2012/08/13
孤独に堕ちてみませんか?「落ちているそれ、拾ったら、人間サーカス巡り合い」

開かれた稽古場より帰宅。ほら、また午前様だ。今回は人口密度の高い稽古場だった。それぞれにダメだしと指針を話してきたので、大筋の流れだけ記す。参加 者6名、見学2名。作品「落ちているそれ、拾ってみたら、人間サーカス巡り合い」作・演出 森島 音Dub 出演 M本、Hで、Mケル、Y子、S美、Nみ 人間の孤独、孤独の底に堕ちた人間どもの行軍から幕は開く。幕開けの孤独がM本以外表面的であったので、ド ビッシーのピアノ曲を2回しして、やはり、止める。ダメだしをする。再度。M本がもっと深く堕ち
ていき、表情が豹変、すごかった。Hでも本領発揮で堕ちた。Mケルもまあまあ。Nみは堕ちては戻り、立ち戻ってしまう。堕ちていくことがコワイのか?Y子 とS美は表面的で、孤独が見えてこない。弱い。いきなり暗転。あかるくなるとはしゃぐ人間ども。ダンス曲がそれを煽ってほしい。時折、者どもは孤独に堕 ち、それを振り払うようにまたはしゃぐ。UPとDOWNのキレが悪いので、止める。再度。やがて、孤独に堕ちた者がひとりずつ、離れていく。離れるものを 冷たいナイフで斬りつけるように見る他者。ここにはもっと冷酷な冷たさとそれにはじき飛ばされていく人間の弱さがほしかったな。誰もいなくなる。空間だけ がそこにある。
しばらくすると孤独に堕ちた人間どもが行軍して舞い戻ってくる。やがて、彼らは人間の固まりを見つける。近づくとそれは、死体である。驚愕、畏れ、恐怖、 戸惑い、抵抗の反応。この反応が全体的に弱かった。長い沈黙と葛藤と決意。ふと想う。「己の孤独を救ってくれるのはこの人だ。」者どもは決意し、死体をあ る者は背負い、ある者は抱き、ある者は引きづり歩き始める。死体との道行き、身体表現になっていく。佇む。詩を心の声として叫ぶ、あるいは語る。この詩に 感情を乗せたかったが、叶わず。止めて、返す。暗転。明かりが入ると人間どもは連れ帰った死体と日常を過ごしている。死体と暮らす。毎日を短い闇で何日 も、何日も。ある日、気づく。動かない、答えない死体を前に気づく。「死んでいる」ことに。我に返る人間どもは今までにない程の孤独の闇に佇む。そして、 彼らは、高層ビルの屋上から飛ぶ。暗転。客電。やはり、死体を連れていこうと決めたところから狂気を孕みたかった。尋常ではない日常に埋没する狂った世界 には至らなかった。これは、なかなか手強い作品となった。
さらに、奇妙な部屋。終盤までNみの反応が面白かったので、最後に演出を付けてみた。技術がないので、発想が形にならないことが露呈した。鍛えるしかないね。
芝居の見せ場は、最後のほんの1分なのだ。ということ。心のままに発声される声、を課題としたい。
最後に相関図。まあまあ。もう一度ダメだし後に繰り返している途中で、どうしても止めたいS美の演技により、あえなく、おしまい。時間切れ。繰り返して、繰り返して。これは愛の物語なのだから。Nみのとんでもない女編も是非また挑んでみようね。できるかな。
今回はHでの関わる映画の監督の見学もあり、食事で少し話す。おそらく監督さんの感想は的も得ているので、役者諸氏は聞いていたかな?創る側の方の見学と 感触は得るものも多いと想う。そして、創る側としては、「欲しいもの」への導線を常に課題としていくことだろうね、監督さんよ!
では、皆さんの継続を祈りつつ。
稽古の質問、感触は自由にどうぞ。反芻すること、向き合うことが一番。
劇中使用詩 
中原中也
「月夜の浜辺」

月夜の晩に ボタンがひとつ
波打際に 落ちていた。
それを拾って 役立てようと
僕は思ったわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを 袂に入れた。

月夜の晩に ボタンが一つ
波打際に 落ちていた。

それを拾って 役立てようと
僕は思ったわけでもないが
月に向ってそれは抛れず
浪に向ってそれは抛れず
僕はそれを 袂に入れた。

月夜の晩に 拾ったボタンは
指先に沁み 心に沁みた。

月夜の晩に 拾ったボタンは
どうしてそれが 捨てられようか?