2014/8/18
稽古日になると〆切の企画書が舞い込む。というわけで、稽古をがっちりやって、急ぎ一路帰宅。最寄り駅まで着いたら、「企画書は明日でオッケー」のメールが入る。みんなとごはん食べたかったわ。それならと稽古日記を書き始める。本日は音もあたしなので、こんな時に勉強しておこうと思い、挑戦してみることにした。スピーカーの振り分け等もやってみようと想ったり。緊張しつつ稽古場へ。参加4名。山田ジャパンさんも動き出したようだし、どうかなあと想っていたら、あと数回は松本も参加できるそうだ。しばらくフラフラしていた桶も前回良い感覚があったので、続けてくるといいなと想っていたので、参加で嬉しかった。串間くんは確実に化けている。是非芝居創りたいわ。なおみはただただ必死についてきていたが、随分女優らしく成長してきた。
さて、まずは「歩く」音にのり、心を動かして「歩く」という課題。徐々にスキルアップを目指して、段階を踏んできた。今回は「心に刺を刺していく」に挑む。今回は全般を通して、後半の作品創りに向けての訓練としてみた。音による出所、煽りもトライじゃ、トライ。それぞれに感じて歩くということができるようになってきた。串間くんと松本はその感度が研ぎ澄まされていて文句なし。両人ともやり過ぎることが削がれ、素敵。桶も上々、なおみも蠢いている。しばし心に刺を刺して歩いた後、お互いの刺を刺し合う。ただし、身体への接触は禁ずる。挑みと恐怖と怯えと葛藤が見え隠れして、次第に誰からもうめき声にも似た声が上がり始めた。松本、串間くんは内部崩壊がはじまり、いい。なおみ、桶はもうひとつ天井抜けられたらいいな。
空間が動く。感情がブルブルと震える。歩き、静かに去って行く。
次は、狂いを探る。「精神病等A病棟」のシーン創り、5本。歩くからの続きで始める。狂うということの命題を話しておいたので、後はまたまた挑んでみること。1本目は狂人たちが空間を分け合った。2本目は持てない接点を持ち始めた。3本目は各人大切なものの喪失。無くしたはずの何かを探し続けている姿は、狂気を孕んだ。4本目は仲間の死。静かに静かに嗚咽を漏らし始めた狂人たち。いいシーンだった。5本目は空間をそれぞれに動き始めた。
これはとても信じられるシーンが産まれた、よかったな。ずっと探り続けていること、少し明かりが見えたな。あたしも次回は参加して鍛えたい。
4名ともよかった。あたしは音の抜き差しに挑んでみた。ふむ。なるほど。音に刺激される役者さんたちに敏感になりたい。
休憩を入れて、今回は作品創りへ繋げることにした。ダンスもやりたかったが、心が動いているところで創りたい作品だったので、後に回す。結局、じっくり再度創った作品だったため、ダンスの時間は取れなかった。
作品は1年半前に書いた作品を再度。松本と桶は2度目になる。前回は詩的な上がりになっていたので、今回はもっともっと生な人間ドラマ、サイケデリックな倒錯の世界観が出したいと想った。はっきりした意向を伝え、後は役者さんたちにイメージをはっきり持ってもらうことをお願いしてはじめた。
積み重ねたことで活き活きした仕上がりになった。首を刎ねられた人々が最後に見る世界、その言葉の発語について、終演後お願いをした。これはラストの一言なので、企業秘密なり。笑。
作品と使用曲公開する。音は少し練り直した。
新作で即興性もセッションも鍛え、繰り返す稽古で積み重ねることもしていきたい。さらに探求していく。以上。
★動画は台詞部分にしてみよう。別に歩くをUPする。

『脳下垂体がささやく。僕とダンスを踊りませんか?』
作・演出・選曲・音操作 森島、出演 松本渉、桶谷健司、やすいなおみ、串間保 撮影 花

客電消える。
明かり入る。 胎児のように転がっている人々。
「ドキドキする」
「ドキドキして、身体が熱く なる」
「産まれる前の、この原色だらけの宇宙」
「目覚める前の、この臓器の鼓動にドキドキしている」
ゆっくりと極めてゆっくりと立ち上がる。
「原色の原風景に僕は放り出された。 子どもの頃、僕は母の後ろ姿をみた。僕の前の母はいつも後ろ姿だった のだ。 母の回りは赤、赤い色。赤い毛糸のあやとりを僕は母と繰り返した。東京タワー ができなくて、僕は泣いたんだ。母はいつでも後ろ姿だ。あやと りを繰り返す 母の手だけが僕の記憶の裏側に揺れる。赤、赤、赤。母の血の色、母の情熱、母 の情欲。僕の東京タワーの崩壊する色、赤。母を思い出 す。後ろ姿の母の背中 に頬擦りしたい。母の背中、赤い母。」
