2014/9/15
久しぶりの晴れの日の稽古場。順調に稽古に向かっていて、乗り継ぎ駅で稽古進行を考えていて、何の疑問も持たずに特急に乗ってしまった。ふと我に返って「まだかな?」と外をみたら調布が近づいていて、気付く。うちを出発してぐるりと回ってしまった。ありゃ、と調布からまた稽古場へ向かう。余裕があったのに、稽古場に5分前着。慌てていつもの稽古場珈琲を手に稽古場へ。あれ?誰もいない。一息ついていたら、参加者3名。見学1名。今回は20代前半の3名の男優。うち2人は初参加でスタート。まずこの稽古場は日常的な訓練をする場所と説明、心を動かし、心身を繋げていくことを話す。まず今回稽古してみて、何かを持ち帰ってほしいことを伝えて開始。
歩く、今回は「敵対する」自分以外の存在を敵対する。Dubさん音を使ってみた。初参加のD貴くんはさっそく表現をしはじめるので、早いうちに止めてアドバイスする。アドバイスすると明るく笑って、いいよね、スポンジのように素直でと想う。次は歩くことに集中して俄然良くなった。久しぶりの悠平はやりすぎず、よかった。一瞬怯えというよい感情が動くが、一瞬でキレてしまうので、やっぱりまだ自然さに欠けるね。その一瞬が続いていくと良い。健Tは心を動かそうとまっすぐにこなすが、それだけの優等生では劇的に遠い。さらに、敵対する相手に挑んでいく。次第に声も出始めて手応えを得た。そのまま、身体表現へ。やっと動き始めた心が「身体表現」という一声でぎくしゃくしてしまう。悠平の身体表現も少しまとまり過ぎた。他のふたりは動けず。これからだね。
チンプンカンプンかもしれないが、ここで身体表現、心と身体を繋げるための課題をさらに投入するのがあたし流。繰り返して繰り返して、わかっていく心と身体の繋がりと信じている。続いて、「修羅になる」
感情のピークを身体表現に変える課題。今回は「争う」
感情のぶつけあいにお互いの探り合いや微調整が見え隠れするとはっきりしない。もぞもぞした感触が残る。D貴と健Tのバトルを2回。2回目はややスパークできた。身体表現がバランバランではあるが、少しずつ声を飛ばしてみたら、よい瞬間もあった。
次にD貴と悠平。悠平はこじんまりが気に入らないが、心と身体は繋がって来たね。大胆に大きな身体表現になるといいなあ。
休憩を早めに挟んで、再開。「精神病棟A病棟」精神病院に入院する人々。3シーン創る。今回は想う事をやってみることと伝えてスタート。三人とも自由に入院している人々を続けることができた。シーンを暗転で繋ぎ乍ら、テーマを指示していく。母の死の健Tと悠平は泣けた。D貴はあれもこれもとやり過ぎてぼやけてしまったね。
D貴がときどきかっとんだいい目をする。それはきっと本人が顔芸をしていない時だと想うけど。引っ張り出してあげたいね。いい目。
前半最後はダンスバトル。ダンスの苦手意識を除き、スタイリッシュにダンスシーンを創っていきたい。しどろもどろだったので、曲を変え乍ら、ストップとソロのシーンを指示していく。少しさまになった。
後半は作品創り。今回はさまざまな事象、人の間のつなぎ目を外してみる試みの作品。本に書かれた言葉、感情、に辿り着くように必死でやっていたが、若さ故、やりっぱなしなむき出しな感じがそれはそれで良かった。
身体表現の「言葉」「音楽」と「身体」の共存がまだまだわかっていない。特に2曲目は身体表現をしながら夢語りという高等な要求だった。それでも必死に夢を語り続けた3人、爽快だった。時間一杯。細かいアドバイスはできなかったが、またどうぞ。心身が理解をしはじめるまで、まずは繰り返してみることだね。
作品、公開する。
★動画は身体表現部分。

『つなぎ目を無くしてみる試み』」
