2014/9/1
雨。帰路の車中なおみと芝居の話、娘を拾って帰宅。開かれた稽古場。参加3名。撮影の娘が仕込みで欠席なので、撮影したり参加も中途半端になったので、やめた。稽古開始で伝えたことは、もっともっと壊していくこと、天井を抜ける事。だいたいこんなところで、というものは要らない。突き抜けてほしいのだ。まず限界を越えてみることだと伝える。そして、開始。
歩く。「壊れていく」己の内面を壊していく。今回は身体で表現することもよしとする。突き抜けてみるために。音のDubさんも即興でお互いに刺激し合って混沌としたデストロイが創りたい旨。開始。壊れることは内面で起こるはずでまず先に表現(声、身体、動作)がありきになってしまう。声を抑えると、壊れていけない。それでも、内面と共存してその内面を壊していく訓練をしなければダメだよね。脳内が真空になるまでやってほしいね。今回は参加3名だったので、個々にアドバイスした。
続いて、精神病棟A病棟。何らかのきっかけで精神病院にいる人々。5シーンを状況に条件を加え乍ら創る。突出した感情や偏向したものへの拘り、幻覚や幻聴に対する向き合い方、「〜みたいなこと」ではなく、追求していきたい。
「母の死を聞く」のシーンが一番劇的に感じた。母の認識がどうあるのか、それはわからないけれど(語られないけれど)★この部分の動画を上げます。
弱者に対する想像力はとても大事なこと。
障害のある方を上から見る、憐れむという表現は嫌いだ。
それはあたしのテーマでもある。
後半は作品を創った。前回私しかいなかったので、自分で演じてみた作品。演じたことで掴んだものを今回は最初の説明と途中のミザンスに組み込んでみた。どこへ動いてほしいという時、動きの切れが緩い。今回、芝居部分はそれぞれに良かったが、身体表現が全然ダメだった。昨今の身体表現という言葉の一人歩き、勘違いしている気配があったので、終了後厳重注意した。心と身体を繋げること、身体表現するのではなく、心が動かす身体を見せてほしいのだ。そして、そこに音が共存すること。そこにはリズムもメロディも歌詞という言葉もある。いつか各位の中で身体が動き始める時まで気長に続けていくしかないか。あまりの出来の悪さにションボリ。2曲目は声を飛ばし過ぎた。良くないね。三名だったので、各位に細かいアドバイスも出来たので、作品と音源を公開する。ラストのお骨を食べるシーンについては、さらに創り込みが必須と想った。ぎくしゃくと歩く、痙攣するとか、ゆっくり時計の音に合わせて振り返るとか、身体でかならずしてほしい表現ができないのもまだまだだな。こういう風にね、とやってみせても真似できない。せめて真似から始めようってか。笑。食事の席でときどき足が重くなるという話を聞く。稽古場ってそんな時もあるよね。それでも行かなければならないと想えるようになれば進歩するのだけど。楽しむなんてなかなかできない。まずはとことん苦しめば、時に嬉しい瞬間があるってことね。真っ向勝負しましょうよ。

