2014/9/29
お天気も良く、気分も良かった一日。開かれた稽古場より帰宅する。企画書の宿題を終わらせて、一息。今回は新しい参加者、食事の席で経歴を質問されてざっくり話す予定が、想えばあれこれとやってきたあたしの経歴も面白い物だわと感慨深くなった。うどんを食べ乍ら、何とかまとめなければと話し続けて話し続けて。参加のダンサーくんと意外と共有できそうなニアミス環境もありで、ああ、あたしが一番やんちゃで苦労かけた時代の母を想い出した。やりたいことをすべて叶えてくれた父を思い出した。ありがとう。
さて稽古場は参加者3名。これがいい稽古で声は大きくなり、要求も高くなり、熱くなったな。あんたのやりたいことをやればいいじゃないの!とあたしの中のあたしが笑っていた。男優3名。見学1名。
まずは「歩く」深い哀しみ。初参加の哲也くんに心を動かして歩く事、肝心なのは想像していくこと、と話して開始、1分見ていたら「あ、この子踊り手だわ」とわかった。それこそ経歴も何も不問なので。笑。すぐに「身体で表現していいよ」と声を飛ばした。スイッチが入り、良くなった。今回は心を動かして、それを表現してみようと想っていたので、叶う。串間くんが良かったなあ。心と身体による表現が滑らかに繋がってきた。悠平もこじんまりを開いていきたいとこの数回想ってきたが、今回は吹っ切れた動きが増え良かった。哲也くんの空間の扱いが少し気になったのでアドバイスした。音のDubちゃんも後半音に敏感になってきて良かった。心と身体、表現者と音、明かり、すべてが分離しない表現は説得力がある。やっと目指していた点に近づく影が見えた。嬉しい。
声の扱いを探ってみたかったので、身体表現から声まで。最後の声も三人とも良かった。
続いて、修羅になる。哲也くんは言葉についてが創り込み過ぎで気になったが、身体描写になると俄然シャープで切れのある面が光る。この面を伸ばしてあげたらいいのかもしれないな。
串間くんの相手の逆なでや煽りがいつになく切れ味よかった。身体表現も格段進歩だ。悠平くんが一番まとめ過ぎるかもしれない。もっと爆発しても大丈夫だよ。
続いて、「すれ違う」様式からの二つの物語の課題。前回初挑戦してもらった課題だったので、面白かったが本筋がぼけたので、今回は説明を変えてみた。3組。二つの会話を同時に進める面白さが叶った。ただ、哲也くんのように整え過ぎても、悠平くんのように拒絶してしまっても整地され過ぎてつまらない。それぞれにアドバイスした。
前半最後はダンスバトル。Dubちゃんに音を繋いで貰っての魅せるダンスシーンの構築。まず、串間くんが踊れるようになってきて嬉しくハッピー。悠平、哲也くんは踊れるのだが、もっともっと開放していきたい。観たいのはテクニックではないと想うから。ただ、動ける人たちとの稽古は愉しいね。
後半は作品創り。今回は男優3名にはドンピシャリな新作。おっ、と想った。自由参加にしているので、尖り過ぎてもいけないなと無意識に意識が働く。でも、今回はいいや、書こうと想った作品。おそらく女優さんにはやりにくい本になったかもしれないから。
世の中にアンチテーゼを唱えるとき、それをどのように創っていくか、ということをお互いに課題として貰えたのではないか。あたしも終わり方で迷っていたが、役者さんたちの形にしてくれたものを観て、イメージがはっきりした。感謝。どのように、は役者の持ち味によっても違っていいのではないかとそれも応えとして貰った。そして、話した。
今回も作品と使用曲を公開しておく。
最後に相関図のワンシーン。久しぶりだったので、望んでいることをまたまた話す。つまり、そこには愛が見えたいということ。人間の嫌らしさ、嫉妬、妬み等もすべて愛に集約されたいという、あたしが拘る、あたしのロマンチシズム。今回は胸が熱くなり、よい感じ。終盤でそれぞれが失速してしまったのが惜しい。またやろう。つい時間が足りなくなるのよね、ごめんね。
以上。参加自由。いつでもどうぞ。
★今回の動画は台詞〜怒りの身体表現部分。

『柱時計の鳩が泣く、輪廻りんどん教えておくれ。』
作・演出・選曲 森島、音DubMasterX、出演 藤田悠平、串間保、哲也
撮影 花

客電。12分45秒〜使用曲スティビーワンダーSuoersutition
