開かれた稽古場第二百八十回

2013/10/21

本日は通常通りの開かれた稽古場。日常訓練の繰り返しを再考してみた。以前書いた作品を２本選ぶ。参加者がわかった時点で参加者が挑戦していない２本。想像すること、感じること、恐怖、驚愕からの感情の変化を必要とする２作品を選んだ。「Touch me」「KEHAI」参加は２名、見学２名。今回は稽古場に演劇経験者がスタッフとして加わったとのことで、ピンターをご観劇くださった杉本社長さんから紹介された永瀬くんが早速見学してくれた。
果たして、最初、ふたりともどうしちゃったの？くらいの不出来で、何度も何度も檄を飛ばしてしまった。繰り返すことでやっと心が動きだし、言葉も身体も動き始めた。４５分程度の作品２本だったが、１本目は１時間になってしまった。そこにそう書かれているから、やるだけなら、やらない方がいいってことで、別に台本第一主義ではないので。桶もマイケルも蠢き出してからはよかった。心の歪を身体の歪に繋げた作品なので、その歪に痛みを感じてこそ、動き出す。言葉の強さは心の動きの強さで産まれるはず。休憩を入れて、２作品目。こちらは具体的に等身大の人形をみていく想像力、視覚、聴覚を奪われていく実感、死の世界。まだまだ触覚や想像力が弱かったな。以前は玉井と松本が良い仕上がりを見せてくれた躍動感もある作品だったので、その域には及ばなかった。とにかく、想像力による実感、これができるようになってほしい。～のふりは要らない。虚実ないまぜの錯覚を創っていけなければならない。どうせ、芝居が嘘ならば、素敵な嘘で塗り潰せ。ってことね。
最後に相関図。２連発。１発目はぜんぜん駄目だったマイケルに駄目を出して、お願いをしたら、豹変。それがいい表情で、ところが可笑しくて可笑しくて、笑いが止まらず。それもまた違うような。笑。いい稽古だった。
それから、音との共存、これが身体で表現していくことが先行してしまった感。これもね、まだまだ課題だ。
作品と使用曲公開する。★動画は「Touch me」より身体表現「狂い咲く」
作・演出　森島、音　DubMasterX、出演　マイケルリュー。桶谷健司　撮影　花

「Touch me」芝居屋・劇団羊のしっぽ

客電消える。
「弥生三月桜が咲いた」暗闇を破るように。
明かりIN 身体表現。狂い咲く。使用曲Divas
http://www.youtube.com/watch?v=L7IbnwDFx-w
沈黙。呼吸。やがてそれは追い詰められるような激しい息づかいになっていく。
沈黙。
「僕は（わたしは）誰かを愛したことがない。いつでも愛したふりをして、なりゆきの中で抱いて（抱かれて）ごまかしの愛を探っている。日々は過ぎる。ごまかしの愛に紛れて、日々は過ぎる。僕は（わたしは）これでいいと思っている。どれが本物でどれが偽物かなんて、どこの誰が見抜けるのかとせせら笑って、日々が過ぎる。陽気などんちゃん騒ぎ、ウソを隠す歪んだ笑顔は僕の（わたしの）勲章。僕が（わたしが）こうやって笑うと、ほら、誰かがまた勘違いをしてくれる。」笑顔。自己陶酔。笑顔の曖昧。ヘラヘラと笑い続けて欲しい。
使用曲　ベートーベン　シンフォニーNo9 http://www.youtube.com/watch?v=t3217H8JppI
お互いに気づく。へらへらと笑うお互いをみる。さらにへらへらと笑う。へらへらと笑いながら、見つめ合う。
「あなたのこころは」
「桜」
「桜の樹の下には」
「こころ」
身体のそこかしこが溶けていく。しかし、へらへらとわらっていてほしい。
「いびつな」「いびつな」「いびつな」「いびつな」
「ウソ」
お互いの身体が溶け、血が流れている。
「さくら」
「満開のさくらが散る」音　OUT
ゆっくりと近づく。何かに遮られるように、立ち止まる。たとえばそれは見えない壁の如し。「ねえ」答えない。押し黙る。
「ねえ」答えない。押し黙る。
「ねえ」答えない。押し黙る。
「どうしたの？」お互いにはっとする。それぞれの全身は血まみれ。
「さくら」
「痛くない？」お互いにはっとする。押し黙る。
「さくら」「ねえ」見つめ合う。
唐突に使用曲　ラブストーリーは突然に（カラオケ）　http://www.youtube.com/watch?v=9Tkkr8wrmDs
全身の痛みを感じる。のたうつ。笑う。おどける。自嘲。
唐突に音　OUT
見つめ合う。
お互いを慰めあうような抱擁。
はじかれたように離れる。
沈黙。
「さくら」
ゆっくりと極めてゆっくりと歩き出す。全身血まみれで身体の自由はきかない。
無音。苦痛に歪む身体と表情。ときおりつぶやく。「さくら」「さくら」「さくら」
異形の舞。使用曲　I NEVER CRY - ALICE COOPER
yhttp://www.youtube.com/watch?v=o26rL5GC9Co
佇む。
振り返る。見つめ合う。じっと見つめ合う。見つめ合いながら、ドロドロと溶けていく身体。夥しい血。
くずおれた周りには夥しい桜の花びら。
「さくら」
暗転。
明転。
いざり歩きながら、お互いに近づいていく。極めてゆっくりと。
暗転。
客電。

