2014/9/22
霧雨。刻々と秋深し。開かれた稽古場より帰宅する。今回は3名の参加者、見学1名。細かく確認しつつの訓練を組み立てていった。作品に入るまでに心の柔軟体操と身体と心の開放を訓練した。
今回はやり切ってみること、を実感して欲しかったので、表現していくことを指示した「歩く」動かす心は絶望する。まず心を動かすためにイメージをはっきり描いていくこと、そして今回は「歩く」中で声、身体をもって表現してみることとした。さらに、身体表現まで。参加者が少ないときは個々にアドバイスをすることができたので、詳細は各位で反芻しておくこと。心と身体がもっともっと繋がっていきたい。音との共存もさらに考えていきたい。また登場人物全体の接点も考えていきたい。悠平のまとまり過ぎが今回の課題で大分解消できたと想う。常に未知数であってほしいのだ。なおみはひとつのことを考えてしまうとそれだけになってしまうので、連動するまで繰り返して自由を手に入れてほしい。
次は「すれ違う」という課題。様式的にすれ違った人々が振り返る。
振り返ったところで関係性を創る。2つの物語が同時進行していく課題。虚実の皮膜を探るための訓練である。1人が去ると次の1人とすれ違う。振り返る。
関係を創るの繰り返し。総当たりまで。どうしても1つの話に寄ってしまうが、また挑戦してみよう。リアリズムによるシュールが心身で理解できていくよい課題だから。頭も心も柔軟になるよ。
はじめてやってみたが、感触はどうだったか、これが肝心なこと。
続いてダンスバトル。観客に見せるダンスシーンということ考えている。役者各位も空間、共存する他者と音への意識を持ったダンスを培うことだ。
今回はリズム感もそこそこある参加者だけだったので、それなりに。もっと華やかなショーにしていきたい。そのためには個々が役割を全うするだけではなく、共存意識を高めることだ。
Dubちゃんの音もプレイが際立ってしまわない「いい加減」のプレイと曲の長さ、全体の構成も考えてほしいなと想った。
ピタリとくるシーンになれば、観客も心地よいと想う。それを探っていきたい。
後半は過去作から感情のスイッチ、特に感情を抑えることが必要とされる、過去の記憶を封印して生きる人々の物語を作った。
まず最初のシーンでなおみが泣けないので、ガツンと言う。イメージができれば泣ける。そろそろ出来て欲しい。今回は複雑ではないきっかけがあるのだし、これで泣けないんじゃ駄目、ダメ。3回目で何とか泣けた程度。その後の感情の瞬間的な切り替えがぬるい。何かを演じなければならないと考えていては、いつまでも心が動かないのだ。できないことはない、心を動かすことだけをやっていけばいいのだから。悠平はよかった。身体表現の2曲は感じたままでよいものだったので、自然でよい表現になっていた。
マイケルも随分繊細な感覚を持てるようになり、それがこぼれるので心が動かされる。なおみは心を動かし、イメージをしっかりみていくことを達成してほしい。それができれば、身体表現も変わって行くよ。
再度の掲載になるが、作品を公開しておく。
★本日の動画はオープニングシーン。
『SENCE』 芝居屋・劇団羊のしっぽ
出演 マイケルリュー、やすいなおみ、藤田悠平
客電OUT
暗転の中 心臓の鼓動。あまり大きくなく流れていてほしい。
ぼんやりとじりじりと明かりIN
いくつもの四角い箱。静寂。箱の中に人々は5年、暮らしている。
お経。
母の死。葬式。線香の香り。お経を聴きながら、幼かったあの頃を想い出していく。
箱の人々は、感情をかみ殺さなければならない。追憶のみを淡々と続けている。
「小さい頃、父と母が言った言葉は、僕の未来に夢をくれ続けた。母はいつでも笑っている。父は母と僕の顔をぼんやりした顔で見ていた。僕はときどきあれ?と思ったのだけど、いつも僕は思考を止めた(やめた)。そうすることで家族のバランスを保っていることを知っていた し、母の僕を締めつけるような愛はうっとおしいものでしかなかったから。父がある日から居なくなった。ある日、あの日。僕は・・・・記憶なんても のは、身勝手なウソである。」
「ウソと知りながら、記憶を作り続ける。ウソにウソを塗り重ねて、古い写真は全部ウソだ。記憶のウソだ。」
「母が死んだ。皆が泣いている。僕も泣かなければならないのだ。またこれを記憶に加えていくために。」
泣く。哀しくて、やりきれなくて、苦しくて、泣く。
煙。匂い。肉が焦げる匂い。
箱が燃えている。熱い。使用曲皿ブライトマン、タイム・トゥ・セイ・グッ¬バイ
(つぶやくように)「火事だ」
(叫ぶ)「火事だ」
様式的に箱を突き破り、立つ。あたり一面、火の海となっている。身体が燃えていくのがわかる。
が、それは苦痛ではない。
他の人々に気づく。
苦しそうにもがく姿に見えてほしい。
「消えてしまえと、僕は思う。」
火の中の苦しみ、あがき、苦痛。身体表現。
「見てしまった」
父と母の激しい痴話げんかの態。殺意。母が父にクリスタルの花瓶を投げつける。花瓶が砕ける。破片を拾い、母が父の目を刺す。
父が息絶える。母がみている。振り返ると
あの時の僕がいる。反応。
平静に戻るまで。
「あの日から父は居なくなったのだ。」
歩き出す。ごく自然に街頭を歩けばよい。時折響く音。
音が響くと記憶が戻り、痙攣する。
「記憶はウソである。だからこそ、こうして生きていける」
笑う。笑い続けるうちに意識が混濁し、泣いていたい。
身体表現使用曲真夏の夜の夢。
感情が頂点に達する。呻き、あるいは悲鳴。
記憶の崩壊。人間の崩壊。
四方から追われる。追い込まれて、箱に閉じこめられていく。
「ほっとした。四方の壁、四方世界。僕しかいない。ここでは、、、、あの雑音さえなければ、僕はここで記憶を消していく。」
「あの日から父は居なくなった。そして、母は死んだ。僕は」
(老いた声で)「たぶん、87才になるはずだ」
「老いても老いても、記憶を作り続ける。もういやだ。」
静寂。
記憶を失っていく老人たち。
身体表現。忘却の果て。使用曲ショパン葬送行進曲
無表情になる。恍惚の顔。明かり映す。
暗転。
「あなたは一体何者なのか?」
静寂。
「誰だ。」
客電
以上。さらに精進しましょ。