2013/11/25

風にたなびくような雨。傘もささずに、開かれた稽古場より帰宅。常連メンバーの公演もいよいよ今週、海外、地方とメンバーたちから近況報告の続いた日だった。公演の稽古とここの稽古を両立していければベターだけど、今の役者さんたちは欲がないというか、なんというか。まっ、いっか。また桶とのマンツーマン稽古となった。音も欠席だったけど、緊張感のある良い時間だった。今回は観念的な言葉、観念的な芝居を書いての挑戦となった。
丁寧に返し稽古もできたので、返して掴んだものがあればいい。どうしても、言葉に負けてしまう。殊に今作は観念的な台詞が多かったので、言葉を追っているだけの印象が強かった。下記に作品を公開するが、こういう言葉を如何に自分の言葉にしていけるか、ということかもしれない。演ってみてください。
一応ツアーに前乗りの音 Dubにも台本を送っておいたら、イメージが湧く台本だとメールが入っていた。あら、珍しき。案外彼も感覚派なので、ときどき嬉しい反応がある。難しいと言われる率が高いけど。笑。
身体表現部分も返す。マンツーマンや少人数はフィジカルな返しもできるので、いい。マスゲームの規則的な歩きも返し稽古できた。身体で掴むものはやはりこれが必要かもしれない。以後も心がけよう。
台本中にある「詩を朗唱する」桶が質問してきた。「朗誦ってなんですか?」「詩句などを声高に読むこと。」これを叶えるために最後のボードレールの詩も返した。劇的な表現、劇的とは何ぞや、探っていきたい。
後半はリズム感を鍛える課題「挑む」人物を捉えて、挑む。7人、10人と演る。リズムを変えていくことで緩急を掴む。次は言葉を排して演ってみよう。
続いて、ドア。これは師匠から受け継いだ即興の課題。3連発。あたしの縛りは日常をドアで開けることで覆すこと。発想は面白い。その先に劇的シーンへの展開が欲しい。
最後は相関図。無対象で、見えない相手の人物設定にこだわってみる。仕上がりはどうしても関係性を見せるところまでだった。それは正確だったが、そこにはドラマがない。愛の物語、いつできるのかなあ。笑
以上。
台本、使用曲(音源がIPhoneだったので、曲名のみ。)公開する。★動画は「僕の存在を全世界に発信してみる愉快な試み」部分。

『夢想の果てしなき標に眠れ。』
作、演出、選曲、音操作 森島、出演 桶谷健司、撮影 花

客電落ちる。
暗転。「もういやだ」連呼する。
明かりが入るとまとわりつく観念を拭う人々。
「くだらない観念」「くだらない押しつけ」「くだらない年月」
パタパタと足踏みをする。眼光鋭く空を睨む。「我を押しつぶす、観念という奴」
高笑い。
パタパタと足踏みをする。停まる。
「火事だ」燃える草原をみる。「辺り一面が燃え始める。絶望的な火の海の中で、僕は(あたしは)足掻くこともできないほどに消耗している。鳥肌が 立つ。こわいのだろうか、このまま世界が終わってしまうような、火事。火の海の中の僕自身(あたし自身)と僕の内的宇宙の葛藤に、寒気がする。昨 日の午後三時、寒気がして、ひどく頭痛がした。映画を見ていたけど、それがヒドく退屈で現実逃避の物語だったせいか、僕は(あたしは)頭痛がし た。火事だ。火事だ。燃え盛る一面の世界。」
高笑い。
身体表現。使用曲 Janis Ian Will You Dance?
「僕の存在を全世界に発信してみる愉快な試み」
言葉。「愉快に」「笑え」「不愉快に」「笑え」「ちっぽけな世界」「ビックなオレ様」「笑え」「己を笑い飛ばせ」「我ここに」
「笑え」「存在の虚無」「笑え」
歩き出す。マスゲームのように規則的に歩く人々。時折、つぶやく。「火事だ」
叫び。
「やめてくれ。」
規則的な動きを壊し始める人々。対面する。「燃えてしまえ」「燃やしてしまえ」「押し付けられるくだらない観念世界。」
「誰だ?」「我あり」
高笑い。
「悪戦苦闘の人生迷路に入りこんだ僕は(あたしは)嘘で日々を暮らしてみた。嘘、嘘、嘘の火事。嘘の劇的を僕は(あたしは)好んだ。
赤いワインの苦みが僕を(あたしを)酔わせてくれると思い込みをねじ込んで、飲み干す。苦い。苦い。嘘の、嘘の血の色のワインの火事だ。
僕のくだらない真実は、何もない。電気代の支払い、衝動買いしたクレジットカードの引き落とし、冷蔵庫に残っている卵の数、観念とは対局のくだら ない、僕の空っぽの頭の中の真実。火事だ。嘘の火の海。」
高笑い。衝撃の身体描写。静かに横たわる。唐突に叫ぶ。
「うそだ。やめてくれ。僕はこのまま、くだらない日々で暮らしていたい。」
辺り一面の火の海。眠りから覚めて、驚愕、放心。灼熱の痛み。
身体表現。使用曲 Dub Master X Tokyo Duv Story 96
「生きてみることは活きていくこと」
言葉。「世の中をじっとみる」「世の中に問題提起する」「世の中にもの申す」「世の中にプラカード」「世の中をぶち壊すものども」
「世の中に挑む」
暗転。
明かり。
横たわる人々。目を開く。
「小さな雑音が僕を(あたしを)揺り起こしてくれた。全身が痛い。ヒリヒリとした痛み。目を閉じる前にみたものは、真っ暗な世界だった。観念のな い、生命の遮断される闇の世界だった。意識が遠のく中で僕は(あたしは)後悔し、泣き叫んだ。目が覚めた。身体中の痛みは
地獄極楽白い壁。ああ、助かった。」
「僕は(あたしは)観念の押しつけを断ち切りたかった。僕の(あたしの)とてつもない妄想が僕の(あたしの)現実世界に火を放ったのだ。身体の痛 みに比例して、声が出た。僕の心の奥の奥から叫んだ。人間の真実がむき出しになって、
僕はゆでたまご。ゆでたまご。
つるんとむけたゆでたまご。」
「生きている」
「やめてくれよ、観念の押しつけ。」
安堵の笑い。
暗転。
明かり。佇む人々。
朗誦される一編の詩。

蝸牛(かたつむり)だらけの泥土の中、
俺は自分で深い穴を掘ろう、
そしてその穴の中に自分自身の古びた骨を悠々横たえ
海に沈む鮫(さめ)のように忘却の中で眠ろう。

遺言書は憎たらしい、墓だって憎たらしい。
世間の涙を求めるくらいなら、
生きたまま、鴉(からす)でも呼び寄せ、
私の汚れた肉体を余すところなく啜(つづ)らせたい。

蛆虫(うじむし)よ、耳もなく眼もない暗黒の伴侶よ、
見ろ、自由で陽気な死者が君らの元へとやって来たのを。
放蕩の哲学者、腐敗の子よ、

崩れかけた私の屍の中を憚る(はばかる)ことなく散策し、
聞かせてくれ、この死者の中の死者、魂もない古びた体に、
まだ苦労などというものが残っているかを。

暗転。
客電。