2013/09/30

開かれた稽古場から帰宅。メールを確認したら、プログラム1稿が届いていたので、まずは校正作業。さて、今回の稽古場は参加するかなと想っていた役者が二人とも来なくてちょっとガッカリした。でも、初参加の女優さんと思いがけず濃い作品創りができた。彼女は現在他の座組さんの稽古中の日常訓練としての参加なので、詳しいことは割愛する。がむしゃらに、はじめてのここで、がむしゃらに作品創りをした。やる気に好感だった。今回の作品は感情を引き出すことはそんなに難しい感情ではなかったが、それを芝居にしているので、そこにカットアップがあったり、身体表現があったり、想像力が必要だったりする。
涙を流し乍らの作品創りとなってしまったので、気持ちを切り替えて「見せる」というポイントを今後の課題として渡した。泣けて当然、と言えばキツイが、きっと我々役者はその先に表現と名付けることが産んでいけてなんぼだと想う。
と言うものの、ここまで全編泣き乍ら演じた役者も久しぶりだった。今回の作品はそれでも成立していくテーマだったが。
その先、その先だね。たまにはまたどうぞ。きっと少しずつ掴んでいけるはず。
後半は「愛」のシーン創り。状況を変えて、暗転切りで3シーンを繋げてみた。
劇的にするために、ラストシーンにお願いをして、以上。
何かを感じて、今の芝居に活かせますように。
作品と使用曲のみ公開する。動画を愉しみにしてくださっている方もいてくれて支えられているが、今回は守秘義務。(なーんてね)動画はやめます。

『奪うなかれ、我が心、いのちふたつと空仰ぎて』
作・演出・選曲 森島、音 DubMasterX 出演 R 撮影 花

客電ゆっくり消えていく中
こんにちは、おお、元気か?、またな、またね、ごきげんよう、今度な、また電 話するね、いらっしゃいませ。
雑踏を歩く姿の俳優達。
暗転。「日常の、僕たち(あたしたち)の日常の、よくある風景」「日常の含み 笑い」「日常の諍い」「日常の、」 息を呑む。無音。静寂。
明かり、突然入る。
怯えた表情を浮かべる俳優達。
日常が閉ざされていくが如くの感情描写。
佇む。
足踏みする。
佇む。
走る態。
佇む。
「僕の(あたしの)目の前で、恋人が」大男達が恋人をいたぶるように痛めつけ ている。 「やめろ(やめて)と叫ぶ声が、喉の奥で停止する。助けてあげようと想う身体 が、行き先を失うように痙攣する。頭の片隅で関わりたくないとつぶや く声が 聞こえて、情けなくなった。声が出ない、身体が動かない。僕は(あたしは)ど うしたらいいのだ。(どうしたらいいの)。 懇願する、哀願する、怒鳴る、たちすくむ。この己の小ささと脆弱な心を持て余 すような」
身体表現。「ぼくはきみをあいしていたはず、わたしはあなたをあいしていたはず」 使用曲
武満徹「管弦のためのレクイエム」
http://www.youtube.com/watch?v=uHfa1uCAmAA
言葉。「こなごなに」「ぼろぼろに」「ぐちゃぐちゃに」「へろへろに」「ぼこ ぼこに」「よれよれに」「めちゃくちゃに」「ぐるぐるに」「めためた に」 「ずきずきと」「よろよろと」「ちくちくと」「じゅくじゅくと」「ひりひりと」
呆然と恋人を見ている。
恋人は僕を見る。(あたしを)
大男たちがその視界を遮る。
「この残酷を、隠してほしいと心が揺れた。」
鈍い音が恋人を覆う。目を反らす。
狂ったように向かって行く。
弾き飛ばされる。
恐怖。強い恐怖。
立ち上がり、感情描写。
「今、目の前で見えている地獄。何故だ。世の中がどんでんどんでんとひっくり 返され、地獄の釜で血を吐く僕の、血を吐く君の(あなたの)これはな んだ (なに)、助けなければ、助けなければ、助けなければ、助けなければ、助けな ければ」
狂った僕。(あたし)
立ちすくむ。
引きずられる恋人。
狂ったように追い縋る。
恋人の足を掴む。靴が飛ぶ。
犬のように靴を拾う。
我に返る。
叫びとか悲鳴とか号泣とか。
大男が振り返る。にやりと笑った。
「返してほしい、僕の恋人」悄然とつぶやく。
歩く。ひたすら歩く態。
街頭。 倒れている熊。大きな熊。
「え?」
「街を歩いていた。心を無くして、彷徨っていた。雑踏の中に大きな熊が転がっ ていた。人々は無関心にすり抜けていく。 僕(あたし)の恋人、僕(あたし)の熊。僕(あたしは)は熊をみた」
「え?」
可笑しくなって、笑う。 佇む。足踏みする。
ポケットから取り出す、バナナ。
「僕の(あたしの)武器。このバナナ」
熊を無視して歩く人々に向けて、バナナを発射する。
「撃って、撃って、撃ってしまうの。あたしの(僕の)恋人に何をする!」
「え?」 「
美味しそうなバナナ。」 ガツガツとバナナを食べる。可笑しくなって笑う。
「僕の(あたしの)恋人」 ひたひたと歩く。
心の身体表現。使用曲 ジャニスジョップリMOVEOVER
http://www.youtube.com/watch?v=fIaKHV88ui8
言葉。目の裏側に、記憶の裏側に、へばりついた残酷な映像。声、声、声。体、 体、体。 心、心、心。狂い狂い狂い。
転がる恋人。
駆け寄る。 「おーい」 「おーい」
恋人が目を開ける。
眼球がない。
抱きしめる。
腕がぐにゃりと曲がる。
キスをする。
舌を入れる。
歯がない。
抱きしめる。
「僕の(あたしの)恋人」
無表情になり。立ち上がり、歩き出す。
振り返る。
「いのちふたつと僕の(あたしの)愛」
「バイバイ」
歩き出す。 ゆっくりと明かり落ちて行く。
「どこに住んでるの」「彼氏(彼女)いるの」「僕と(あたしと)」 「またね」
暗転。 「真っ暗な僕の心の闇」 「暗黒のあたしの残酷」
客電。