2013/08/12

雷雨の中、稽古場に到着。うちの稽古場は嵐には皆強い。時間通りに稽古開始。今回は参加者の都合で8時からの参加というお約束をしていた方がいたので、先に即興と感情の訓練をして、休憩後に到着した二人を加えての作品創りとした。ちょうど休憩に慎一郎も陽気に現れて、暢気な顔していたけど、もう来週旗揚げ初日だ。集中してがんばれと送り出す。時間通りに到着した初参加2名を加えて作品創りをした。参加者4名。前々からうちの稽古場に興味を持ってくれていたオルガンヴィトーさんから京さんと茶太朗さんが参戦した。今回の作品は、原爆投下を下地に人間の確執と愛と歴史の痛みを書いた。想像する世界が生半可ではない世界、そこから合わせ鏡のように見えてくる純粋なもの、の存在。男と女の感情が捩れる。それはやはり合わせ鏡のように己を映し出す。
茶太朗さんは内面の蠢きがとてもいい。身体が中盤から動き始めたので、あたしは動けとか踊れとは言わなかった。稽古後に、それを身体としての表現になればもっといいのではないかと助言だけ。京さんは、もっとやればいいのに、と想ったが、今回は探り探りで、ほとんど動かなかった。感触はとてもよかったので、また新たな切り口が拓けるかもと期待。松本の巧さが際立っていたが、台詞がどうしても走り過ぎてしまうので、もっと言葉を急がず発することができたらいい。オキヌは、前半の即興で心が大きく開いた。これは嬉しい。作品は、身体表現については、感じるより動いてしまう点が気になる。何かを表現するのではない、感じたことが表現になればいいのだ。
帰宅後、別件の英文企画書を確認しなければならずでオルガンヴィトーのお二人と話せなくて残念。お互いに刺激し合って、新たな世界が産めたら素敵と想った。今回の作品はあたし自身の身体が熱くなってくる衝撃があり、こうなると演りたくなってしまうな。作品と使用曲を公開する。
★ 今回はすべての動画をみて、いいな、と想う瞬間が随所にあり、全部上げたら1本分になりそうなので、導入部の身体表現と原爆投下〜の身体表現の2本を上げる。