『抱きしめてほしい』
作・演出・選曲 森島、音操作 DubMasterX、出演 マイケルリュー、桶谷健司、やすいなおみ

客電消える。
明かり。後ろ姿の人々。
静かに話し始めるが、やがてそれは言葉の羅列のような 叫びとなってほしい。
「夏の夜だった。空の外れで花火の弾ける音が聴こえた。夏の夜だった。 遠くの町から祭り囃子が風に乗って聴こえてきた。いつかおばあちゃんが送って くれた浴衣は 出番のないまま、幾夏もぶら下がったまま。夏の夜、僕は(あたしは) 花火を目の裏に想像する。想像するのだけれど、僕の(あたしの)花火は 真っ黒で見えない。真っ暗で見えない。花火が鳴る。祭り囃子が聴こえる。 夏の夜、夏の夜の曇天の空、僕の(あたしの)花火が鳴る。花火が鳴り響く。ド カンどかんと鳴り響く。 助けて、助けて、僕を(あたし)助けて。花火が見たいよ。もう一度。」
時計の音。時計の音に合わせるように静かに振り返る。
「産まれイズル苦しみに似て、あの痛みはゆっくり僕の心(あたしの心)を縫い 閉じていく。 君(あなた)が受け取ったパンドラの匣は君(あなた)の裏切り、ウソ、絶望、 悪夢に潰される。 この匣は開けてはいけないと僕は(あたしは)君に(あなたに)言った。」
人々がぎくしゃくとした態で歩き出す。 止まる。
またぎくしゃくとした態で歩き出す。 止まる。
視界がどんどん遮られていく。暗闇が襲う恐怖。己の身体を確かめるよ うに身体をまるで楽器を 奏でる如く叩く。
「今、なんて言ったの?」
「君は(あなたは)僕を(あたしを)クズと言った?」
「今なんて言ったの?」
「今、なんて言ったの?僕を(あたしを)愛してるの?」
「今、なんて言ったの?」
止まる。
男「花火が見たいとおまえが言う。オレはビールが飲めるならいいよと応える。」
女「ビールが飲めるならいいよとあなたが言う。ちがうの、あたしは、ちがう の、ちがうの、夏の夜の空、舞い上がる 大きな火の玉。大きな魂の火の玉。耳に聴こえるなつかしいあの曲、太鼓がドン ドンブリキの太鼓。」
ぎこちなくぎくしゃくと痙攣する女。
男「やだな、心が縫い閉じられるんだ」 ぎくしゃくと歩く男。止まる。
見つめ合う。駆け寄る。抱き合う。
身体表現。「パンドラの匣の奥底に愛と希望だけが残されているとゼウスの神が ささやく」
使用曲【Platonic sex】山下智道
言葉」「抱いてほしい」「抱いてほしい」「愛の向こうの裏切りの調べ」「忘却の快楽」 「パンドラの匣を開けてしまった」「それは女」「パンドラという女」 「あなたが射精する」「バットタイミング」「君が喘ぐ」「ウソの声」
探るような目でお互いをみる。 後ずさり、ぎくしゃくと後ずさり、痙攣。
視界が狭くなっていく。暗闇の恐怖。
「遠くの空で花火の音が鳴り響く。あれは一体、どこの花火?夏の夜の、花火の、 音。音、つんざく音。僕の心を縫い閉じる君のウソと裏切り。 (あたしの心をかっ捌く音、あたしの心をめった刺しにするあなた)」 止まる。見つめ合う。
「聴こえる?」
「うん、聴こえるよ。」
「遠くの町の祭り囃子?」
「そう、祭り囃子と花火の音と」
「君の喘ぐ声」
「ウソの声」
「祭りの笛と花火の音」
弾けるように駆け寄り、抱き合う。
身体表現。「狂うほどに抱きしめてほしい。耳の奥に花火があがる」 使用曲サイケデリックトランスミッション
性愛表現としての。
言葉。「飛びたい」「あの夏の夜空」「盲目の真空」 「時計の音が遠ざかる」「時を彷徨う」 「花火が舞う」「見えない花火」「花火が舞う」「音だけの花火」 「快楽の花火」「盲目の花火」「音だけの花火」
エクスタシー。
「夏の空に花火の音が聴こえる。夏の空に祭り囃子は響く。 僕は(あたしは)横たわる。 横に置かれたパンドラの匣。僕は(あたしは)もう何も見る事ができない。 君が(あなたが)閉じ込められたパンドラの匣。 この匣はけっしてあけてはいけません。とゼウスが言った。」 決して開けてはいけませんとゼウスが言った。
匣を抱えてゆっくりと後ろ姿になる。
「夏の空に、遠くで花火の音が聴こえる。花火の音が聴こえる。 おばあちゃんの浴衣は寒い冬が訪れても、 夏の花火の音の中で、ゆらゆらと揺れているだろう。」
「逢いたいよ、君に。」
ゆっくりと振り返り、匣を置く。
匣をゆっくりと開ける。
小さな骨をつまみ出して。
ポリポリと食べる。
「花火の音が聴こえるよ」
暗転。
「抱きしめてほしい。」
明かりの中、 骨を食べ続ける人々。
溶暗。
客電

以上。参加自由。いつでもどうぞ。