2013/05/06

開かれた稽古場より帰宅。桶谷健司くんひとりの参加。音のDubちゃんと桶とあたしでがっつり創る。見学1名。撮影、花。今日は桶ひとりかもね。と稽古前に言ったら、桶が即座に「ラッキー!」と言った。なかなか根性の(死語)ある子だなと好感を持った。もう長いつきあいになる女優の友達が桶を同行してから、無欠席で食らいついてきている。回を重ねる毎に脱皮していく。覚悟を感じる役者だと思っているが、果たして。というわけで今回はマンツーマンの稽古、小返し、今後の課題の話、役者企業秘密的なコツも伝えることができた2時間だったので、細かいことは割愛する。個人稽古のできる回はこれまでも「秘密の1000本ノック」としてきたので、通例通り。今回の作品は観念論であり、アンチテーゼであり、問いかけである。桶のひとり芝居として、充分に演りきれたのではないか。まだ足りないところはあるが、それは繰り返して埋めていけることだ。いい成果。ひとりで感じ、身体全体で表現し、言葉を話し、感情を細かく追う。1時間15分の作品なので、反芻して、財産にしてくれ。いい顔をしていた。心が溶けた時の顔は美しく、哀しい。
作品公開。
★動画は「身体表現」発狂す。部分。
音はいつものYoutube音源をこのところやめていたり、Dub製作ものを使っているので、上げませんが、動画で聴くことができます。あしからず。

「極楽蜻蛉の見る空は朝焼け夕焼けもういいかい。うしろの正面、あっかんべ。」
作・演出・選曲 森島、音、音製作 DubmasterX  出演 桶谷健司

客電消える。
暗転中

春よ三月春雨に
弥生のお空に桜散る
奥州仙台伊達公が
何故にバナちゃんにほれなんだ
バナちゃんの因縁を聞かそうか
生まれは台湾台中の
阿里山麓の片田舎
土人の娘に見染められ
ボーッと色気のさすうちに
国定忠治じゃないけれど
一房二房もぎとられ
唐丸籠にとつめられて
阿里山麓をあとにして
ガタゴトお汽車にユスられて
着いた所が基隆港
基隆港を船出して
金波銀波の波を越え
海原遠き船の旅
難関辛苦のあかつきに
ようやく着いたが門司ミナト
門司は九州の大都会
仲仕の声も勇ましく
エンヤラドッコイ掛声で
問屋の室に入れられて
夏は氷で冷やされて
冬はタドンでうむされて

八〇何度の高熱で
黄色のお色気付いた頃
バナナ市場に持ち出され
一房なんぼのタタキ売り
明かりが入っていく。
押し黙る人々。手で口を押さえる。所在なげに佇む。
「雨降りちんどん」音。
「演劇でもやろうかと思った。働くの嫌いだし、みんなに注目されて、売れたらいいじゃん。原宿を歩いてたら、何とかエージェンシーって人が名刺を くれた。渡りに船だ。青山にあるきれいなマンションを訪ねた。」
タレント気分で写真撮影される態。
タレント気分でサインの練習をする態。
タレント気分でウオーキングの態。
哄笑。
「え?200万ですか」驚愕と混乱。迷い。彷徨う。
夢をみる。身体表現。「少年よ大志を抱け」
「パチンコをして、すっからかん。ありったけの財産を売って、手元に7万円。どうにもならない。無理だ。と思いながら、夢から醒めなかった。」
両親に電話を掛けて、懇願する。
「絶縁か・・・」放心する。哄笑。
暗転。
明かりが入る。
ヘラヘラと笑っている。「金、金、金。鐘が鳴る」唐突に殺意に変わる。
彷徨い歩く。出会い頭に他人を刺す。倒れるその人の着衣をまさぐる。哄笑。
彷徨い歩き、他人を刺す。倒れるその人の着衣をまさぐる。哄笑。
繰り返す。茫然自失で佇む。おもむろに血だらけのナイフを足下に落とす。
無我夢中で血だらけのお札を数える。「足りない、足りない、足りない」
気づく。葉っぱ。血だらけの葉っぱ。
身体表現。「バカ」
哄笑。
暗転。
明かりが入る。
ぐでんぐでん。ぐでんぐでんに酒に酔い、彷徨っている。
「演劇でもやるか・・・売れたい・・・」
止めどなく酔っていく。高揚。
「演劇でもやるか」
さらに高揚。哄笑。
「酒ばかり呑んで、ぐでんぐでん。身体中がボロンボロン。」
浮かれて踊る。
月も朧に白魚の 篝(かがり)もかすむ 春の空
つきもおぼろに しらうおの かがりもかすむ はるのそら
冷てえ風にほろ酔いの 心持ちよくうかうかと
つめてえかぜに ほろよいの こころもちよく うかうかと
浮かれ烏(からす)のただ一羽 ねぐらへ帰る川端で
うかれがらすの ただいちわ ねぐらへかえる かわばたで
竿の雫か濡れ手で粟 思いがけなく手にいる百両
さおのしずくか ぬれてであわ おもいがけなく てにいるひゃくりょう
(呼び声)おん厄払いましょう、厄おとし
おんやく はらいましょう やくおとし
ほんに今夜は節分か 
ほんに こんやは せつぶんか
西の海より川の中 落ちた夜鷹は厄落とし 
にしのうみより かわのなか おちたよたかは やくおとし
豆だくさんに一文の 銭と違って金包み 
まめだくさんに いちもんの ぜにとちがって かねづつみ
こいつは春から 縁起がいいわえ
こいつははるから えんぎがいいわえ

哄笑。
脱力するように崩れ落ちる。
空を見上げて。
「空はいつまでも青い。僕はもうボロンボロン」
暗転。
明かり。
身体表現。「発狂す」
暗転。
明かり。
放心し、笑っている。ニコニコと笑っている。
ゆっくりゆっくり歩く。それは雲の上を歩くように、空中散歩をするように。
つと立ち止まる。

振り返る。
「誰?」
「オレは誰?」
ヘラヘラと笑う。
暗転。
「演劇ってなあに?」
明かり。
踊り狂う態。ダンス曲。
暗転。
客電。

他に相関図。「あるシーン」警察官の場合。
即興のシーン作りも重ねて重ねて自由に愉しんでいけるといい。
以上。