2014/7/28
影のお兄ちゃんが倒れたというので、稽古を終えて訪ねる。玄関で横たわり、それでも時折顔を上げる。しばらくただただ膝にのせて身体を擦ってきた。哀しい。開かれた稽古場。今回の発声は風邪のダウンで中止となり、開かれた稽古場から。参加3名。夏は浮き足立つ例年なので、誰がくるのかなあ、とのんびり向かう。久しぶりの参加者が自転車置き場で佇んでいた。稽古場はいいなあと想う。
まずは「歩く」毎回動画で検証していて、「やり過ぎ」について引っかかっていたので、今回は原点をもう一度話す。時折言葉による伝達は必要だ。心を動かせばそれだけでいい。音を聴く、歩く。「思い巡らす」〜「悪だくみ」〜「怒り」〜「怒りの交差」まで。それぞれに心を動かすことと音を聴き、歩くことに集中できた。叫んだり、喚いたりするよりもずっと伝わってくる。舞台表現だから大声を出す、喚く、大きな動きをする、以上は間違いだ。心が動けば、身体も伴い、かならず伝わる。大袈裟な「演技」は要らない。歩く、という様式、音に伴った様式である。音にのるのではなく、音を聴く、音を身体で聴く。音は効果音にあらず、音はBGMにあらず。音に敏感であってほしいのだ。
松本、健ちゃん、なおみ。皆いい表情をしていた。怒りの交差だけ加わる。ぶつかり、反発、抵抗をもっと感じ合う空間が創りたい。
最後はつぶやく。つぶやきながら消える。
続いて、「心身バトル」相手を攻撃する。攻撃でダメージを感じたら身体を動かす。はじめての課題。整った進行にならなかったので、とても面白かった。なかなか反応しないなおみも、それはそれで面白かった。反面、敏感にもなってほしい。何が正解で何が不正解のないそれぞれの心の変化。また挑戦してみたい。最後はピークを創ってみた。身体を動かす方向へ向かい過ぎた。まず、心。次回の課題とする。
次はダンスバトル。Dubちゃんがまた機材を抱えてDJをしてくれた。役者たちにはまず自由に上がって踊ること、さらには空間の使い方を指定しながら、体感してもらった。後半にDJさんとのセッション。そして、ピークで暗転の流れ。若干曲の注文をしてしまったが、これからはDubさんの自由が役者の自由と共存できればいいと想う。ここにもおもちゃ箱をひっくり返したような空間を望む。
今回は1年以上前に書いた作品を再度創ってみたくて、2本用意していった。やはり稽古時間が2時間しかないので、1作品のみとなりそうだったので、休憩をしてもらいながら、説明。松本だけが2度目ということになり、なおみと健ちゃんは初見になる。実は、あたし自身が毎週1本新作を書くことに拘って来た。稽古用の作品を書き始めて3年目も半分まできたので、これからは1作品を繰り返し仕上げていくという稽古も組み込もうと決めた。新作も増やし乍ら、作品の繰り返しによる完成度を上げていく。
今回は書いた当時は実感がなかった作品だが、今の社会と照らし合わせると実感が強くなったと松本の弁。拘束や強制で追い込まれていく人々の作品である。時代の危機感ということか。1年以上前の前回の松本を思い出したが、今回の出来のスキルアップが嬉しかった。健ちゃんは地味だけれど、常に誠実に心を動かし、想像して入り込むことが出来る役者なので、あたしは好き。舞台の端に外れていく癖が気になるが。笑。なおみも随分集中してできた。ただ、人形になるという所謂様式を必要とするシーンにテクニックが伴わない。やれることを増やしていこうね。身体表現ももっと自由に。
1曲目の身体表現は揶揄の表現にしたい。
登場人物の切り替わりももっと正確に変わりたい。
以上。再掲となるが、作品、使用曲公開。やはり、あたしのスマホ使いでは動画は失敗した。今回は写真で。作品シーンからとダンスシーン、セッションの時のDJ Dubちゃん。
『我の隣に風吹きすさび、我の隣に誰の泣く声蝉時雨』
作・演出・選曲 森島、音 DubMasterX、出演 松本渉、中澤健太郎、やすいなおみ
