2008/08/04
緩い!!!

開かれた稽古場だった。雷がシャッターの外に響く。雷雨の中で嵐の中で芝居がやりたい。あたしは出雲の阿国に回帰したい。わくわく血が踊る。
夏には夏独特のリズムがある。それはわかる。しかし、少ない参加者だね。
師匠のところに弟子入りしたのは、夏だった。夏はバカンス気分だったあたしだが、来週から1週間毎日ワークショップをやるという。それに参加しなさい。と言われた。へ〜、厳しいものだな、と想った。遊びたい気持ちを抑えて、毎日稽古に通った。連日の暑さと緊張で、初心と呼ぶにふさわしい、忘れられない夏だ。気持ちが緩むと想い出す。
参加者5名、うち初参加1名。見学2名。少人数の時は、丁寧な稽古ができるので、ダメだしをしながら、何度も繰り返しながら、の稽古にする。
まず、イメージ、想像力のトレーニング。想像力を文字にするわけではない俳優は、それを観客に伝えるということを考えてほしい。まず、豊かな想像力を持つことから、表現すること、伝えること。一気に指示する。イメージを持って動く、それを声、音、言葉で表現する。N山さんの表情が動く。一旦止めて、それを言葉や声で表現することをアドバイスする。言葉で説明するのではない。わき出る声、言葉が欲しい。Yき、シーンを作り過ぎるのか、見えてくるものは想像力の産物ではなく、なぞったものにしかみえない。惜しい。Mこ
、やはり表面的だ。内面、イマジネーション。そして、発露。一度止め、アドバイス。少しずつ言葉、声になるが届いてこない。押し出しが足りないと想う。Eな、何も見えない。どこかで見た、あるいは頭で早わかりしたそれ風のことの連続でしかない。そんなことを繰り返しても、あなたの想像の世界は広がらない。観客席は素直で、そして厳しい。なめてはいけない。心を揺さぶるものを見せていきたいではないか?芝居に対して、真摯に向き合ってほしいのだ。
エチュード。ドア。ドアをあけるとそこに何かがある。リアリズムの訓練として何度もやってきた。これをあたしなりにアレンジしてみたい。ドアをあけた時に広がる世界を飛ばしてみてほしい。まず、全員同時に。舞台という空間の面白さだと想う。いつも登場人物は同じ時空間にいない。同一線上で、4つのドアが開く。という試み。ドアを開けて、広がる世界を各自がはっきり見ることからの訓練。なんだか不毛。もっと世界が広がらないかなぁ。Yきがよかったので、さらに
Yきの開けたドア、1枚にする。そこには砂漠が広がっていた。今度はその空間を共有し、さらにシーンをドライブさせるエチュードになる。
最初のドアを開けた時に、観客に確かなものとして、それを見せてあげるために。俳優がはっきりとしたイメージを見ることしかない。どこまではっきり、しっかり、細部までその風景が見えているか、しかない。何度か返すうちにYきのイメージがはっきりしてきた。表情も動きだし、とてもよくなった。さて、その後がいただけない。芝居はひとりで何かを主張してもだめなんだよ。
共有すること。相手役を受け、よく聴き、よく感じることだ。途中から参加のYじさんも加わるが、シーンが全然動かない。Mこの発想は面白い。面白いのだから、シーンをひっくり返す勢いがほしい。何が何でもシーンを成立させようという執念が全然足りない。精神論のようだが、必死に見る、聞く、動かすという気概だ。スローペース過ぎると想う。掴む、掴む、逃げても離さない。
2回連発してみるが、つまらなかった。
続いて、感情の訓練。今日は満たされた感情というこれまでの課題を少し変えてみる。誰かが愛おしくてたまらない。それは熱くて、切なくて、痛くて、苦しくて、満たされて、色っぽい感情となるだろう。もっともっとと煽り、出会い、演劇的に会話をし、もっともっとと煽り、もっともっとと。次第に感情が上がっていく。N山さんよかった。M子、糸がほどけてきたとき、あなたからはとても熱いものが見えた。狂おしいほど愛おしい、と、その感じまで。
出会って、貪り合い、抱き合い。あ〜。もっと。もっと。それぞれの感触を想い出してみてね。
