2013/02/11

開かれた稽古場。祝日。稽古場のロビーに着いたらスタッフに「稽古やりますか?」と訊かれる。うちはどんな大雪でもヤリが降っても象が空から落ちてきて も、稽古はやるのだ。「もちろん」と応え、もちろん参加のメンバーも集まってきた。いつものスタジオは使えないらしく、他のスタジオを用意された。スタジ オに入ってビックリ。タイムスリップした。ここはNYだわあ、とあたし、一気に上がる。素敵な空間で稽古できる幸せ。音響設備もよくて、卓に座ったDub ちゃんが何年ぶりかに素敵に見えた。NYにはこんなスタジオがたくさんあって、そこで稽古を重ねた日々、なつかしい。今回の作品はこのスタジオ空間にピッ タリ、蠢き、狂気の作品。仕上がりもよくて泣けて素晴らしかった。全員上げ上げだったみたい。丁寧に作るしかないわけのわからない台本に挑み、よい稽古 だったのだ。想像の世界を土台に描いたので、この幻覚世界を観客に共有してもらえるかどうかが勝負、今日の出来を土台でいけると想った。好感触。それぞれ に今後の目指すべき先をアドバイスし、途中「作り笑顔」の貌の筋肉使いを伝授したくらいか。できることが増えていくこと、繊細な物語が紡がれていくときは とても嬉しい。
★今回は作り笑顔〜歪な笑顔になっていく心理描写のシーンの動画と
★眠剤で見る幻覚世界の身体表現の動画を公開する。
作り笑顔が消えていくシーンは泣ける。
以下、台本公開。
「なぜ?」作・演出・選曲 森島、音 DubMasterX
出演 松本渉・玉井英棋・マイケルリュー・藤川千景

客電落ちる。
足踏み。足踏みが続く。走り出す足音。
誰かを追いかけているのか?
晴れやかに明かり。
ある者は洗濯機の中で回る洗濯物をながめている。
ある者はスーパーの魚のパックを眺めている。
ある者は、低い空を見上げている。
(唱和)「日常に埋没していく私を妄想世界のあたしが冷たくみていることに気づく時、しょうがないじゃないの、とはね除ける。はね除ければ、妄想 野郎はすぐ消えてしまう。そして、私は眠剤をポリポリ囓る」
「眠剤をポリポリ、眠剤をポリポリ、眠剤をポリポリ」突然襲ってくる睡魔。
「眠らない」と突然の幻覚世界に落ちていく。使用曲 ピコピコ電子大学http://www.youtube.com/watch?v= TbFJx3jcuSs
見えるものは巨大なへび。巨大な鼠。巨大な蜘蛛。いつしか私の身体は軟体動物になっていく。
身体表現。
「神経が尖る。得体のしれない自分自身に反吐が出る。吐き気がしてきた」
激しい嘔吐。吐瀉物をぼんやり眺めている。「ただただ疲れただけだ」
作り笑顔。笑顔を作る態。作り笑顔で愛を語り合う。
使用曲  LOVE SONG ファンキーモンキーベイビーズ
http://www.youtube.com/watch?v=Z5fNOFGNZgw
エンドレスに作り笑顔で会話していく。言葉はすべて上っ面な言葉でありたい。
次第に笑顔が歪んでいく。笑顔の畸形。畸形の笑顔で、足踏み。
足踏みをしながら、泣いていたい。
暗転。
晴れやかな明かり。女が男を追いかけてくる。
「待って〜」
男は声に気づき立ち止まり、振り返る。女を優しく見つめる。男を女は優しく見つめ返す。
ゆっくりゆっくりお互いに向かい歩き出す。足踏み。止まる。見つめ合う。
至福。身体表現。無音。時折 生活音。
軟体動物として絡み合う。美しい性愛描写がそこに蠢く。
「この感情を忘れずにいたい。この快楽は」
「眠剤をポリポリ、眠剤をポリポリ。」
「眠い」「眠い」「眠い」ヒステリックな悲鳴になる。
暗転。
晴れやかな明かり。ぽつねんと佇む。
「ひとりだ」
「どうしようもなく、ひとりだ。」
「しょうがない」
暗転。
静寂。
客電。
「なぜ」が場内に木霊する。★マイクによるエフェクト

他に「デイべート」2作 相関図「悪女」
マイケル炸裂。T景ちゃん、悪女考もっともっと。Hでの落胆の感情がよかった。ラストうまくいかなかった。M本の酔っぱらい、巧かったね。
以上。思いがけないスタジオ、GROKSさん感謝。