2013/04/29

開かれた稽古場より帰宅。黄金週間なので、参加者はいるのか、重いテーマの作品の構想を頭と心に持て余しながら、やってみよう、と決意して、一気に書く。戦争、原爆、差別、いじめが大嫌いだ。人間が何故(なにゆえ)人間を痛めつけるのか?そんな芝居。想像力でしっかりイメージをみて、その状況に存在することをお願いする。台本を渡したら三人の出演者は皆戸惑った顔をした。山田ジャパン稽古休みで参加すると走ってきた松本も、ここに来たら笑いとは無縁の台本を渡されるわけだから。
言葉(台詞)による状況説明は極力排除した。その状況の中で、実感のある反応だけを紡いで、それを観客席に伝えたい。そう思ったから。伝わるのだとあたしは信じている。最初の説明の時点で「原爆」「いじめ」「戦争」という説明を加えた。幕開けは四肢をもがれた人々が座っている。そして、言葉。松本は自然に泣き出した。桶の言葉に実感がないので、泣けない。止めて返す。三度目の正直で泣きが出た。一気に進める。音はDub製作の「不協和」系から2曲選び、使用。今回は空間共存がとてもよく、三人ともとてもよかった。音もあたしの創りたいものにピッタリくる。
音と身体表現の共鳴、共存を探ることが面白かった。
これからもつきつめた作品を創りたいね、と思った稽古だった。三人の役者さん、Dub音ありがとう。
音は公開できないので、身体表現で少しどうぞ、動画上げます。
台本公開。
★動画は身体表現「人間が人間を赤く染める」部分。

『ザラザラするので、紙ヤスリでゴシゴシしたら、赤い剥きだし。』
作・演出 森島、音製作 Dub 音操作 森島、出演 松本渉・マイケル・リュー・桶谷健司
客電消える。
明かりが入るとそこは檻の中。手足をもがれた人々がぼんやりと座り込んでいる。
「たまらない激痛はいつのまにか消えた。腕の付け根が痒い。足の付け根が痒い。いや、やっぱり痛い。」
声をあげずに泣く。
暗転。明かりが入る。
激しい音楽と共に浮かれ踊る人々。嬌声と笑い声と陽気な会話。
使用曲the telephones - 「sick rocks」
 http://www.youtube.com/watch?v=J0wXXCYx-m0
音もなく、辺り一面が明るくなる。
得体のしれない恐怖。激しい身体の震え。「ついに」「落ちた」「神の怒り」「殺戮の因果」「今ここに」「見たこともない光」
「それは影」「暗澹たる影」
燃える景色をみる。四方八方逃げまどう。身体が激しく震える。
「助けて」
悲鳴を上げる。
暗転。
明かりがつく。とぼとぼと歩く。かかとに小石があたる。
とぼとぼと歩く。あちこちから小石が飛んできて、身体にあたる。
無言で歩く。唐突につぶやく。「もうやめて」
とぼとぼと歩く。
身体表現。「悲しすぎて」使用曲 Dubs
暗転。
明かりが入る。走っている。ドアを開ける。真っ黒な海が広がっている。
「もうどこにも帰る場所を無くしたこども。それが僕の景色を変える。もうやめて、もうわからないよ。もうやめて。」
ドアを閉める。振り返る。銃を構えた兵隊の隊列。あとずさり。
逃げる。背中に弾丸がささる。
激しい苦痛。恐怖。痛み。
逃げる。足に弾丸がささる。激しい痛み。のたうち、さらに逃げる。
「どうなってしまうのだろう。」
身体中に撃ち込まれる弾丸。
暗転。
明かりが入ると
後ろ手に縛られた人々。心がザラザラしている。
「ザラザラの心をいつまで抱えて、どこに向かえばいいのでしょうか?」
号令のように叫ぶ。何度も何度も叫ぶ。
四方から黒い人が近づいてくる。電気鋸の音。
腕を切られる。
足を切られる。
崩れ落ちる。
転がる。
音もなく、天から降る光の束。
身体を溶かす光の束。
「僕の命は今もなお、息づいていて、僕の身体はドロドロで、僕の心は正体をなくせずにのたうっている。ザラザラしていく。僕の心がザラザラしてい く」
激しい怒り。
身体表現。「人間が人間を赤く染める」使用曲 Dubs
「痛い」
泣く。
暗転。
明かりが入る。
ひたひたと歩き回る人々。
ひたひたと歩く。
つぶやく。

ちちをかえせ ははをかえせ
としよりをかえせ
こどもをかえせ
わたしをかえせ わたしにつながる
にんげんをかえせ
にんげんの にんげんのよのあるかぎり
くずれぬへいわを
へいわをかえせ

ひたひたと歩き続ける。
泣いている。

暗転。
暗闇。
客電。

他に「+−」のシーン作り。2本。1本目はまったくはっきりせずダメ。2本目もまあまあ。声、シーンのボリュームが上がったのはよかったが、それだけ感。
次に「否定と肯定」のシーン作り。えぐり、称賛ともにどこか本気じゃない。本気でやらなきゃ。
最後の相関図には三人ともに愛が見えた。まあまあの出来。
稽古はさらに繰り返す。
桶が初参加から連続して参加。継続により毎回殻が外れていく。このまま上がっていけば嬉しい。
以上。