深い哀しみ。深い深い哀しみ。泣き叫べとは言わない。けれど、哀しくなかった。こちらを巻き込むような、強い感情がほしいのに。感情を動かし、感情を見つけて、感情を持ち続けること。俳優はいろいろなことに心が動く感受性を持てなければならないと想うよ。見えてくるものに温度が足りないんだな。
Yじさん、初めての参加だが、今日は一番早く泣いた。けれど、それは累計的な泣き芝居だった。Yき、心が動き出すと止まらない俳優、あたしはそのYきが好き。今日はなんだかな〜。Eな、見えてくるものが冷たい。もっと熱いものを持っていないのかな。何でも頭で答えが出せるものではないよ。人は熱くて、ドロドロで、邪悪でいいんだよね。N山さん、いつもスイッチが入るのに、今日は散漫だった。Mこ、身体ではなく、心、心。そして、身体に零れればいい。とにかく、心。
エチュード。ドアを開けると「大事な人の死」
まず、全員同時に。発見の瞬間。そして、湧き上がる感情。これもあたしが求めているのは泣き叫ぶことではない。M子、首つりを見つける。発見はとてもよかった。その後が迷い過ぎ。感情がどんどん失速した。Eな、Yじさんは泣こうとする。そうではない、結果として、泣くのだから。のようなものはいらない。Yき、う〜ん、今日はなかなかスイッチがはいらん。だめよ。N山さんは丁寧でよかった。この俳優は心の襞が多くて、非常に好感。泥っぽい根性、活きてきたかもね。
N山さんを切り取る。他の俳優はそのシーンをドライブさせてみる。N山さん、身体がバラバラ、感情はとても見えるのでもったいない。止める。再度。言葉があたしにはとってつけたようにきこえる、止める。再度。
気持ちよくダメが通る。とてもよくなった。そこへ、他者が加わっていく。Mこ、激しい罵倒の言葉を投げつけるが、落ちてしまって届かない。止める。再度。さらに鋭利になりたかった。Eな、発想は面白い。けれど、関わるということができない。自分だけでやろうとしない。Yき、いきなり葬儀や。なるほどね。それなら、もっと役作りを楽しめばいいのに。なかなか加われないYじさんにYきが助け船。こういうことは大事だね。Yじさんは役を与えて貰えたことでなかなか面白かった。もっと成り切ろう。
いつのまにか男だったはずの「対象」が「犬」に変わる。面白いやら、なんやら。しばらくドライブさせてみたが、うむ、お笑い路線になっちゃった。だったら、もっと徹底して笑わせてほしかった。
発声。腹式呼吸の確認。とにかく、自主稽古をしてほしい。甘いです。
発声について、俳優としてアンカーのある各自の声を持ちたいのだ。声は誤魔化しがきかない。
ブリッジによる声の受け渡し。まだまだだね。
四股移動による声の増幅。息から声、身体。予想のたつものではない結果が出していきたい。見えている絵は非常に面白いが、声が弱すぎる。
続いて、エチュード、愛情表現。Yきに愛情を伝える。N山さん、色気が欲しい。叶えたい。Mこ、表情豊かでかわいくなってきた。Yじさん、照れと笑いが混ざり、見苦しい。ドンといってほしい。Eな、人と対峙していくこと、そこからの反応。まずはそこからだね。
次はYきが全員を口説く。これはYき、よかったね。いつものもじもじした表現ではなく、何様よ?の変身。やるなら、そうこなくっちゃね。爽快だった。
無事、全員口説かれたかな?(笑
そして、最後は恒例相関図。スタートの組み合わせを変えて、3連発。何とも割り切っている。クールなものだね。最近話していることだけれど、等身大の誰々という人として関わるから、本気になれない?でも、まずは真剣に
惚れてはじめなければ、このシーンは始まらないのね。
3連発とも未消化な感じ。Yきを追い込む勢い皆無だもん。Yきのウソっぽい「ごめんなさい」女優陣のうそっぱいなーなーで、つまらん。
稽古日記は、感じたことをそのまま書くので、きついけれど、しっかり自身を振り返って、また次に活かすことが一番大事。ダメだったなぁ、と想うだけではダメなのだね。
出来たことは保ち、さらに次を目指す。そんなこんなでグルグル昇る螺旋階段。
ファイトね。