2012/08/20
崩壊していく我が心、狂い花咲け。作劇により、狂気を探ってみた。

稽古より帰還。今回は稽古場を貸していただけるまでの時間におかず横町でこの夏に友達になったプードルを15分ただ抱っこした。プードルの名はオペラ、棲 まいは和菓子やさんで種類豊富なかき氷やさんでもあるのだが、あたしには猫に小判。ダブちゃんと娘と参加の役者さんが食べる間、あたしはプードルを抱っこ する。
稽古開始。参加者7名、見学1名。稽古頭に「筋を通す」について、話す。ま、いっか。あたしも叱られて、失敗もして覚えてきた。後進たちにもそれを伝えて いくだけ。うちは「開かれた稽古場」と名付く。しかし、それは我が儘勝手をしても許されるフリーではない。そのあたりをはき違えないでほしいだけ。
さて、今回は結果として作品創りを2時間休憩なしですることとなった。『崩壊していく我が心、狂い花咲け」作・演出 森島、音 Dub 出演 松本渉・玉井英棋・雷音・Mケル・Y子・S美・M子 今回の作品はあたし自身も台本に仕掛けをしていくという、ひとつの冒険をした。役者の感情を作 劇の仕掛けによって、少しずつズラしていく試み。仕掛けによって徐々に役者の感情を操作していく。その果てに狂い花が咲き乱れるという構成である。という 試み台本なので、内容は伏せる。さまざまなシーンを繋げていくが、そこに動く感情は急転直下とする。しかし、人間は平静を保とうとする。平常心に戻ろうと する。そこを闇で切る。少しずつ感情がズレ始めたところで、記憶、身体、視覚、聴覚、人としての関係性をひとつずつ、闇が消える代わりに奪っていく。身体 表現を感情の中でシーンとしていく。果たして、結果。幕開けからうまくいかない。虚飾の人間たちの登場から始まる。何度か止める。お願いをして、整える。 この虚飾の幕開けをないがしろにしてしまうことができなかった。何かをしてしまえば、この作品は闇に葬られてしまうのだ。ただただ感情を動かし、それを戻 そうとするところに身を置くだけなのだが、何かをしてしまう。その瞬間にウソになる。今回はウソになったところですべて止めた。そこから再度、再度。人間 の滑稽さも零れる構成にしているので、笑いも起こる。が、舞台上の役者の数人が舞台上で笑うという失態。もちろん、止める。再度、再度。ネジが外れていく はずが、どうしてもウソが重なってしまったM子、S美。Y子は得意なはずの身体表現になると表現にだけになってしまう。逆、その感情のままの身体表現でな くてはだめなのだ。玉井の身体表現はよかった。雷音は、今日は一度も感情が停滞することがなかったのが喜ばしい。奪われていくものが増え、感情のズレが次 第に戻らなくなっていく。玉井、松本が完遂できたか。M本は一点のブレもなく、こちらの仕掛けに嵌ってくれた。
決して、登場人物を嵌めるために書いた台本ではないが、嵌ってなんぼだからね。ラスト「ある晴れた日」の中、狂い花満開とはいかなかった。
今回は妥協ができなかった。今、想う。芝居創りには妥協はいらないな、と。仕上がりはダメだったけれど、稽古はこうして丁寧にやりたい、と充足感はある。 狂気を演じるのではなく、狂気をみせる、糸口はみえた。この完成が叶えたいな。物狂いとはなんぞやをずっと追っている。狂気とは実に静かな恐怖である。松 本、できたよね。よかった。
稽古をする。感触を得る。その感触を1つずつ増やしていくこと、それが、積み重ねる修行ではないかと確信もした。初参加のMちゃんもここからスタートライ ンで、削いで、自由になってほしい。S美のウソは発声された「声」がすべてを物語っているのだ。声の修正は、あたしはしない。感情が動けば、声は変わって いくはずだから。
作品創りに120分、ダメだしに10分。以上しかできなかった、が、よし。