作・演出・選曲・音 森島、音製作 DubMasterX、出演 藤田悠平、松原大貴、山田健太 撮影 花

客電消える。
声。「観客席と僕(あたし)」「海と空」「地面と空」「あなたと僕(あた し)」「内側と外側」
声。「外せ」「壊せ」「縫い閉じろ」「混ぜろ」
明かり。人々、
空間を壊し始める。空間を壊すという試み。それは格闘技のよう な、破壊的行動と叫びである。 佇む。
辺りを見回す。
他者と目が合うと無言で空間を交換する。
繰り返す。
不自然に固まった場所でそれぞれ佇む。
「逃げるんじゃないよ」「逃 げちゃだめだよ」
静寂。
「逃避距離って知ってる?たとえば公園の鳩。穏やかなある日、公園の地面を目 指して 鳩が舞い降りてくる。確かにそこを目指して、鳩が舞い降りてくる。僕は(あた しは)鳩をぼんやりと眺めていて、 公園のベンチに座る。公園にベンチが3つあって、そのベンチには3組のカップ ルが座っている。僕はそのひとつのベンチの 僕のために用意されたであろう空間にお尻を載せて、そう、座る。カップルがい やな顔をして僕を(あたしを)見て、何か言い乍ら そこを離れた。僕(あたし)は空を見た。舞い降りる鳩、鳩、鳩。いつの間にか 公園の地面に鳩達が群れを成す。 そこは僕の場所だ。(あたしの場所だ)そこは僕の世界だ。そこは僕の空間だ。 そこは僕の宇宙だ。 僕は鳩達が歩くそこへ歩く/誰の場所でもないそこへ歩く。僕の(あたしの)足 があと1歩進んだ時、すべての鳩が飛ぶ。 そうだ、僕(あたし)から逃げるんだ。」 悄然と佇む。
歩き出す。
ドアを開ける。知らない女が悲鳴を上げる。笑う。
歩き出す。ドアをノックする。ドアチャイムを執拗に鳴らす。ドアが開く。笑う。
歩き出す。観客席に歩いていく。観客を抱きしめる。観客が席を立つ。
歩き出 す。舞台に戻る。
「観客が驚くんだ。僕のあなたが驚くんだ。何故だ。逃げるんじゃないよ。どう ぞあなたたちの、席に座ってください」
俳優たち笑う。声を立てて笑う。
身体表現。「僕はあなたであなたは僕で。つなぎ目外して僕は誰?」
使用曲 UK テクノ http://www.youtube.com/watch?v=Fwxxtw0vz9o
「僕は僕を放棄する」「あなたはあなたを放棄する」「空は海」「全宇宙の不在」 「全世界の不在」「すべての不在という存在」「真空の僕の不在」「真空の僕の 存在」 「関係性の倒壊」「ベルリンの壁の消滅」
佇む。
ゆらゆらと揺れる。
天井を見上げる。
「巨大な穴だ」
さらにゆらゆらと揺れながら歩き出す。
人々は向かい合い、ゆらゆらと揺れる。
「はじめまして」
「はじめまして」
「え?なぜ?」
「はじめはおわりでおわりは 宇宙」
「え?」
笑う。笑い転げる。
次第にイライラとイライラとしはじめる。
怒りが押さえ切れなくなると空間を激 しく打ち始める。
笑う。怒る。 叫ぶ。
「僕が僕であること」(「あたしがあたしであること」)「号令をやめて (くれ)」「僕の(あたしの)名前を呼ぶな」
暗転。
明かりが入るとドラムかんの中に人々。
顔を出す。
「穴に落ちた」
「自由が奪われた」
「おい(ねえ)おまえ、どうしてそんなものに入ってるの?」
「だよな。これ、何?」
「ドラム缶」
「だよな。出よう」
ドラム缶を倒し、あるいは飛び出る人々。
敵意。人々に敵意。
空を見る。「巨大な穴だ」
叫ぶ。「巨大な穴だ」「巨大な穴だ」「巨大な穴だ」
身体表現。「僕の存在という宇宙」 使用曲 Dub音
「名前」「年齢」「身長」「夢」
暗転。
「つなぎ目」
「君とオレのつなぎ目」
「あなたとあたしのつなぎ目」
明かり。
ゆっくりノックする人々。
クロス客電。
以上。またどうぞ。