ニヤニヤと歩き乍ら、身体中を抱きしめる。
「シアン、暗い青。僕の血管を流れるシアンの青だ。僕の風景は暗い青の世界だ。」
「あ、白蛇(しろへび)が這い回る。気持ち悪い。へび。蛇の夢をみる。否、夢 から醒めても、僕は見る。白蛇の大群が這い回る宇宙に僕は シアンの寒気がするのだ。」
身体表現。「原色宇宙にドキドキしたら」使用曲ジャニスイアン「恋は盲目(Love is blind)」
https://www.youtube.com/watch?v=mOf-P7mW8Wc
言葉。「赤」「シアン」「黄色」「マゼンタ」「緑」「チアノーゼ」「僕の宇 宙」「歯車が合わないのだから」「灼熱のあれ」 「チグハグ宇宙」「赤」「イエロー」「黄色人種の馬鹿野郎」 悄然と佇む。
キョロキョロとあたりを見回す。
赤い壁、シアンの天井、黄色いへび。
「僕は今、閉じ込められている。ここはどこで、僕は誰だ。ここは僕の青春の終 焉の墓場だとしよう。僕のドキドキは僕を彷徨い歩かせて、僕の手足は 僕のい きたいところで悪さをするのだ。僕の願望、僕のドキドキ、僕の原色宇宙の彷徨 いの果ての、鳴呼。僕は白い羊を追う。白い羊が僕を見るんだ。 イエス様は僕 に白い羊に赤いペンキをまき散らすことを要求する。汝、神を信じてなるものか とイエス様は言う。僕は僕の腕を擦る。僕の腕がすり切れ て痛い。僕の腕を擦 り続けていたら、頭が酸素不足を引き起こして、僕はいい気持ち。ふわふわとし て、いい気分だよ。赤いペンキの缶を携えて、僕は 白い羊を追いかける。追い かける。走れ〜。」 ヘラヘラと笑う。
キョロキョロとあたりを見回す。
「ドキドキする」
目が合う。あざ笑う。
「ドキドキする」
「母の背中に赤いペンキをぶちまける。テレビを消せと母はうるさい。どこへい くのと母がまとわりつく。母を赤いペンキまみれにしてやりたい。母の 白い 指、ささくれた白い指。赤い東京タワーの母の指。あやとり糸の母の指に赤いペ ンキをぶちまける。僕はドキドキする。シアンの、チアノーゼの僕 の指、僕の くちびる、僕のドキドキする身体は赤。母の背中に頬擦りしたい。」
歩き出す。ファッションショーの如く。観客席に視線を投げる。ポージング。
身体表現。「過大評価する僕とチアノーゼの唇の僕と」使用曲 John Cage − Dream
https://www.youtube.com/watch?v=0Fhc3Tbnhsc
言葉。「赤いあやとり」「黄色いへび」「シアンのくちびる」「赤い情欲」「黄色い胃 液」「青い空」「あか」「マゼンタ」「青」「暗い青」「きいろい花」 「赤い おんな」
笑い転げて、泣く。泣き乍ら、発狂する。
「我ここにあり。」
名前を呼ばれる。返事をする。
歩き出す。
原色の壁、原色の箱に閉じ込められる。
「ドキドキします。まだ僕の脳下垂体はドキドキします。」
「イエス様が白い羊を放す。一匹、二匹、三匹、四匹、五匹、六匹、赤い羊。赤 いペンキをぶちまけたのは僕。イエス様ではない、僕の仕業だ。ドキド キす る。女の背中に赤いペンキをぶちまけたので、僕はドキドキする。七匹、八匹、 喰う女。女を喰う。貪り喰う。母と繰り返したあやとり糸の東京タ ワー。白い 羊、白いヒツジノタイグン。イエス様、僕の脳下垂体がドキドキします。」
名前を呼ばれる。返事をする。
断頭台にまっすぐに歩いていく。
「首切り台」
「僕は頭を載せる。僕のドキドキする脳下垂体を載せる。首切り台に僕の頭はヒ ツジノ頭。数多の羊。赤い羊の僕の頭。」
首が弾け飛ぶ。※Dub音下さい。
悄然と佇み、転がった首を眺める。
笑う。
断末魔の叫びをあげる。
「転がる僕の脳下垂体。」
「え?なあに?」
「僕とダンスを踊りませんか?」
笑う。声が消えていく。
身体表現「脳下垂体ダンス」使用曲 SUPER Eurobeat D-SPEC Ultramix http://www.youtube.com/watch?v=wv0iUKb80C8
暗転。 音カットアウト。
明転。 放心する人々。頭はない。
「僕の原風景は原色宇宙」(記号のように発語してほしい。)
暗転。
客電。