2013/11/4
目が覚めても、やっぱり我らが巨人軍は負けていた。マイナスのエネルギーをプラスに変えてくれるのは、芝居しかないわけで、お昼前には復活して、来年のピンターのことを先生とやりとりして、エンジンアイドリングして、開かれた稽古場のための台本、一気に選曲まで終える。開かれた稽古場から帰宅した。
今回は最近本番かかりで参加者が減っている時期なので、いざとなればあたしが演ろうと考え乍ら、男ひとり、女ひとりの芝居を書いた。
間は空くけれど、コンスタントにモチベーションを上げに参加してきている由起の参加があって、難なく桶と由起で創ることができた。今回は「自己否定からの母殺し」の本。まずは心身を開くために身体表現「修羅になる」から取り組む。生になりすぎない感情表現としての身体表現をテーマにしている。感情のピークを身体表現に変化させるもの。暗転でカットアウトしながら、3曲。ふたりとも影響しあい、よい開放ができたので、一息ついて、作品に取り組む。
まず、二人とも途切れること無く最後までいけた。特に由起は毎回表情がめまぐるしく動き出して、とてもいい女優だ。声の弱さが気になるが、声にも感情が伴い、嘘を感じない。桶は感情の振れ幅が非常に狭かったが、どんどん触れ幅が広がっている。何より、今回は言葉を発するだけ、の台詞を多く取り入れたためか、言葉が自然にクチをついてよかった。台詞ではなく、言葉、言葉を客席に投げ込みたいのだ。心身喪失していくなかで、アイディンティティを取り戻していく様がとてもよく出来た。いい芝居になった。最後の暗転中の電話、つまり最後の告白が、もう少し。ここには意思と覚悟が見えたかった。
本日も音操作もあたしだったので、最近は音操作も腕を上げて来たわ。音源はCDの方が扱い易いので、使用曲は表記と動画のみ。
作品と使用曲、動画を公開する。よく質問をされるのだが、台本にすると3ページほどの台本なのだが、上演時間は45分〜70分程度であり、今作は45分である。
★動画は台詞〜身体表現「何もかもが、くそくらえ。」部分。

『見去る、訊か去る、ミカエル狂人、哀しい一夜ものがたり。』
作・演出・選曲・音操作 森島、音製作 DubMasterX、出演 桶谷健司、田山由起 撮影 花

客電落ちる。
明かり入る。 佇む男、佇む女。
雑踏の中。
「あの日、朝ぼらけの中、こうして雑踏に立ってい た。行き交う人々は皆、忙しそうに、うつむいて歩いている。 空は低くて、僕を(あたしを)そこに立ち停まらせる。人々が顔を上げる。轟音」
佇む男、佇む女。
「少女がひとり。」
男、歩き出す。女、歩き出す。振り返る。少女がついてくる。男、女小走りにな る。立ち止まる。ゆっくり振り返る。
「記憶の残像」
激しい嘔吐。佇む。
雑踏に佇む少女。
「夢の中の出来事。そう、僕は(あたしは)あの日、あの家の 前に置かれていたゴミ袋を覗いた。何のために、何がしたくてそんなこ とをし たのか、僕の(あたしの)パラドックス。強い意志の元、覗いたのだから。古ぼ けた人形。引きづり出して、髪の毛を引き抜いた。モヤモヤとし ていた頭の中 が空洞になっていくのを感じた。吐き気がしたので、人形の腕を引きちぎった。 身体中に鳥肌がたった。あの日、僕は(あたしは)狂った のだ。」
佇む。歪んだ笑い。
身体表現。「何もかもが、くそくらえ。」 使用曲 Dubs
言葉。「これまで」「いつまで」「これから」「どこから」「どこまでも続くグ レーゾーン」「存在理由」「未確認生物」 「くそくらえ」「ドロンドロン」
佇む。
「燃えろ」
ドロドロといやな匂いと煙を上げて人形が燃えている。じっと眺めている。
「少女」
人形から巨大な火柱が立ち上がり、家を燃やす。轟音。爆発音。
快楽。「最高の快感」
燃え落ちる家を眺めている。
「身震いがする。産まれたことの無意味の前で、僕は(あたしは)物理的な証拠 を消していく。」 沸き上がる感情の渦。
佇む。
「やめて。(やめてくれ)、、、、見たくないものばかり、僕は(あたしは)見 なければならなかった。幼かったあの頃からずっと、 大人は僕を欺いて、情欲の世界で舌を出す。愛しているとつぶやきながら、僕 (あたしに)手かせをはめて、自由を奪う。壊れていく内部はアンドロイ ド。 社会を背負わされた人造宇宙だ。」
佇む。
「生姜焼き定食」
佇む。
「少女の丸焼き」
身体表現。「心が疼くので」 使用曲 TOMATOS「君にバウンス」
言葉。「人間」「人の形をした」「嘘の壺」「誰だっけ」「切断される心」「電流」 「轟音」 佇む。
呆然(ぼうぜん)
喪失する内面宇宙。
歩き出す。
「セルロイドの人形が燃えた。抜け落ちた髪の毛が燃えた。僕の(あたしの)記 憶が燃えた。僕の(あたしの)母が燃えた。 僕の(あたしの)思い出が燃えた。僕の(あたしの)心が、、、、」 佇む。
快楽。
「少女を殺した。僕は産まれたままの、へその緒の、糸に引かれてぐるぐる回 り、僕の記憶を断ち切るために。」
歩き出す。立ち止まる。 振り返る。
燃え落ちる家を見る。
「夕日だ。真っ赤に燃える夕焼けこやけ。」
苦痛に歪む。
号泣。
「何も変えることはできなかった。」
「狂ってしまうことさえも」
音。 佇む。
雑踏。人々が忙しそうにうつむいて歩いている。
「空がやけに低い。手を伸ばしても、僕は(あたしは)天使なんかじゃないんだ」
歩き出す。
暗転。
「もしもし、母を殺してしまいました」 音、いきなり途絶える。
客電。

後半はシーン創り。「ある日」殺人を犯した日、ある日の日常のシーン創り。決して殺人を告白することはない。やがて殺した人の亡霊が見える。果たしてそれは幻視なのかもしれない。
決して殺人を告げることはない。やがて、殺したはずの亡霊に殺されていく。
人が何かを必死に隠そうとするとき、そこには不条理なほどの可笑しさがみえる。恐ろしいシーンなのだが、笑ってしまう。そして、ぞっとする結末。
丁寧で演じすぎないシーンになった。
最後に相関図。どうしても落ち着いた話し合いの場になってしまう。激しく、切なく、愛しいシーンはいつ出来るのかな。愛は説明ではないってこと、愛、しかないね。
以上。