2013/09/23

日中はピンターの作品割稽古。11作品を創っているので、1作品毎の稽古を濃いものにしていく。今回の衣装もあたしなので、これは衣装は稽古の中で演出と決めていかないと時間が足りないなと昨日の稽古休みで思い立ち、少しずつ品出ししておいた衣装を今日は2番決めた。今週は一つずつ決めつつ、小道具も創り始めた。あっと言う間に稽古時間終わり。このあたしが煙草を喫う時間も取れなかったというあっという間。続いて開かれた稽古場、少し時間があったので、ラウンジで頭を切り替えて、煙草も喫った。今回はもうすぐ本番の稽古中の桶が時間を創って参加してきた。桶ひとりの参加だったので、みっちり作品に取り組む。今回は狂う芝居。召集令状が届いた時、それに逆らう男。逆らった男は政府の人間たちに拉致されて、大きな冷蔵庫に閉じ込められる。極限と暴力と権力により発狂していく男。ずっと参加している松本の台詞が最近よくなってきたので、長い台詞を書いた。ところが、珍しく松本不参加。桶が長い台詞に果敢に挑んだ。途中止めて返したが、2回目で随分の進歩。想像力で見て行けば、言葉は活きる。身体表現も今回は音との共存を改めて求めてみた。音と言葉と曲の歌詞とメロディが共存できること、これも身体表現である。BGMではないのだ。最後の暗転中の台詞、言葉の聴こえる位置、捌け、を課題として渡す。休憩後、丁寧にアドバイス。今回そうか、と聞いていた桶がそれらを活かしていく日が愉しみだ。そうそう易くはないことだけど。
けれど、拘って修正を続けると良くなっていくので、このような稽古も有益だね。参加者が一人というチャンスはあるようで、これまでにも数回しかないので、稽古の合間をみて参加した桶にはラッキーだったね。
細かい駄目出しやお願いは桶に話したので、割愛する。作品、使用曲公開する。
★ 動画は、冒頭「狂った男」シーン。「同期の桜」を唄ってほしかったが、歌を知らなかった。ま、ご愛嬌か。
★ 別に台詞部分を上げる。
シーンは、「首つり」久しぶりの課題。死んでいる人の設定を指定して3本。反応の稽古、心を動かすための課題。1本目は良かったが、気持ちが切れたので、手。あのままいつまでもシーンが続くようになりたいよね。
以上。

「あれからの風景、あれからの残酷、桜が散るので、血が飛び散るのか」
作・演出・選曲 森島、音 DubMasterX、出演 桶谷健司 撮影 花
客電落ちる。
明かりが入る。狂人なり。「桜が咲いている。ピンクの、深紅の、真っ赤な桜。」
「真っ赤な桜が見えたのは、この身体をナイフで切り裂いたから。」
笑う。笑い声に追い込まれていく。笑い転げる。弾かれて立ち上がる。
「鉛のようだ。身体が重い。僕の失敗、僕の後悔、僕の傷跡、僕の、真っ赤な桜の木、ほら、あの桜の木。桜の枝に真っ赤なトマト、トマトは丸い、丸 いは人間。まんまる人間のぶら下がり。ほら、ほら。あの人たちを助けなければ。戦闘開始だ、ほら、ほら、ほら」
くねくねと身体を蠢かせて唄う。
「貴様とオレとは同期の桜、 同じ兵学校の庭に咲く 咲いた花なら散るのは覚悟 見事散り ましょ国のため」
ケタケタと笑う。「迫る、ショッカー、地獄の軍団」ケタケタと笑う。
「おうおうお。真っ赤な桜だ、おうおうおう。あの人間達を救い出さなければならないのよ。いやん、バカん。おい、おい、おい、戦争よ平和、平和の ための戦争。うそつき、きつつき、狐憑き。おうおうおう。僕は戦争には反対なのです。国を挙げての乱痴気騒ぎの戦争の僕は、戦争に反対なのだ。」 ケタケタ笑う。叫び声を上げる。
身体表現。「僕の世界のあやとり世界」使用曲AC/DChttp://www.youtube.com/watch?v=NaRdKJIrN4E 1,22〜
言葉。「ネジの外れた僕の宇宙」「僕自身の解体」「僕自身の建設」「あれから」「それから」「ここはどこ」「僕のハードディスク」「僕の宇宙は透 明」「真っ赤な桜」「散りゆく僕の桜の木」「粉々」「バラバラ」「僕の宇宙」「宇宙規模の破滅」
