーショット。いつか一緒に芝居、やれるといいなぁ。いい予感。
さて、本日開かれた稽古場、参加者8名、見学1名。稽古場の空気はいつものように熱い。何かを掴んでいこうとする、その熱意。ここには嘘もはったりもない。誰もが捨て身になろうとやってくる。まず、イメージを持って歩く。3分でエリアを決めての移動を指示する。イメージの導線のヒントを話す。そして、今日は表現ということをプラス課題とする。アクティングエリアに立ったとき、それぞれの心の居場所がよく見える。演じる側を今は切り捨てて、演出席にいる。こうして、見えてくるものから、本当のものを引き出していきたい。迷いも突進する想いも頭脳での考察も、見えるものだ。Kさわくん、果敢という言葉がぴったり。イメージ、想像力への果敢な挑戦だ。イメージを継続できているかどうかはかなりあやふやだが、エネルギーが強い。S川くんの火柱にのっけから驚く。スイッチを入れることを掴んだ強さだ。Tえは、いい意味で呑気で、ひとつひとつ掴まえていこうとする。彼女の中に奔放さはない。彼女の掴まえ方があたしの中で今、変化している。稽古を重ねて、Tえの魅力のあり方がわかってきた。ふんわりした、ふわふわしたそんな女優になるかも。Tえの碇になるものを探す。卯月妙子というレッテルを剥がそうと想っている。Eな、彼女の中には不思議な宇宙がある。飛んでしまえばいいのに、失速して落ちる。自由に、飛んでいい世界だよ、ここは。Yき、今日は表情がめまぐるしく変わる。決してわざとらしくない、たくさんの柔らかい表情を見た。N山さん、今日はイメージが湧かなかったのかな?勢いが足りない印象だった。Kちゃんは明るさと暗さが反転する。面白い。この人の抱えた世界は奇妙だ。
Eなのイメージ世界に、それぞれが関わっていく。シーン創り。ドライブさせて、止める。「そうだよ」「そうだよ」という音が気に入る。そこから、再度シーンドライブ。つぎに「全員が犬になること」を指示。さらにドライブ。ひとりひとりの必然性がない。止める。再度。なかなかできない。犬に変化する瞬間を決めることを指示する。スピードは自由。全員、瞬間が見えた。オッケー。
ひとつの感情を持って歩く。強く「ある感情」を持つ訓練だ。次にそれを言葉にしてみる。言葉、声、音、吐息、なんでもいい。心のままに、という訓練だ。言葉を発することが目的ではない。もっと感情とつながった言葉がほしい。手を打ち、それぞれを止める。ひとりの俳優だけを継続して動かす。ひとりずつ、全員。こうして、他者の動きを感じ、他者の言葉という声を聴く。何を感じただろう。その空間を想い出せ。N山さん、お話を創りすぎ、素直にそのままありのままを探してみたら?Yき、つぶやきのような言葉の連続、よかった。Kちゃん、混線する言葉、いかんせん、あなたは集中力がないのだなぁ。瞬間、瞬間に光るものを落とすのに。集中して。Tえは、心がこぼれてこない。砂時計のようだ。うん、しばらくそれでいい。少しずつ、こぼしてみて。Eな、激しい。よかった。あたしはあなたのストレートパンチが好きだ。
ある感情を他者とぶつけ合う。演劇的に会話する。それぞれの反応が面白くなってきた。面白いこと、これ、演劇の醍醐味なり。
発声。腹筋強化による声の受け渡し。全員声が出てきた。さらにパワーアップだ。唄。宿題のケツメイシ「サクラ」を使って、唄いながら動く。唄える人3人。S川くん、Kさわくん、N山さん。唄に合わせて動く。てんでバラバラ。ラップでございますぜ。失敗。
さらに発声。それぞれに同時に唄を歌う。しっかり声を出して、唄うこと。次回に期待だ。腹筋強化による唄の受け渡し。初回につき、こんなところから。次回からはリズムがほしい。腹筋強化による外郎売り。しかし、全員うろ覚えのため、腹筋でへろる。続かない。失敗。立って、外郎売りの受け渡し。Tえ覚えたね。しっかり、忘れないように。明日からもやること。他の人、次回には覚えてくること。そこから先にいきたいからね。
エチュード連発。労りと反発。Kさわくん、相手役を変えて連続。Kちゃんの妊娠の発想にピョンと乗る柔軟性がいいね.。反発が弱い。Eな、強いものが出る。引っ込める。気になる。強い感情を押し出すこと、これは感情のテクニックとして、掴んでほしい。Tえ、攻めていく必要のある感情が課題の時には、突き進め。すぐに折れる。泣くな。演劇の上での戦闘は気持ちのいいものだよ。
Yき、動物的な感情があたしは、あまり好きではない。人としての思い遣り、優しさ、品性。これは必要だよ。N山さん、感情を露出しているようで、非常に固い殻がある。ふりはいらない。解き放してほしい。S川くん、感情に1本、凛としたものがある。魅力的だ。なくさないように。
Mなちゃん、ここから参加。Kさわくんと愛情表現。反発。愛情表現、優しい温かい空気が流れる。次は「熱い」を目指してみようか?
反発。弱い。シーンとして、成立しているが、演劇として、どうかな?とことん、ってことを考えてみてほしい。
1組の反発に、他者が加わっていく。TえとS川くんから。Tえが怯む。向かっていけ。S川くん、強い。とてもいい。シーンに加わっていくとき、空回りが多い。シーンに身を投げ出して、そこから反応してみてはいかが?
身体表現。身体に音を取り組む訓練。S川くん、最高。Kさわくん、ともすれば音に合わせすぎ。音に身体を乗せていく。溶けていく。トリップしていく感覚。Tえ、今日は停滞。疲れたのか?Eな、今、身につけたい欲が非常に見える。慌てず、素直に反応することから積み上げればいいよ。規格に押し込むつもりはない。Kちゃん、美しかった。そこからさらに集中したら、もっともののけ。う〜ん、そんな境地にいきたいよ。
Yき、なんとなくわかりはじめたかな。次回に期待だ。
リズムに乗って歩く。ウォーキングだ。スタイリッシュに。なかなかかっこよくならない。もっともっとやっていこう。鏡をみて、歩いてきてね。
素敵なシーンにしたい。
とても熱い稽古場だった。ここから、素敵な俳優、かならず跳ぶ。