「KEHAI」　　　　　　　　　　　　芝居屋・劇団羊のしっぽ

客電消える。
暗転の中をゆっくり動く。たとえばそれは暗黒の世界の住人の如く。
ひたひたと誰かが近づいてくるような恐怖。
息を呑む。
追われる。
暗闇の中で走る。（ただし、位置は変えないこと）
明かり。
振り返る。そこには血塗られた等身大の人形。
息を詰め、人形に近づいていく。
人形の口が動く。
人形の手が動く。
人形から夥しい血が吹き出る。
驚愕する。
血塗られた人形がまとわりつく。振り払う。
逃げる。
しかし、人形の手足が身体に巻き付いてきて離れない。
恐怖。放心。
次第に耳がきこえなくなり、目が見えなくなってしまう。
食い込む人形の手。
http://www.youtube.com/watch?v=hMXaE9NtQgg 使用曲　Brian Eno - An Ending
振りほどこうとする。
夥しい血が降り掛かる。
それは、いつしか血の雨となっているのだ。全身が血塗られている。
拭う。
突然悲鳴がきこえる。視界が戻る。
血の雨の中。身体表現。狂う。http://www.youtube.com/watch?v=rONasb9H24Y
使用曲　Brian Eno & David Byrne My Life in the Bush of Ghosts

気づくとストベリージャム。笑い転げる。
舐める、舐める。舐める。
天からもストロベリージャム。舐める、舐める。
身体中のストロベリージャムを舐め合う。
至福の呼吸。
やがてそれはエロティックなそれに変わっていく。
男と女は決して触れあうことはないまま、身もだえする。
エクスタシー。
と血を吐く。夥しい吐血。
身体の痛み。身体中が痛くなる。苦痛。苦悶。恐怖。
気づくと壁沿いに兵士たちが立っている。しかし、兵士たちには目がない。
途方もなく哀しくなる。http://www.youtube.com/watch?v=o3mMaa4u5OU
使用曲　ジェームスディーン「エデンの東」
泣く。途方もなく泣く。
泣きながらスタイリッシュに練り歩く。
兵士たちが共に歩き出す。
無表情な行進となり、立ち止まる。
突然、視界が途絶える。
呼吸をする。呼吸を貪るように呼吸をする。
やがて、呼吸をしていない事に気づく。否、呼吸をしていない。
身体表現　「死の国だ」 http://www.youtube.com/watch?v=9V4AYiHlAf0
使用曲　Brian Eno - Ambient 4: On Land グルグルと回る。
ぬるぬるとぬめる。
脱力
瞬間明かり、赤くなる。
暗転。
客電