2014/2/10
道の傍らに雪の山、また新しい週のはじまりは開かれた稽古場から。1月早々のタイニイアリスの公演の効果なのか、参加者のやる気充実の感ありか。しばらくおさぼり気味だった女優も参加が続く。とにもかくにも、ここは「自由参加」だから、各位のペースでよいから、続けることだろう。
参加6名、見学1名。台本を7部作っていくのだが、久々に見学の分が足りなくなった。ごめんね。今回もまず、感情と身体のウォ−ミングアップから。「歩く」怒りの感情をもって歩く。必要なのは、音に乗ること、感情を歩きに載せること。過剰な表現は要らない。参加する。ぶつかりあう感情が動かない、音に乗れていない。曲が変わっても歩きが変わらない。2本目はぶつかりあいを加える。格闘技のような動きになりたい。基本は「歩く」である。
続いて、「修羅になる」怒りのぶつかりあいの憤怒を身体表現に変える。ペアから一人抜け、ペアを繰り返し、最後は全員のスパーク。怒るための怒りではなく、リアリズムでいきたい。身体表現は、身体の表現。必須。感情のぶつかりあいはまあまあ巧くいったが、身体表現がその延長線上に留まってしまう。身体で表現する。R奈は感情はよく動くが、身体が動かないなあ。Oけは、感情が言葉に負けている。まず、感情ありきの言葉でありたい。松本はシーン創りが巧い。身体表現はもっともっと「憤怒」の表現ができると想うなあ。T景とN美は前回よりは感情が動いた。身体表現については、ダメ。Oヌはもう少し自由な身体表現がほしい。感情に引きずられ気味。
感情と身体をアイドリングしたので、後半は作品に取り組む。今回は「狂う」作品。虚実の境目まで、狂っていきたい。松本は全般よかったが、まだまだ呼吸をしているだけの時間があり、ここも埋まれば最高の出来になるはず。リアリズムで言えば、とても巧くなって、泣ける。天才オキヌの音に対する反応は素晴らしいが、今回の作品は音をさらに仕掛けたので、戸惑った。「なに、これ?」という反応ができるのも、天才故か?笑。今回、音を歪めてみた。Dubちゃんに選曲を渡したら、「きもちわりい」という反応、よし、いけると確信したわけ。
俳優達の狂いができれば、歪んだ世界が創れそうな予感はした。
最後の黒猫を差し出す台詞、オキヌ、麗奈がよかったので、これは思い切り観客席に向けたい。ラストのタンゴは、こりゃ、ダメだ。タンゴにしましょ。笑。
ただ、稽古を重ねることができるなら、きっとよくなりそうな希望は持てたかも。作品、使用曲公開する。
★動画は身体表現。「それにはすべて理由があって、それにはすべていいわけがあっ て。」狂気の表現としての。部分。

『チリンチリン、聴こえ続けるあの音に、チリンチリンチリンチリン。』
作・演出・選曲 森島、音 DubMasterX、出演者 松本渉・藤川千景・桶谷健司・オキヌ・村上麗奈・やすいなおみ 撮影 花

客電落ちる。
明かり入る。そこここに所在をなくした人々。 身体を小さく丸めている。
「はじめまして」とつぶやく。
「はじめまして」とつぶやく。
「どなたですか」とつぶやく。
「僕です。(あたしです)」とつぶやく。
「こわい」とつぶやく。
「ここから出して」とつぶやく。
バタバタと手足を動かす。
「僕は駄々っ子のようだ。カードの入ったお菓子が欲 しくて、こうやっておかあさんを困らせたあの頃。僕の              あたしは駄々っ子のようだ。指輪の入ったラムネが 欲しくて、こうやっておかあさんを困らせたあの頃。あたしの 身体はこうして引き摺られて」
怯えたように立ちすくむ。
「僕の(あたしの)痛み。」とつぶやく。
歩き出す。遠くに鈴の音が聴こえる。音の在処に辿り着きたいと音を追う。とき おり、つぶやく。 「チリン」
「音、聴こえますよね?」
「チリンチリンチリン」
次第に音が執拗になり、グルグルと回り始める。
身体表現。「僕の耳に聴こえ続ける懺悔の響き」 使用曲 Sand Witch 3 2 3 TV!
村上"ポンタ"秀一(Ds)、水野正敏(Bs)、佐山雅弘(Pf)http://www.youtube.com/watch?v=hMyVHDqRwtA
言葉。「耳に覆いかぶさる」「身体を引き裂く」「音」「耳の奥の音」「雑音」 「騒音」「空耳」「無数の質問攻め」 「黙秘権を」「耳を塞ぐ」「耳を塞ぐ」「ワルツ」「ワルツ」「暗黒のワルツ」
「ホームに立っていた春の夜、ぼんやりと、見えないはずの富士山が見えた。富 士山に別段興味もないのに、 富士山が見えた。そして、音。チリンチリンとチリンチリンとチリンチリンと鳴 り続ける音。友達と信じていたあいつが、ありもしない話しをまき散ら してい る、ら、し、い、と聞いた。らしいってなんだよ。信じるとか信じないとか、く だらない。僕を引きずり回す、あの時の母のように、僕の小さな 願望を踏みつ ぶす奴ら。耳をつんざく警笛がなる。僕は(あたしは)誰もいない砂漠の中、強 い風に煽られ乍ら、 大地を踏みしめていた。」
掌をかざす。
「この手」つぶやく。
「僕を(あたしを)塗り潰す、この手」つぶやく。
「救いようのない悪」つぶやく。
怯える。
「誰かいる」
他の人々と目が合う。「ウソの塊」
「はじめまして」手をかざす。
近づく。チリンチリンと音が聴こえる。
「やめて。(やめてくれ)」激しい敵 意。
「チリンチリン」
「え?」
「来るな。(来ないで)」繰り返す。
「あの日」
母の首を絞める。
恋人をビルの屋上から突き落とす。
街に出て、道行く人々を射殺する。
チリンチリン、また音が聴こえる。
身体表現。「それにはすべて理由があって、それにはすべていいわけがあっ て。」狂気の表現としての。使用曲 Patti Smith - Because The Night×NSP さようなら
http://www.youtube.com/watch?v=uoGdx3I3dPE http://www.youtube.com/watch?v=L8mmF449nkQ
言葉。「とてもたいせつ」「僕の願望」「とてもくるしい」「あなたの願望」 「とても愛しい」「あなたの命」「チリンチリン」
佇む。
「耳の奥に聴こえる音、いつまでも鳴り止まない音、僕は(わたしは)僕を(あ たしを)遮るものをすべて葬った。 ほら、この手で。充ちたりて、絶望した。これは、絶望の、嘆きの音、チリンチ リンチリンチリン、僕の(あたしの)耳には この音しか聴こえない。母の声も、君(あなた)の声も、人々の声も消えた。チ リンチリンチリンチリン。」
暗転。
明かり。
手足をジタバタと動かす態。
歩き回る態。
聴こえる音。次第に大きくなる鈴の音。
「幸せだ。(幸せよ)」
さらに大きくなる鈴の音。
「僕の(あたしの)内蔵を引きづり出した。ほら、これ、内蔵で作った黒猫。」
身体中に穴。 転がり落ちる鈴。 追いかける態。
泣く。
暗転。使用曲 レイモン・ルフェーブル「黒猫のタンゴ」原曲
http://www.youtube.com/watch?v=Nb6Yvvqjpys
つかの間の明かり。 無表情に踊る人々の影。
暗転。
客電。

以上。