2015/02/09
開かれた稽古場より帰宅する。思いがけず参加があり、密度の高い稽古が叶った。ご機嫌よく食事、軽く赤ワイン。稽古場後の酒は久しぶり。演劇の話がたくさんできた。稽古場は男優2名の参加。見学1名。Dubちゃんも参加。男優2人だったので、考えていった流れであれこれの課題。
まず、身体表現。今回は裏切りからの懺悔。これはあたしも参加する。言葉を入れてみる試み。ただ、言葉が身体から漏れることを最小限にした。一緒にやっていたのだが、空気が動きいい空間だった。
続いては、作品への糸口としての課題を。「小さな裏切り大きな裏切り」
男優ふたりの心が丁寧に動いて、時に激しく揺れてとてもよかった。
次は「嵌る」宗教にはまった人々。面白かった。続いて「覚悟する」覚悟をした男2人の日常会話。から、最後に覚悟を放つ。「〜の男」を表現しようとしない2人はさりげなく、とても良かった。そして、「隠す」殺人を隠す。ある瞬間、相手の殺人に直感的に気付く。そして、責める。己の罪と動揺を隠すための攻撃はやがて己に跳ね返る。身体表現まで。心は予定しない方向へ揺らめき、動き、混線する。劇的だった。音が良かった。
後半は作品。一人芝居用の本。2人の男優による同時多発芝居として構築してみた。それぞれにアドバイス。繰り返すことで、埋まっていけば一人台詞に深みや葛藤が滲むようになるだろう。
本に数回ある「お互いを見合う」というシーン。実はこれはひとり芝居の無対象を活かした仕掛け。見合っていたのは、「誰か」ではなく、「もう1人の自分自身」であることがラストでわかる。
2回の身体表現についてのお願い。ラストの言葉へのお願い。
今後は新作も創るが、作品を繰り返して深める稽古もしたい。ここで取り組んだ作品が役者たちの財産になるくらいまで。
★本日の動画は作品の中より(台本記載と使用曲が違います。あしからず)
『あな たはだあれ?僕は誰?忘我忘却記憶のラビリンス』
作、演出 森島、音操作 DubMasterX、出演 串間保、松原大貴
客電落ちる。 明かりが入る。
人々が考え込んでいる。
お互いの顔を見合わせる。また考え込む。
吊るされた鳥かご。 近づく。
「おまえが鳴かなくなって、もう2ヶ月が過ぎた。2ヶ月?3ヶ月?1 年?三日?、、、、僕の中の時計の針が行きつ戻りつ、クルクル回って いるよ うな、あれ?この鳥かご、空っぽだ。」
振り返ると、1羽のオレンジの鳥が飛んでいる。目で追う。急旋回して空高く飛ぶ。
「まるで空の底を目指すように鳥は飛ぶ。鳥?鳥って何だっけ?え?おい、危な いぞ。その道、地獄へ向かう道!危ない?あぶらかたぶら真っ逆さま の、おま えどこゆく、天井抜けて。僕は、タラップを降りて、知らない国に降り立った。 あの夏、いつだ?」
佇む。
お互いに顔を見合わせる。 また考え込む。
「あ、、、」
身体表現。「蘇っていく記憶」使用曲 David Guetta - I Can Only Imagine ft. Chris Brown, Lil Wayne  https://www.youtube.com/watch?v=TSNerxNwWtU
言葉「僕はあの日から記憶をなくしていた。そう、あの日、あの日、あの瞬間、あの 思い、あの気持ち、あの瞬間、あの悪い夢。僕の、無くした記憶が蘇 る。今、 ゆっくりゆっくり蘇る。そう、あの日、あの時、あの瞬間。僕の脳みそが引きず り出されたあの日、あの瞬間、あの瞬間、長い長い瞬間。」
蘇った記憶に身をすくめる。記憶から逃げて、記憶に追い込まれる態。
ゆっくりと極めてゆっくりと立ち上がると激怒している。
「え?なんだ、それは。おまえの性根はどこまで腐っているんだ。僕を信じると 言い乍ら、僕をとことん疑っていたわけか。おい、おまえ、僕を笑った な。僕 の失敗だらけの人生を、おまえは笑ったな。僕は僕の過去を封じ込めて生きて来 た。僕はこの世に産まれてくる場所を、選べなかった。おとうさ ん、おかあさ ん、何ですか、それ。帰る家、僕の故郷、何ですか、それ。何ですか、それ。う るさいよ、おまえに、お前ごときに哀れみに充ちた目を向 けられるほど、僕は 落ちぶれてもいない。人生の抜け道をひたすら歩いて、纏った鎧をおまえなんか に、おまえのウソ八百の愛のはりぼての前に脱ぐこ とはない。絶対にない。僕 は、自信がある。僕が積み重ねた人生に自信がある。おい、オレの顔を見てく れ、頼むから、オレの顔をみてくれ。おい、お い、、、ああ、また笑ったね。 君はまた僕を笑ったね。僕が大切にしていることは、愛なんてくそくらえなもの じゃなく、僕自身、僕の人生、僕の満足 だけなんだ。 僕の目をみてごらん。僕の目をみてごらん。僕の、この目を、見てくれよ。」
激高し、泣き乍ら、ポケットから取り出したジャックナイフで女を滅多刺しにする。
刺しては眺め、
刺しては話しかけ、
刺しては叫び、
刺しては泣く。
身体表現。「愛する君へ、愛する僕へ」https://www.youtube.com/watch?v=E2LM3ZlcDnk 言葉。「やめてくれ」「哀れみ」「蔑み」「真綿の残酷」「空洞の愛」「肉の 罪」「やめてくれ」「赤くない血潮」「愛の歌」「欺瞞」 「その笑い」「その蔑み」「その哀れみ」「その残酷」
刺す、刺す、次第に言葉を無くして、感情を無くして、記憶を無くして、刺し続 ける。
「死んだね、おまえ。さようなら」
感情がわき上がる。号泣する。
「死んだね、おまえ。ざまあみろ」
「僕はまた記憶を無くした。記憶を封じ込めた。ここから逃げて、もう一度生き て行けばいいだけのこと。」
オレンジの鳥が飛ぶ。
目で悄然と追う。佇む。
お互いの顔を見合わせる。
佇む。
「エアーチケットの手配をする。そうそう、高飛びっていう鳥のように。」
徐々に徐々に記憶を無くしていく。
お互いに顔を見合わせる。
「おい」
「え?」
「おい」
激しく打ち震える。
「何を見たんだ」
「え?」
沈黙。
「何も」
「何も知らない」
安堵と笑い声。
「オレンジの鳥が空高く飛んでいく」
暗転。
客電。
以上。また重ねようね。