俳優達が登場し、練り歩く。観客席に手を振り、観客席に微笑み、コメディアスにお辞儀をする。
「みなさんようこそ」「今朝から降っていた雨も」「すっかり止んだね」
「よかったよ」「みなさんお元気ですか」「さあさあ日常忘れて」
「楽しんでください」「虚実ないまぜここはどこ?」
突然の暗闇。音楽断ち切られる。
「え?何?」「どうしたの?」「愉しくやろうよ」
「やめようよ、これ」
39分25秒使用曲 ハッスル 
明かり。
人々は誰でもない誰かになり、無表情に規則的に歩いている。
「僕が僕ではなくなる。僕が誰でもない誰かになる。僕の心に亀裂が入る。
ミシミシと割れる亀裂が僕を僕でない誰かにしていく。僕は僕の僕である僕をすっかり忘れて僕は僕の荒れた僕の居場所に向かっているのだ。わけわかんないよな。僕は夢を抱きし僕だった。かつての僕は。かつての僕はかつてという記憶の中で消えていった。僕はこうして打ちのめされ、記憶を混沌にねじまげられてしまった。おお、おれは何だ。あれは、誰だ?巨大な甲冑に埋もれた人々が今ここに突進してくる。激しく怯える僕はいつの間にかポケットから銃を出す。死への恐怖が、僕を殺戮のアドレナリン噴射が駆り立てていく。(叫び)」
天に向けて引き金を引く。
「こわいよ。おじいちゃん、このピストル、大きな音がしてこわいよ。」
「子供の頃の僕が唐突に言う。僕はうっとおしいと想うだけだ。あの頃の幻想をうっとおしく想うだけだ。歯には歯を目には目を。僕は僕の身を捧げる生け贄ではない。武器をとれ、武器をとれ。武器をとれ。あれは誰だ、あれは何だ。見上げた空には青空はない。空が大きく牙を剥いて僕を飲み込むために近づいてくる。キラキラとした星が無数に降る。僕の身体を溶かす星。僕の身体が歪む、歪む、歪む。」
身体表現。「とうりゃんせの世紀末に僕の身体が引き裂かれていくので」
使用曲 PSY  HANGOVER
「光輝く僕の人生」「光り輝く青い空」「キラキラと降る星のような凶器」
「わが祖国の空を覆う狂気」「僕の夢の墓標」「僕の夢の念仏」「僕の羽」
「壊れた時計」
暗転。
「ねえ、もうやめようよ」「愉しい物語にチェンジして」「せっかくの娯楽」
「明かり付けてよ」
明かり。怯える人々。
鳩時計が狂ったように鳴り続ける。
「おかあさん、時計が止まってるよ」
「おかあさん、鳩が出ないよ」
「おじいちゃんが大きな匣を抱えてきたんだ。おとうさんが白い家を建てたから。おじいちゃんが時間は家を守ると言った。時間を閉じ込めた鳩時計が、おじいちゃんからのお祝いだった。白い鳩が時間を告げた。白い鳩が僕の家族に幸せを告げた。白い鳩があの日、よろよろと飛び出してきて、止まった。時間も止まった。僕のおじいちゃんがまもなく死んだ。」
ドアを開ける。
「あ」
「白い家を建ててくれた父がぶら下がっていた。僕の目の前で僕の目の前で、父が重そうな音をたててどしん、どしん、どしん、堕ちた。おとうさんが(叫ぶ)」
「時計が鳴った。鳩時計の鳩が泣いた。振り絞るように泣いた。泣き続けた。僕も泣いた。どうしていいのかわからなかった。突然動き出した鳩。苦しそうに泣き叫ぶ鳩。白い鳩は真っ赤だったのだ。」
泣く。
「僕は泣いた。鳩も泣いた。鳩の喉から真っ赤な血が流れた。僕の心にまた大きなヒビが入った。おお、あれは何だ?あれは誰だ。暗い色の服、暗い顔の人々が僕に銃を向ける。僕は泣き叫んだ。僕はいやだ、僕はいやだ。僕はいやなんだ。」
「僕の身体が溶けて行く。僕の身体が腐って行く。僕の心が凍っていく。
僕は明日戦場にいくのだ。」
暗転。
明かり。誰でもない誰か、規則的に歩いている。
「たのしくやろうよ」「楽しんでください」「これはほんのひとときの」
「虚構の世界の夢の国」
人々が激しく怒る。
「拳を上げろ。銃を捨てろ。星クズを捨てろ。国を捨てろ。ごみクズになっていく人間を捨てろ。」
「僕が僕を捨てる。僕が怒りのアドレナリンをまき散らす。僕は怒る。僕は祖国に怒る。僕を戦場に追い出した祖国に拳を上げる。」
身体表現。「怒りをもて全世界全宇宙全人類を打ちのめすとき」
使用曲(カッコーの巣の上でより)
One Flew Over the Cuckoo's Nest
暗転。
客電