2014/8/11
8月第2週目、過ごし易い日だった。稽古日は稽古に集中したいところだが、ベケット組の衣裳が少々気になり、倉庫へ行き、やはり昨日決定打で渡したものを超えるものがなく、うむ、と思いつつ、稽古場へ走る。発声もあったので、滑り込みセーフだった。マンツーマンのレッスンができるうちに基本をすべて叩き込もうとしている発声レッスン、身体をまず自由にすることを繰り返す。その役者さんに一番合う基本の声を探る。油断すると頭に抜けてしまっていた声が今回で少し安定してきた。レッスンの間の1週間を有意義に使う事。
続いて開かれた稽古場、久しぶりの女優2人が参加。参加者5名、見学1名。音のDubさんがライブのため、音もあたし。スマホに変えたので、CDとスマホで随分やり易くなった。これは収穫だ。まずは「歩く」裏切りと憎しみ。Nちゃんが少し形で固かった。久しぶりの桶が素直で良かった。Rなは気持ちが緩くてはっきりしない。大仰に何かを演れる課題ではなく、歩くだけの課題なので、心の振れ幅がまだまだ小さいということ。串間くん、ゆきはよかったな。
それぞれに接点を造って行く。かと言って、すぐさま共有していける感情ではない、そこを忠実に感じていくことが肝心、歩くの基本が飛んで抜けてしまわないことも肝心だよ。歩く、さらに自分以外の共演者をその感情の対象としていく。激しい拒絶とぶつかりあい。それぞれに動き出してきた。一度ブレークして、再度。繰り返す事で高まる感情の積み重ねの妙をみることができた。
さらに、立ち直り、信頼するまで。心の折れの立て直し、これが肝心。丁寧な作業が肝心。全員丁寧だった。それぞれにもアドバイスして、次へ。
「人間交差点」歩く中で、劇的なものを探り乍ら、シーンを創る。日常ではないもの、観客の想像力を揺らすものが見たい。それぞれに工夫が見えてきた。
歩く、シーン創り5連発、続いて、「精神病院から逃げてきた人々」になる。そして、シーン創り。狂人を演じることが過度にならす、よい流れだったが、狂いについてはもうひとつ特徴的な表現も欲しい気がした。これはあたし自身もまだ課題として。
さらに歩く、「殺人者たち」出逢ってシーンを創る。積み重ねて伝えてきたことが、役者さんたちの心を自由にしていくととても良い結果になってくる。
静かに静かに呼吸を探り合うだけ、というシーンが産まれて、嬉しかった。
そこにさらにパトカーのサイレン、そして、出逢うというシーン。空間がただ動き、ほぼ言葉を発しない出演者たちによって、張りつめた良いシーンとなっていった。嬉しい。皆、よかった。終わった跡、それぞれにアドバイスをする。さらにさらにの課題を提案ということかな。
次は修羅になる。感情のピークを身体表現にする課題。今回は「愛」愛のピーク、今回は全員の心の在処がよく動き始めていたので、素直なシーンが出来た。ただ、身体表現にもっと自由と心との連動がほしいし、表現(見えるものとしての)となりたい。
次は「ダンスバトル」今回はメッセージの詰まった音源を使用してみた。今回は参加者の感度がよく、ダンスバトルも音と融合していけた。音に身体をのせていくこと、それを愉しむこと。Rなはどうしても踊らなければという意識が見え隠れしてしまう。相手役、空間、音にまず身を任せてみること。回りの空気を感じてみることではないかな。
休憩を入れて、作品創り。今回の前半は「感じる作品」創りへの布石だった。皆の心身が柔軟になっていたので、仕上がりも上々だった。作品と使用音源を公開する。CD音源は公開できないので、動画でどうぞ。今回は出演者それぞれがその空間、その様式の中で何を感じ、どんな心情になりどんな風景を見たのかという即興性を大切にしてみた。機会を得たら、細部を修正しながら、はっきりした色味を出してみたい。
最後に久しぶりの相関図。愛、愛、しつこいけれど愛。今回もまず最初にそれを伝えて開始。面白く、切なく、ドキドキするシーンになった。直ちゃんよかったわ。ゆきのしゃべり倒し、ぶち切れのスイッチがいい。串間くんの変幻自在この野郎ぶりがいい。桶と麗奈はまだまだ愛が見えない。
さらに精進しよう。
★ 動画はラスト「輪廻輪廻と木馬が廻る」部分。
★ 別に「人間交差点」「ダンスバトル。
『ノスタルジーを詰め込んで回れ、廻れ、回転木馬の夢の跡。』
作・演出・選曲・音 森島、出演 桶谷健司、田山由起、村上麗奈、高木直子、串間保、撮影 花

客電消える。
明かり入る。曲 
Primula - Boys at the Cape
https://www.youtube.com/watch?v=QdqRlMYCEUE
人々、きょう声を上げて、踊っている。
ただし、それは羊膜に包まれている如く、声が聴こえない様でありたい。
