2013/08/05

暑いけど、はりきって稽古場へ。今回慎一郎の座組さんが入っているので、挨拶方々陣中見舞いに寄ろうと早めに稽古場へ向かう。残念乍ら、稽古中でチラリと覗いただけ。我々はまたもやNYスタジオ。よくしてくれるGROKSの杉本社長、スタッフのみんな、感謝。今回の作品は、想像力で作り出した世界の中で動き始める感情で進む物語、今回はダウンタウンの暗いスタジオを想定して、明かりも決めた。このスタジオは明かりも創れるので、素敵極まりない。あたしも勉強になる。虐待や強制のコワさ、それに抵抗し続ける心と押し黙り従う心、その葛藤と狂想を描いてみた。あたしは強いメッセージを抱いて本を書くが、決してそれは説教でも説法でもない。演じる役者の感覚がそのまま観客席に伝わり、そこから一石投じていければよいのだ。だからこそ、役者はそれなりの、あるいはそれ風のこと以上の実感で演じてほしいのだ。今回は幕開けの怯えが緩くて、やり直す。おそらく想像しているものが緩い、ぼんやりした実感であるため、そこには「さらなる怯え」が見えてこない。かと言って、身体を震わせてみたとて、実感の弱さは補えないということだ。幕開けの修正によって、先の展開がはっきりした。途中、人形の動き、人形の口伝えを借りた心象描写について、まだ納得はしていない。人形振りを伴うため、今回は振りの修正のみになってしまったかもしれない。あまり重いシーンにはしたくないので、人形の姿に載せたシーンなので、成立させてみたい。
感情を出してほしいとお願いすると叫ぶ、叫ぶことで言葉が聴こえてこない。これは、きっと叫ぶことによる自己陶酔だと想える。芯のある感情を吐き出せば、伝えたい言葉は粒だつはず。
感情がドライブして、結果として泣く、狂うということを求めて、探っていく。
身体表現と言葉の融合、まだまだ分断してしまうので、次回は言葉の入れ方について、サジェストしたい。今回は言葉を飛ばしてはみたが、うまく伝わらなかったので。参加3名。久しぶりの千景もやっと言い続けてきたことが繋がって来たし、桶はまた先の課題にぶつかっている。松本はさらなる要求をしておいた。身体表現のグレードアップというところかな。
それぞれが、よい感触で岐路にまた立つ。稽古は強い。
今回も作品と使用曲公開する。
★ 今回の動画は身体表現「世を儚んで」部分。使用曲 龍山一平曲
『我の隣に風吹きすさび、我の隣に誰の泣く声蝉時雨』
作・演出・選曲 森島、音操作・虐待音 Dub、出演 松本渉・藤川千景・桶谷健司

客電落ちる。
強い声「ジークハイル!」
明かり入る。直立不動の人々。軍靴の響き。怯える。
強い声「 勝利のために汝の犠牲を捧げよ」
全身の力が抜ける。しかし、佇んでいる。さらに怯える。
身体表現 「ここからの逃避」使用曲 布袋寅泰 & Brian Setzer & Char JEANIE JEANIE JEANIE
http://www.youtube.com/watch?v=rS0itH0m48c
言葉。「諸君は総力戦を望むか?望む!」 「求められれば、今まさに想像しう る以上の、全面的かつ徹底的な戦争を諸君は望むか?望む!」「私は諸 君らに 問 いたい。諸君は今でも総統を信じているか?いかなる場面でも総統に従い、 戦争貫徹のためいかなることでもやり遂げる、諸君らの覚悟は無際限で絶対 的 なもの であるか?然り!」
激しい恐怖と怯えに動けなくなる。やがて人々の顔が無表情になり、ゼンマイ仕 掛けの人形となって、動き出す。
「僕はジョージ(あたしはメアリー)いつでも誰かに恋をして、あの窓辺から誰 かを見つめていた。僕の(あたしの)誰かはいつでも後ろ姿のままで、 僕の (あたしの)前から煙のように消えた。僕は(あたしは)いつでも寂しくて、ま た誰かに恋をするんだ。僕が(あたしが)こうして歩き出したら、 いつかあの 背中に追いつける。そう想い乍ら、僕は(あたしは)ずっとずっと歩き続けてき た。あれから、ずっと、もう100年くらい時が過ぎたよう な気がしている。 今、何時ですか?今、ここはどこですか?僕は(あたしは)いつまで歩き続ける のですか?僕の(あたしの)行く先にはいいことがあ るのですか?僕の(あた しの)進む向こうには、誰かが待っていてくれるのですか?」
次第に人形だった人々に魂が蠢きはじめる。(感情の海に溺れるが如く)「奇麗 ごとばっかり。ウソばっかり。命令ばっかり。戯言ばっかり。裏切り ばっか り。束縛ばっかり。その場ばっかり。痛みばっかり。悲しみばっかり。別ればっ かり。ねつ造ばっかり。裏工作ばっかり。虚構ばっかり。ばっか り、ばっか り、ばっかり、バッカス!!」
身体表現。「世を儚んで」使用曲Auto & Tatsuyama Ippei - restful days
http://www.youtube.com/watch?v=nPnZFpq-MxA
言葉。「もう二度と」「もう一度だけ」「もうやめて」「もうそこで」「もうそ れは」「もうもうと」「もんもんと」「もう決して」「もやもやして」 「もう 消えて」
芋虫が這うように床を這い回る人々の態。
強い声「強制収容所」
お互いにじっと見る。お互いに探り合う。お互いに話しかけようとして、やめ る。
沈黙。突然立ち上がり頽れる。床を這い回る。力尽きて停まる。ゴロ ンと ひっくり返る。
天井を凝視する。
「見えない空が見えてきた」
「空が見たい」
「今更」
「目を閉じても、もう何も想い出せなくなった。見えるのはまぶたの裏側だけ。」
太鼓が鳴る。身もだえる。太鼓が鳴る。身もだえる。太鼓が連打される。激しい 痛みにさらに身もだえる。
力なく立ち上がり、呆然と佇む人々。
蝉時雨が聴こえる。
「悲しいという気持ちがどんな形をしていたのか、もう想い出せなくなった。」
泣く。泣き叫ぶ。静かに狂っていく人々。
突然首に縄をかけられ、引きずられる。 「僕はジョージ」「あたしはメアリー」
蹴飛ばされて、立ち上がる。 力なく足踏みをする。無表情になっている。
身体表現。「虚無地獄」使用曲ちあきなおみ/喝采
http://www.youtube.com/watch?v=KPxs_Mhdg08 繰り返し。
音としての言葉。意味をなさない音のみ。
人々は泣いている。
暗転。
「あの夏の日、聴いた蝉時雨。 もう一度、聴きたい。 あの夏の日。」
明かり、カットイン。 うつぶせの人々。太鼓連打。 人々は動かない。
カットアウト 暗転。
「こっちを向いてよ」
「否!!」
客電。

休憩後、即興「溶く」千景を中心に。舞台上のシーンである工夫とオンステージの華やかさと開放がもうひとつ欲しい。
最後に相関図、2作品。愛情の強さがまだまだ浅い。言い訳ばかりのケセラセラか。(笑)
以上。