2013/01/14

無事稽古から戻った。雪の中、見事に5名の参加者。それぞれが「自分ひとりの特訓かと思いました」と恐る恐る稽古場へ来たらしい。あたしはあたしでこれだ け勢い込んで行って、あたししか来なかったら、これを稽古しようと戯曲1本持ち込んだが、嬉しい誤算となった。しかも、素晴らしい出来で、モチベーション は上がるときゃ、全体で上がるんだ、何十段も。誰がよくて、誰がダメでという稽古はあまり良いとは言えない。全員がきっかり瞬間瞬間を活きてくれたとき、 その芝居は仕上がっていくのだ。本日は作品50分を創る。「さ乱るる、五月雨の如く」作・演出 森島、音 DubMasterX  出演 松本渉・玉井英棋・マイケル・リュー・石渡陽子・藤川千景
見学1名(映像 花)今回は「歩き」を通して、人間を描いた。心象描写からはじまる。やがて、老人の歩き、子供の歩き、そして、私自身へと立ち戻ってい く。
感情を動かすこと、それを身体、そして、声に載せていくこと。台本に本公演以外で久しぶりに個人名あ、い、う、え、おを付けた。出演者5名の作品、奇しく も5名の参加者だったので、配役して、スタート。暗転の中、響く口笛、最初に登場する玉井の勘が少し鈍かった以外は、順調に創ることができた。今回は止め ず、声を飛ばして居場所や動きを修正していった。2カ所淀んだ部分は止めて返して、繋げた。
全員言葉が弱い。前回もしかりだったが、書かれた言葉を言葉として伝える圧が弱い。謂わば、言葉の持つ圧に負けてしまう。これからの課題としたい。最初の シーン、「誰に、何に出逢ったのか」がもう少しはっきりイメージできたなら、次の心象表現も活きただろう。慌てず、感じて、見て、次のシーンに動けばよい のだ。
最終章で孤独だった人々が共鳴していく部分、拘り、進めた結果、とても温かく美しく、強い愛が見えた。大成功だ。今回は出演者全員が活き活きと輝いてい た。挑んだ役者たちの感触もかつて得たことのないものだったはずだ。
音のボリュームが大きすぎるシーンが気になった。Dさんも敏感に役者の創るシーンを感じて、音を出してほしい。文字だけを追っている気がした。
稽古台本を公開する。
☆動画はかたつむりを見つめ続ける〜行進まで。
☆空白部分は、動きのズレを文字にして、わかりやすくしてみた。
使用曲は全編通してミニマルテクノが流れ続けていく。
http://www.youtube.com/watch?v=aL8l_QcqCUU 全編(客入れ途中から音IN)
客電落ち、暗転。しばしの静寂。口笛。
登場人物あ 歩く。何かに出逢う。立ち止まる。心象表現。佇む。
登場人物い 歩く。何かに出逢う。立ち止まる。心象表現。佇む。
登場人物う 歩く。何かに出逢う。立ち止まる。心象表現。佇む。
登場人物え 歩く。何かに出逢う。立ち止まる。心象表現。佇む。
登場人物お 歩き出すと 登場人物あ 歩き出す。
      お 何かに出逢う。立ち止まる。登場人物い 歩き出す。登場人物う 歩き出す。
                     お 心象表現。佇む。と登場人物え 歩き出す。
歩き出したあ、い、う、え、はおを追い込む。
お 極限の恐怖を感じ、気を失い、倒れる と 全員が老人に変わる。
老人達、彷徨い歩く。帰る場所を探し求めて彷徨い歩く態。それぞれがはっきりした声(しかし、それは老人の声である)で
名前と年齢を言う。
ヤマダゴロハチ 87才、ウメノトメ 75才、イシヤギシンイチ 93才、スギハラマリ 88才、カオル 102才
「地獄極楽最果ての、いつか来た道彷徨えば、あの夢いつかを想い出し、真綿で心を締めつける」
己の首に手をかけて、微笑みながら子供になっていく。
子供達、歩く。子供達、出逢う。母。母は優しく抱きしめてくれる。
「幸せと思ったことがあったとすれば、それはあの時。」
至福の身体表現。声。
次第にそれは、絶望の身体表現へと変わっていく。声。身体が号泣している。
「真夜中に目が覚める。いつもはきこえない高周波の音が耳を抜けて、心を突き破る。誰か・・・・」
「みた。見てはいけないそれを、みた」
堕ちていく。自堕落に堕ちていく。
彷徨い歩く。歩く。媚びを売り、己を墜とし、堕ちていく態。
動けなくなる。
佇む。ただ、そこに佇む。地面を見つめる。
小さなかたつむり。ぬるぬると這い回るそれらを見つめ続ける。
「どこまでも這い続けるやつらに己を重ねる。そこまで己は堕ちてはいかないと、くだらない幻想を抱く(いだく)。身体から感覚がなくなる。」
身体がぬめぬめと、ぬめぬめと歪んでいく。
歪んだ身体を引きづって、歩く。
互いの存在に気づく。
手を伸ばす。求める。
心から互いを求め合う。

歩く。一丸となるような、行進であってほしい。

身体表現。「愛」
声。
暗転。
高らかに。(暗転暗闇に響く声)

「汚れっちまった悲しみは
なにのぞむなくねがうなく
汚れっちまった悲しみは
懈怠(けだい)*2のうちに死を夢(ゆ め)む*3

汚れっちまった悲しみに
いたいたしくも怖気(おじけ)づき
汚れっちまった悲しみに
なすところもなく日は暮れる……」

客電。