曲が消えていくと人々は円陣を歩き、話し始める。
「あの日の遊園地で見た風景は、僕の(あたしの)脳裏に深く深く刻まれている。
あの夏の蝉時雨は僕の(あたしの)想い出の箱に詰め込んだ。ときどきぜんまいをキリキリと巻くと
あの、蝉が鳴く。あの頃の僕は(あたしは)ゲームが好きで、鉄棒が好きで、ブランコが好きで、
ピストルが好きだったっけ。」
「回るよ、回る、僕の中の(あたしの中の)回転木馬。」
人々止まる。女ひとりのみ、舞台の中へ歩いていく。といきなり立ち止まり、振り返ると叫ぶ。
「あんたたち、あたしをどうするの?こんな木馬に閉じ込めて、
あたしをどうするの?」
人々観客席を見る。「心の闇の暗黒の、迷い迷子の暗黒の、闇。闇、闇。」
円陣の人々。女に話しかける。
「どうしたの?」
女「あのね、このあたりに随分昔に小さな遊園地がありませんでしたっけ?」
円陣の人々「知らない」
女「そうですか、じゃ、あたしの勘違いかしら?」
円陣の人々「そう、勘違い、思い込み、思い違いの遊園地。」
女「ほら、遊園地。ほら、ほら、遊園地。そう言ったわね、遊園地。」
ある男「なんですか?それ?大人のための?」笑う。笑い転げる。
女たち「やだ、そうそう、そんな感じ。」笑う。笑い転げる。
男たち「僕とダンスを踊ろうよ」
女たち「ええ」
女に羽交い締めにされる男たち。
女「先生、夏休みの宿題は標本を作りました。蝉の標本、蝶々の標本、
海で拾った貝殻の標本。」曲
男「先生、僕、先生のことが好きになっちゃった、なんてね。先生、オレ、」
ゆっくりと女は男を羽交い締めにした腕の力を抜いて、男を抱きしめる。
女「ねえ、遊園地、なかった?このあたりにずっとずっと昔。」
男「あの遊園地にはオレは行っていないから。」
女「知ってるの?知っているんじゃないの。どうして、どうして、ウソをついたの?」
男「やめてくれ」「先生、やめてよ、いつでも僕に、僕のせいにするのはやめてよ。」
男怯える。
女、手を離す。叫ぶ/「回転木馬に閉じ込められたあの頃の、少女の夢のあたしの夢の、夢の
封印解き放て」
身体表現。「記憶の最果て、混沌の記憶。」
言葉。「あの頃」「ノスタルジーの記憶の膜」「あの時」「時計の針が反対に回り出す」
「いつまで」「記憶が真っ暗になる」「回転木馬」「回る回る」「記憶が歪む」
「ここにいて」「ここにきて」「封印される記憶」
円陣に歩く人々。「廻れ、廻れ、回転木馬。回って回って時計の針を逆にする」
人々止まる。女、歩き出し、止まる。振り返る。
笑顔。「ねえ、あなた。いいお天気。久しぶりにメリーゴーランドに乗りたいな」
円陣の人々。「止めて(くれ)。記憶を巻き戻すな。記憶は閉じ込めて、回転木馬に閉じ込めて、それが
心の闇を消す。」
笑顔の女。「え?あなた、どこにいるの?早く行かないと眠くなっちゃうわ。」
「この赤ん坊」
女、笑顔で赤ん坊を抱く仕草をする。「この赤ん坊、あたしにちっとも似ていない」笑う。
笑い転げる。
男達、笑顔で女に近づく。女を羽交い締めにする。
男達、床に落ちた赤ん坊を拾い上げ、抱く。笑顔。「行くぞ、遊園地」
円陣に歩く。「あの日、あの夏の午後、僕は(あたしは)両親に連れられて、遊園地に行った。夜の帳が降りていて、真っ暗。
真っ暗やみの遊園地で回っていた。回転木馬。」
止まる。観客席を見る。「記憶、閉じ込めた記憶。思い出したくない記憶。」
激しく怯え、叫びを上げ乍ら、逃げる。
「陰湿な記憶。学校にいくと、僕は(あたしは)いつも誰からも、
いつも誰にも、見えないみたいだった。僕を(あたしを)見てよ。
僕の学校は僕を回転木馬の木馬の中に閉じ込めた。(あたしをどうして
こんなところに閉じ込めるの?お母さん)」
「夜の遊園地で、僕は(あたしは)回転木馬に乗ったんだ。木馬はクルクル回り、
決して前には進めない。キラキラと光り輝く偽物の贅沢に、僕は(あたしは)
気持ちが悪くなって、吐いた。僕(あたし)の吐瀉物は永遠の憧れのようにクルクルと回って
消えていく。僕は(あたしは)回転木馬から落ちた。」
叫ぶ。「蝉時雨、夏の太陽。闇の世界の遊園地。」
男「さあ、いくぞ。遊園地」
女「そうね、あたし、回転木馬に乗りたいわ。」
男、女「この赤ん坊と一緒に」
男、女「行こう」
笑顔で歩き出し、止まる。
「封印した記憶を回転木馬に閉じ込める。封印した記憶の闇の闇。
夏の午後、愛に充ちた遊園地に出掛ける。あの記憶を
閉じ込めるために、遊園地へ行って、
回転木馬に乗る。」
身体表現。「輪廻輪廻と木馬が回る」
リンドン、リンドン、リンドン、リンドン、クルクル回るよ、メリーゴーランド。
闇を閉じ込め、木馬は回る。
暗転。
客電