客電落ちる。
強い声「ジークハイル!」
明かり入る。直立不動の人々。軍靴の響き。怯える。
強い声「 勝利のために汝の犠牲を捧げよ」
全身の力が抜ける。しかし、佇んでいる。さらに怯える。
身体表現 「ここからの逃避」使用曲布袋寅泰 & Brian Setzer & Char (Live) JEANIE JEANIE JEANIE SUPER SOUL SESSIONS
http://www.youtube.com/watch?v=rS0itH0m48c
言葉。「諸君は総力戦を望むか?望む!」 「求められれば、今まさに想像しうる以上の、全面的かつ徹底的な戦争を諸君は望むか?望む!」「私は諸君らに問 いたい。諸君は今でも総統を信じているか?いかなる場面でも総統に従い、戦争貫徹のためいかなることでもやり遂げる、諸君らの覚悟は無際限で絶対的なもの であるか?然り!」
激しい恐怖と怯えに動けなくなる。やがて人々の顔が無表情になり、ゼンマイ仕掛けの人形となって、動き出す。
「僕はジョージ(あたしはメアリー)いつでも誰かに恋をして、あの窓辺から誰かを見つめていた。僕の(あたしの)誰かはいつでも後ろ姿のままで、僕の(あ たしの)前から煙のように消えた。僕は(あたしは)いつでも寂しくて、また誰かに恋をするんだ。僕が(あたしが)こうして歩き出したら、いつかあの背中に 追いつける。そう想い乍ら、僕は(あたしは)ずっとずっと歩き続けてきた。あれから、ずっと、もう100年くらい時が過ぎたような気がしている。今、何時 ですか?今、ここはどこですか?僕は(あたしは)いつまで歩き続けるのですか?僕の(あたしの)行く先にはいいことがあるのですか?僕の(あたしの)進む 向こうには、誰かが待っていてくれるのですか?」
次第に人形だった人々に魂が蠢きはじめる。(感情の海に溺れるが如く)「奇麗ごとばっかり。ウソばっかり。命令ばっかり。戯言ばっかり。裏切りばっかり。 束縛ばっかり。その場ばっかり。痛みばっかり。悲しみばっかり。別ればっかり。ねつ造ばっかり。裏工作ばっかり。虚構ばっかり。ばっかり、ばっかり、ばっ かり、バッカス!!」
身体表現。「世を儚んで」http://www.youtube.com/watch?v=nPnZFpq-MxA
言葉。「もう二度と」「もう一度だけ」「もうやめて」「もうそこで」「もうそれは」「もうもうと」「もんもんと」「もう決して」「もやもやして」「もう消えて」
芋虫が這うように床を這い回る人々の態。
強い声「強制収容所」
お互いにじっと見る。お互いに探り合う。お互いに話しかけようとして、やめる。沈黙。突然立ち上がり頽れる。床を這い回る。力尽きて停まる。ゴロンとひっくり返る。天井を凝視する。
「見えない空が見えてきた」
「空が見たい」
「今更」
「目を閉じても、もう何も想い出せなくなった。見えるのはまぶたの裏側だけ。」
太鼓が鳴る。身もだえる。太鼓が鳴る。身もだえる。太鼓が連打される。激しい痛みにさらに身もだえる。★Dubさん 太鼓よろしく。
力なく立ち上がり、呆然と佇む人々。蝉時雨が聴こえる。
「悲しいという気持ちがどんな形をしていたのか、もう想い出せなくなった。」
泣く。泣き叫ぶ。静かに狂っていく人々。
突然首に縄をかけられ、引きずられる。
「僕はジョージ」「あたしはメアリー」
蹴飛ばされて、立ち上がる。
力なく足踏みをする。無表情になっている。
身体表現。「虚無地獄」使用曲 ちあきなおみ「喝采」http://www.youtube.com/watch?v=WsAYvdcwYjU
 繰り返し。音としての言葉。意味をなさない音のみ。
人々は泣いている。
暗転。
「あの夏の日、聴いた蝉時雨。
もう一度、聴きたい。
あの夏の日。」
明かり、カットイン。
うつぶせの人々。太鼓連打。人々は動かない。
カットアウト 暗転。
「こっちを向いてよ」
強い声「否!」
客電
以上。参加どうぞ。