2013/12/9
開かれた稽古場より帰宅した。今回も松本のクリーンヒットから、こちらも「加減」を考えるきっかけを貰って、帰路の車中でもあれこれと想いを巡らせているうちに、1月の芝居に想念が巡り、うむ、まだまだ詰めなくてはな、と想った。この師走、国家の動きにじっとキーボードの手を止めてきた。皆さんの記事を興味深く読みながら、さてとそれを演劇でどうぶちまけていけるのかと日々考えてもいた。たとえば、「危機感」を感じていない無関心な国民の多勢の脅威ということ。幼い子供に臭い物に蓋をするような教育をするような世の中にならぬよう。「危機感」を書いてみた。もしもの世界が虚構の芝居の世界だとしても、もしもが現実になったとしたら?仕組まれていく体制にアンチを唱えてみた。叫びながら書いた作品ではあったが、いざ創ってみると静かに感情が蠢いていった。本日は初参加のオペラの歌い手さんとレギュラー松本。松本は互いに課題を共有して、語り合えるようになっているので、作品創りの甲斐がある。初参加のS代さんはまず「心を動かすこと」「実感すること」「想像すること」を下地に何度か返した。少しでもそれが通じて、今後出来るように、そこを探れるようになればいい。まずは参加を続けることだね。休憩後にあれこれ課題出しやお願いを話していたら、受けが明るいので、好感。ダメなものはダメと受け入れてくれると話しやすい。今後に活かしてほしい。
後半は感情表現の身体描写、「修羅になる」2本。ピークの感情がもっと早くなればいいと1本目、2本目はあたしが早く音に合図を出してしまい、松本が戸惑う。その表現があたしには腑に落ちて、結果笑った。後半はS代さんがスタミナ切れで、身体が動かなくなってきた。やる気は感じるので、体力、体力。笑。この課題は反応しあう身体表現でもあるので、ふたりの共存が必要なのだ。
最後は相関図。あたしに松本が掛けてきたので、少し参加。感情のやりとり以前ではあったが、まずは慣れることという出来。しょうがないから、シーンをかき回してみただけ。なかなかこれが仕上がらないね。次回に持ち越し。汗。
作品、選曲公開する。
☆ 動画は台詞〜身体表現 「倒れてしまわないように強靱な意志をもて」部分まで。

「手足もがれてゴロンゴロン、世紀末故立ち上がれ。」
作・演出・選曲 森島、音操作 DubMasterX 出演 松本渉、O西S代
撮影 花
客電消える。 響き渡る不協和音。http://www.youtube.com/watch?v=EeUXrjg9YIw
明かり入る。
追われる人々。逃げまどう人々。手をもがれる。足をもがれる。痛 みと恐怖にのたうつ。
静寂。
立ち上がる人々。
機械仕掛けのように手足を強調して動き回る。それは非常にい びつな態でありたい。
「いびつな私。見えますか?私の部品。私の手、私の足、私の胴体、私の首す じ、私の頭、私の脳みそ。毎日に追い込まれて、何もかもがいやになっ て、誰 とも会えなくなって、誰の目も見られなくなって、誰かが私のクチを塞いだので す。」
天を見上げる。
「キラキラとした液体が私の身体にまとわりつきます。小さな針が無数に混ざっ ていて、とても恐いのです。私、手も、足も、もがれてしまっているの です が、ピリピリとした液体が私の身体に刺さるのです。痛い。わかりますか?痛い のです。」
泣く。 歩く。ただ、手も足もない。いびつな歩きで歩く態。
身体表現。「倒れてしまわないように強靱な意志をもて」ドイツ エリカ行進曲〜 http://www.youtube.com/watch?v=a4kd_ONt7ZE
言葉。「自由」「不自由な身体」「さらなる自由」「あらゆる拘束」「しがらみ からの脱出」「自由だ」「意志」「生きる」
強い意志をもって、整列する人々。
手がもがれる記憶。
足がもがれる記憶。
痛みの記憶。
血の記憶。
死んだ人々の記憶。
「蘇る負の記憶。私の脳みそがパンパンに膨れあがっていくのです。動いていた はずの心のざわめきさえも暗黒の静寂となるのです。 失われる記憶の先に、最果ての哀しみと苦悶の脅威が私を蝕み、私の脳みそをパ ンパンに、パンパンに、パンパンに、パンパン、パンパン、衝撃的な混 沌の 闇、闇の中の記憶を奪ってください。」
転がる。 ごろごろと転がる。「
手がない」「足がない」「この無様な私が転がる」(極め て陽気に明るく)
陽気に踊り出す人々。
「けれど、私には手も足もないのです。見えますか?私のこの姿、かわいそうで すか?」
暗転。
明かりが晴れやかに入る。佇む人々。
「歩く時は右足から」「労働の対価はすべて国家に」「笑うときは一斉に」「死 は無となるのみ」「目玉焼きは卵を二つ」「全裸禁止」 「スキップ禁止」「泣いてはならない」「人を愛したら」
満面の笑顔になる。安堵する。
お互いに気づく。
「お名前は?」「ご出身は?」「ご両親はいつ死にました か?」「今日はいいお天気ですね、空がまっ赤な血に染まっていますね。」 「ご趣味は?」「最近、どんな映画を観ましたか?」「あなたを愛してもいいで すか?」
無表情に見つめ合う態。
次第にすがる如きに変わる態。
「私はあなたの目の奥が恐い。目の奥ががらんどう。空っぽ。あなたは私の後ろ の後ろの向こうの向こうに、何を見ているのですか?私は全自動の機械 仕掛け の人間ごときです。人間ごとき。私の脳裏に青い海が見える。あの夏の、思い出 が封じ込まれた青い海が、血に染まっていく。脳みそがパンパ ン、パンパンに 膨れあがる。記憶が私の恐怖と哀しみをあなたの目の奥に痛めつけられている。 人間ごときの機械が止まる。私は私ではなくなっている のだから、あなたはあ なたでなくなっているのだから、これは何だろう」
身体表現。「記憶の奥に疼くものをグニャリと掴んでとまどう」Stevie Wonder with B B King Madison Square Garden http://www.youtube.com/ /watch?v=G24QICJf7OU
言葉。「感じる」「震える」「響いてくる」「揺れる」「思い出す」「熱い」 「温かい」
佇む。
「人を愛したら」
暗転。
明かり入る。追いかける人々。追い続ける人々。
「追いつけないのです。誰かの心という幻には決して、追いつくことはできない のです。」
手をもがれる。足をもがれる。転がる。のたうち回る。 激しい痛みと激しい哀しみ。
「覗いてしまった。戦車。夥しい数の戦車の葬列。あれは幻影、時代の予告編。」
「人を愛したら」
「殺さなければならない」
静寂。佇む人々。
「私には手がありません。あなたを殺すための。私には足がありません。あなた を殺しにいくための。」
暗転。
「夥しい数の戦車と」
沈黙。
「愛」
明かり。 機械仕掛けの行進。
暗転。
客電。