『まだらな顔でタラッタラッタラ、月夜に想う、記憶の彼方を』
作・演出・選曲 森島、音 DubMasterX、出演 松本渉、オキヌ、不二稿京、高橋茶太朗 撮影 花
客電落ちる。
暗闇の中から。
「あの日、オレ(あたし)の頭の中がぐしゃと音をたてた。オレ(あたし)の発狂の瞬間、オレ(あたし)は商店街を歩いていた。ものすごくまずい酒 を呑んで、駅のホームでため息をいくつもついたのは、もうひと月前だった。ひと月経って、オレ(あたし)の中でいきなりの爆発が起きたのだ。」
明 かりが入ると身体表現。「いなくなる瞬間という意識の下」使用曲 ジャックス「からっぽの世界」http://www.youtube.com/watch?v=qFOvuLPAz2U
言葉、「かあさん」「おかあさん」「ママ」「かあちゃん」「おまえ」「おふくろ」「へその緒のがんじがらめ」「赤ん坊のように」「眠りたい」「かあさん」「ママ」「おまえ」
つと我に返る。「オレのすべて。オレのママ。」
         女 無言。顔を歪める。
女「ん?なあに?」
男「え?」顔を歪める。
女「今夜、何食べる?」
男「え?」さらに顔を歪める。女 さらに顔を歪める。
女「作るの?また。」なおさら顔を歪める。
男「また?」なおさら顔を歪める。
歪んだ顔で見つめ合う。「この鏡、曇ってる。磨いておけよ。(磨かなくちゃ)。いやな顔(だ)。おまえ(あなた)」
それぞれに強い嫌悪感を抱き、言い返そうと言葉を発するが、言葉が出てこない。
何度も繰り返すが、言葉が出てこないので、激しく苛つき、激しく動き回る。次第に男も女もまるで本能だけのオオカミのような態になって、 うめきあい、吠え合い、睨み合う。飛びかかろうとするが、たじろぐ。
たじろぎがとてつもない悲しみを生み、己を強く抱きしめながら、しくしくと泣き始める。しくしくと泣く姿は子供の姿にみえはじめる。
「子供の頃、みんなで暮らしていた家が燃えた。父と母とおじいちゃんがみたこともない冷たい顔で話している、黒い煙の中に置き去りにされ た弟。オレは(あたしは)コワくてこわくて、何も言えなかった。違うんだ、何も言えなくなった。言葉の喪失、心の喪失。コワくて、コワく て、誰もオレを抱きしめてくれなかったし、置き去りにされた弟のことはまるでいないかのように、誰もが忘れているようで、、、え?忘れ る?忘れる?ウソ、ウソ、見殺し、違う、忘れたふりを続けたのだ。え?違う、違う、弟が燃えてしまうよ、死んでしんで死んで死んでしま え。え?違う、違う、違う。オレは(あたしは)何も知らない。」
いつの間に呆然自失の態で燃え落ちる家を見ている。振り返る。目が合う。男、そして女。
身体表現。「黙っていたい」使用曲 2Hours of Techno http://www.youtube.com/watch?v=0w_Yjx0dxH8&
言葉。「無言」「沈黙」「喪失」「違和感」「失語」「病理学的言葉の喪失」「神経衰弱」「無感情」「意識の崩壊」「忘却される言葉」
「忘却される記憶」「沈黙」
顔がどんどん歪んでいく。熱い。痛い。苦しい。
焼けただれていく己の身体。
「え?なぜだ!焼けただれて焼けただれて、死んでいく小さな弟。違う、違う、殺されたのは。オレ。(あたし)」
床に吸い込まれるように、溶けるように、蠢く。からみあって、重なり合っていく。
「貪るように息をする。貪るようにあがく。貪るように逃げ出した。」
焼けただれた身体で立ち上がる。微笑む。
「生きた。記憶を封じ込めることだけがオレに(あたしに)鉛のようにのしかかったけれど。」不自由な身体で歩く。
男、女。
出逢う。歪んだ顔をしている。お互いの姿を見つめ、後ずさりして、逃げ出す。
「待ってくれ。」「待って」
「あ、言葉。」耳を塞ぐ。言葉が聴こえるが、どの言葉も意味をなさない。
逃げ出すように歩き出す。背中を丸めて、うつむくように歩き続ける。
火の中。恐怖。という記憶の中に佇む。
「抱きしめて」
はっとして、お互いに近づき、抱きしめる。とてつもない熱さに怯える、恐怖。
自失していく。
「話すことはできない記憶の中で、オレは(あたしは)夢中であなたを抱きしめた」
言葉を交わそうとするが、言葉が出ない。歪んだ顔でお互いをみる。お互いの心の中を覗く。
身体は自由になり、歪な顔かゆっくりとまだらが消えていく。
「愛しているよ。(愛しているわ)」何度も繰り返すうちに言葉の意味を無くしてほしい。
「え?」
手を繋いであるきだす。
「あれは、ウソ、創られたウソの記憶」
「オレも」「あたしも」
立ち止まる。
男「火の中で弟は死んだ」
女「え?」
女「火の中で弟は焼け焦げた」
男「え?」
男、女「あの日」
男、女「あの夏の日」
辺り一面が光る。
男、女 顔を歪める。
恐怖。
ゆっくりとゆっくりと空に手を伸ばす。
「あれはなに?」
「言葉が」
「出ない」
身体表現。「静寂の中のあの忌まわしさ」使用曲Rick Wakeman http://www.youtube.com/watch?v=00I3jPCeujY 
言葉、「見えない目」「聴こえない耳」「閉ざされた記憶」「忘れない記憶」「足りない言葉」「言葉以上の記憶」「見たもの以上の記憶」
「まだらな記憶」「抱擁する記憶」
暗転。
沈黙。無音。
暗闇。
「心の闇」
明かり入る。
空に手を伸ばす彫像。
暗転。
客電。http://www.youtube.com/watch?v=ELQT9Zq5q_4

前半は「いさかい」のシーン創り。最後の10本目で松本にもオキヌにもピークがやっと出た。これを中盤にもってきたいね。
相関図は、やはり愛が弱い。いつか素敵なシーンに出逢えますように。
さらに続く。
以上。