2013/08/26

開かれた稽古場から帰宅。道中急に雨。今回はいつもの参加者たちが公演週だったり、稽古入りしたりなので、松本とDubちゃんのセッションにしてもいいかな、と想いながら稽古場にいくと貴也くんが来たので、今回の作品としてはベターな合わせ鏡のような仕上がりになった。台本はあくまでも文字で書かれた世界である。それを立体的にしていく。作と演出があたしなので、この両者にはあまりズレはないと言えるかもしれない。そこを役者たちがいかに立体的にしてくれるかが毎回愉しみになってきた。100作品くらいはあっという間に文字として残っていくけれど、芝居として仕上げていけたものは少ない。
今回は人間の内面に切り込む。もしかしてそこは狂った人たちの棲むところ。
果たして、狂っているのは僕なのか、あなたたちなのか、社会なのか、そんな作品。松本は冴えた。稽古の後はおなかがすいているのかいないのか位クタクタだったそうだけど。内に向かう作用は役者にとっては堪える。これでもかこれでもかと追い込まれていくのだけれど、ただそれだけの感情描写は演劇にはならない。そこに物語があり、言葉がある。その浮遊がとてもよく出来た。貴之くんもだんだんと入り込み、ラストに向けてよくなった。
Dubちゃんがラストを「感動した」と語った。純粋なラストシーンが産まれた。うちの稽古場作品は台本のある即興なので、ここを基盤にした芝居創りが理想でもある。松本には身体表現の次の目標を渡した。貴之くんは繰り返し、重ねることでもっと出来ると想った。面白い存在だ。
作品、使用曲を公開する。
動画は身体表現「閉じ込められて壊れていく」使用曲友川かずき部分。
別にラストシーンを上げる。
『真っ白な暗闇にて、あなたの息を数えてみれば、極限地獄に真っ逆さま、ナンマイダー。』
作・演出・選曲 森島、音、劇中音 DubMasterX 出演 松本渉、榎本貴也
客電落ちる。
明かり入る。所在なげに佇む人々。
唐突に「ヒャッホー」奇声を上げる人々。
「何?」お互いに怪訝そうに見る。
「何が?」反発する。
言いかけて、やめる。佇む。
「ヒャッホー」奇声を上げる。お互いをみる。
「何だよ。?」お互いに見下す。
「ヒャッホー」奇声を上げ乍ら、陽気に踊りだす。使用曲 Best House Music Club Mix 2012 - Club Music Mixes #7
http://www.youtube.com/watch?v=Gll3ITmwpAE
奇声を上げ乍ら、極めて陽気に踊るのだが、唐突にぼんやりと佇む。しかし、また奇声を発して踊り始める。繰り返す。
辺りが突然暗くなる。暗闇が迫るように暗くなる。驚愕と恐怖。天井がぐにゃりと歪む。ドロドロの液体が天井から溢れて、身体にまとわりつく。 「ヒャッホー」と連呼しながら、暗闇に閉じ込められる。
「フロアで踊っていたら、突然に何も見えなくなり、何も聴こえなくなった。あれ?どうしたんだろうと想っていた。酒に酔ったかな、とこのへんで ちょっと想い乍ら、踊っていた。え、踊っていたよ。酒に酔っていたけどね、踊っていたよ。何だよ、踊っているんだ。邪魔しないでよ。僕をいじめな いで。」
逃げまどい、舞台の隅に小さくなって怯える。じっとしている。
「僕には家族と呼べる人が誰もいない。小さな頃からずっと僕は閉じ込められて暮らした。え?どこに?だれに?真っ暗な穴に落ちていく。僕は毎晩そ んな夢をみていた。ずっと毎日落ちる夢。落ちても落ちても落ちても朝がきて、目が覚める。お願いだから、僕を虐めないで。」
お互いを見る。
「何だよ?」強い恐怖。そして、反発。
「ヒャッホー」連呼する。
「僕は閉じ込められている。暗闇をじっと見つめていたら、そこは真っ白な世界になった。」
立ち上がり、ゆらゆらと揺れ乍ら歩き始める。誰かの気配を感じると著しく怯えて小さくなる。また立ち上がり、ゆらゆらと揺れ乍ら歩き始める。
「あなたは誰なの?おかあさん。」お互いをみる。怯えて小さくなる。
「ヒャッホー」
「何だよ?」強い反発。
身体表現。「閉じ込められて壊れていく」使用曲 友川かずき「生きてるって言ってみろ」
http://www.youtube.com/watch?v=6njISdzp7J8
言葉。「普通」「普通」「ルール」「束縛」「約束」「お利口さん」「普通」「異常」「異常」「ヒャッホー」
「僕の世界、僕が信じてきた世界。僕をがんじがらめにした世界。僕はそこから逃げ出して、逃げ出して、走るんだ。」
暗転。
人々が床に這う芋虫を見つめている。芋虫がぷるぷると膨らんで破裂する。
無数の蝶々が飛ぶ。じっとみている。閉じ込められた透明の箱の中。蝶々が身体にまとわりつく。
極めて狭い空間。極めて狭い。逃げる。
「ヒャッホー」恐怖と孤独。
「僕をバラバラにするのか
ああ言ったりこう言ったり皆が違う」
目が合う。
「何だよ?」
強い反発。「おまえ、何を言った?僕に何を言った?」
「ヒャッホー」
激しく暴れる。透明な箱の中。
身体表現。「ここはどこだろう」使用曲 Boz Scaggs We're All Alone
http://www.youtube.com/watch?v=v7sXjF16DD8
言葉。「僕をバラバラにするのか、ああ言ったりこう言ったり」「虐めないで」「閉じ込めないで」「ここはどこだろう」
「僕はなんだろう」「僕」「僕」「バラバラ」「ヒャッホー」
激しく暴れる。
ただし、そこには閉じ込められた箱はなくなっている。
殺意。
お互いに殺し合う。
「僕の心はいつしかなくなっていた。フロアで踊り乍ら、何も見えなくなって、何も聴こえなくなる。僕を虐めないで。」
死ぬ。
静寂。
「あの日、目が覚めたら、僕はここにいた。白い壁にいくつものしみがある、ここ。天井からどろどろの液体が溢れてきて、床に芋虫が這い回ってい る、ここ。僕はどこにいるのだろう。教えてよ、僕は夢から出られなくなった。真っ白の暗闇が僕を閉じ込めてしまった。」
お互いに見る。「何だよ?」
立ち上がり、つかみかかろうとして、やめる。黙って見つめ合う。
「ナンマイダー」
暗転。
「ナンマイダー」いつまでも続くように笑う声。奇声。
客電。

休憩を入れて、今後の課題を話して、後半は奇妙な部屋をじっくり。リアリズムからシュールなシーンを創るために、登場人物に工夫してみた。どうしても笑いに向いてしまう。ならば、それをもっと活かせないかしら?の提示をしてみたので、またの機会が愉しみである。15分程度シーンが発展したことは収穫だったね。
以上。