2013/12/2

開かれた稽古場、稽古場に入ったら空気が動いていなくて、「あれ?空気が」とクチをつく。公演終えた松本が少しの遅れで参加の連絡があったので、到着まで桶と二人で「歩く」を演る。1本目、うまくいかず止める。2本目、音がいきなり止まって、終わる。3本目、松本到着までで伝達の空気が動き始める。松本曰く「ダンスバトルかと思いましたわ」揃ったところで作品に入る。台本の説明をさて、はじめようとしたら、鼻水が湯水のように止まらなくなる。どうした?あたし。今も鼻水が止まらない。帰りに永福町でらうめん食べていたら、窓の外に高取先生。月蝕歌劇団には松本も出ていたので、松本と走って飛び出て高取先生にご挨拶する。
さて、久しぶりに松本復活の1作品目は、「狂人」の芝居。心のネジを外していく。作品に原色のものたちを組み込んで、それを妄想、幻視世界としてみる。絵を描く娘が帰路、「あんな原色を混ぜたら、灰色だよ」と言う。そうそう、それ、あたし、わかって書いているので。灰色の世界なのだよ。とちょっとエヘンとなる。松本は素晴らしい出来だった。言葉からの刺激の汲み取りが実に巧かった。狂った態を演じようとするのではなく、自然に言葉を発する、これがあたしの望んできたこと。ああ、これを言わずもがな出来るようになったのだと嬉しかった。逆にその点がなかなか出来ないのね。桶には何度か止めてしまったし、終わってからも諄く話す。しつこく言うけれど、狂いを演じる必要なないのだ。役者の中身がトランスしていく。訓練すれば、かならずできる。松本はそれができるようになった。「カッコーの巣の上で」に如何でしょ?山田ジャパン松本渉。いいと想う。桶はめげず、出来るようになってほしい。作品、使用曲を公開する。
作品後は「挑む」リズム感の訓練。軽く課題出しして、終わり。今回は作品も1時間あったので、あっという間。「修羅になる」は次回に。以上。
★ 動画は身体表現「原色宇宙にドキドキしたら」部分。
★ 別に「歩く」を少し。