次第に狂っていた心から魂が抜ける。ぼんやりと佇み、覚醒する。それはあの日に戻るが如くでありたい。
ゆっくりと後ろ姿になる。足踏みする。
「また」手を振る。
「またなと大学の頃からの友達と別れた。くだらない飲み会に参加して、それでもそのくだらなさがとても愉快だったな、と思い乍ら、僕は地下鉄の階 段を降りていた。いつもの癖でスマホをいじりながら。あいつはいつまで芝居なんてやってるんだろうとあいつの、あの頃から変わらない幼稚な笑顔を 少し、羨ましいと酔った頭が思った。今の僕には妻と、たまに逢うお気軽な女友達と、ときどきパパを怪訝にみる、ような気がするだけかもしれない、 娘と、僕をまだまだ凄いひとと思い込んでくれてるであろう小学生の息子がいて、
ああ、そう言えば、先月バレた浮気。妻は黙ってしまったけれど、あれ、もういいのか?いいよな、バレてしまったんだから。メールが6通。たまの休 みくらい、仕事の話はやめてくれよ。開封するのは後にしよう。開封されない6通の手紙か。ホームはいつもよりは浮かれていて、そこここにざわめく ような人々の群れ。いや、孤独な人々の群れなのかもしれないな。あれ?あの男が小さく悲鳴をあげた。あれ?あの男も、あの男も、あの男も悲鳴を上 げた。電車のドアが開いたので、僕は乗り込んだ。あ、プリン。パステルのプリンを買ってくるね、と出がけに言った。僕は言った。忘れた。すっかり 忘れてしまったな。ああ、またか、と娘は僕を諦めた顔で見るだろうな。しょうがないさ、パパはうっかり忘れたんだからな。座っている男が、悲鳴を 上げた。つり革に寄りかかるようにしている男が叫んだ。電車の中のそれぞれが動き出した。真っ暗な地下鉄の窓に頭を打ち付けて、女たちは狂って行 く景色を怯えた顔を寄せ合ってみている。いつもの風景が音もなく歪んだ。ゲンダイ社会の縮図ってやつか、と僕はポケットからスマホを取り出し、男 の個室、誰にも知られたくない僕の異常な性癖のサイトを眺めて、ニヤニヤした。いや、極めてニヤニヤは表に出さず、心の底からニヤニヤした。男の 悲鳴。男の悲鳴。男の悲鳴。え?車内はどこかおかしな悲鳴と無表情の残酷。鳥肌が立った。ニヤニヤしながら、鳥肌がたって、身体中が痒くなって来 た。」
電車を降りて、階段を昇る。街頭。
あちこちで神妙な顔をした男達。スマホを道路に投げつける男達。スマホをじっと見つめる男達。
泣き崩れる男達。
メールを開く。
「明日、明日」
「お、しばらくだな」
表情が固まる。叫ぶ。悲鳴。「召集命令!」悲鳴の連打。小さく、小さく、悲鳴のリズム。
身体表現。「戦争反対でございます」使用曲 椎名林檎「幸福論」http://www.youtube.com/watch?v=M55uRP4DWW0
言葉。「メール」「六通目の3通目」「戦争にいけと」「言葉の暴力」「国家の強制」「風景の終焉」「戦争」「全面戦争」
「拒否」「なぜならば」「なぜならば」
足踏みする。ドアを開ける。
「ただいま。パステルのプリン、忘れたあ」笑顔。
暗転。
明かりカットイン。
身体中を縛られる。抵抗。
引きずられる。
暗転。
明かりカットイン。
大きな冷蔵庫の放り込まれる。身体を縛られたロープを覆面をした男達が切っていく。
開放された身体。
そこは冷蔵庫。大きな冷蔵庫。冷たい部屋。閉じ込められた男達。
「僕は戦争にいかなかった。」「僕は幸福論を持っていた」「僕は当たり前の日常を選びたかった」「僕は」「僕は」「僕は」
冷たい世界。狂っていく男達。
「真っ赤な桜が散って行く」
「あれからの僕のみるたったひとつの繰り返される風景の中には真っ赤な桜。ぶら下がっているのは、人間だ。血まみれの人間なのだ」
長い、長い悲鳴。
暗転。
「真っ赤な桜」「貴様とオレとは同期の桜」へらへらと笑う。悲鳴。
「真っ赤な桜」「人間の存在理由」
客電。