『脳下垂体がささやく。僕とダンスを踊りませんか?』
作・演出・選曲 森島、音、音製作 Dub、出演 松本渉、桶谷健司

客電消える。
明かり入る。 胎児のように転がっている人々。
「ドキドキする」
「ドキドキして、身体が熱く なる」
「産まれる前の、この原色だらけの宇宙」
「目覚める前の、この臓器の鼓動にドキドキしている」
ゆっくりと極めてゆっくりと立ち上がる。
「原色の原風景に僕は放り出された。 子どもの頃、僕は母の後ろ姿をみた。僕の前の母はいつも後ろ姿だった のだ。 母の回りは赤、赤い色。赤い毛糸のあやとりを僕は母と繰り返した。東京タワー ができなくて、僕は泣いたんだ。母はいつでも後ろ姿だ。あやと りを繰り返す 母の手だけが僕の記憶の裏側に揺れる。赤、赤、赤。母の血の色、母の情熱、母 の情欲。僕の東京タワーの崩壊する色、赤。母を思い出 す。後ろ姿の母の背中 に頬擦りしたい。母の背中、赤い母。」
ニヤニヤと歩き乍ら、身体中を抱きしめる。
「シアン、暗い青。僕の血管を流れるシアンの青だ。僕の風景は暗い青の世界だ。」
「あ、白蛇(しろへび)が這い回る。気持ち悪い。へび。蛇の夢をみる。否、夢 から醒めても、僕は見る。白蛇の大群が這い回る宇宙に僕は シアンの寒気がするのだ。」
身体表現。「原色宇宙にドキドキしたら」使用曲 TalkinngHeads『roadto NowHere
http://www.youtube.com/ /watch?v=cPQcnjlwtE4
言葉。「赤」「シアン」「黄色」「マゼンタ」「緑」「チアノーゼ」「僕の宇 宙」「歯車が合わないのだから」「灼熱のあれ」 「チグハグ宇宙」「赤」「イエロー」「黄色人種の馬鹿野郎」 悄然と佇む。 キョロキョロとあたりを見回す。
赤い壁、シアンの天井、黄色いへび。
「僕は今、閉じ込められている。ここはどこで、僕は誰だ。ここは僕の青春の終 焉の墓場だとしよう。僕のドキドキは僕を彷徨い歩かせて、僕の手足は 僕のい きたいところで悪さをするのだ。僕の願望、僕のドキドキ、僕の原色宇宙の彷徨 いの果ての、鳴呼。僕は白い羊を追う。白い羊が僕を見るんだ。 イエス様は僕 に白い羊に赤いペンキをまき散らすことを要求する。汝、神を信じてなるものか とイエス様は言う。僕は僕の腕を擦る。僕の腕がすり切れ て痛い。僕の腕を擦 り続けていたら、頭が酸素不足を引き起こして、僕はいい気持ち。ふわふわとし て、いい気分だよ。赤いペンキの缶を携えて、僕は 白い羊を追いかける。追い かける。走れ〜。」 ヘラヘラと笑う。キョロキョロとあたりを見回す。
「ドキドキする」
目が合う。あざ笑う。
「ドキドキする」
「母の背中に赤いペンキをぶちまける。テレビを消せと母はうるさい。どこへい くのと母がまとわりつく。母を赤いペンキまみれにしてやりたい。母の 白い 指、ささくれた白い指。赤い東京タワーの母の指。あやとり糸の母の指に赤いペ ンキをぶちまける。僕はドキドキする。シアンの、チアノーゼの僕 の指、僕の くちびる、僕のドキドキする身体は赤。母の背中に頬擦りしたい。」
歩き出す。ファッションショーの如く。観客席に視線を投げる。ポージング。
身体表現。「過大評価する僕とチアノーゼの唇の僕と」
使用曲 JoneCage「Dream」×南こうせつ「夢一夜」http://www.youtube.com//watch?v=0Fhc3Tbnhsc http://www.youtube.com/watch?v=oPTQyVGjBoQ
言葉。「赤いあやとり」「黄色いへび」「シアンのくちびる」「赤い情欲」「黄色い胃 液」「青い空」「あか」「マゼンタ」「青」「暗い青」「きいろい花」 「赤い おんな」
笑い転げて、泣く。泣き乍ら、発狂する。
「我ここにあり。」
名前を呼ばれる。返事をする。
歩き出す。
原色の壁、原色の箱に閉じ込められる。
「ドキドキします。まだ僕の脳下垂体はドキドキします。」
「イエス様が白い羊を放す。一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹、赤い羊。赤 いペンキをぶちまけたのは僕。イエス様ではない、僕の仕業だ。ドキド キす る。女の背中に赤いペンキをぶちまけたので、僕はドキドキする。七匹、八匹、 喰う女。女を喰う。貪り喰う。母と繰り返したあやとり糸の東京タ ワー。白い 羊、白いヒツジノタイグン。イエス様、僕の脳下垂体がドキドキします。」
名前を呼ばれる。返事をする。
断頭台にまっすぐに歩いていく。
「首切り台」
「僕は頭を載せる。僕のドキドキする脳下垂体を載せる。首切り台に僕の頭はヒ ツジノ頭。数多の羊。赤い羊の僕の頭。」
首が弾け飛ぶ。※Dub音下さい。
悄然と佇み、転がった首を眺める。 笑う。
断末魔の叫びをあげる。
「転がる僕の脳下垂体。」
「え?なあに?」
「僕とダンスを踊りませんか?」
笑う。声が消えていく。
身体表現「脳下垂体ダンス」使用曲 EuroBeat 頭文字Dhttp://www.youtube.com/watch?v=wv0iUKb80C8
暗転。 音カットアウト。
明転。 放心する人々。頭はない。
「僕の原風景は原色宇宙」(記号のように発語してほしい。)
暗転。
客電。