2008/08/11
抜きんでるために、今、そしてこれから、何をしなければならないか

稽古から帰るとどんなに疲れを感じていても、朝までにその日の稽古日記を上げてきた。昨日も開かれた稽古場だった。稽古中にダメを出す時間は取っていけないので、俳優各位は常に稽古の後には、今日自分がどうだったか?と想い出すように、そしてひとつの課題を終えた後の、感触を自身で感じるようにと言ってきた。さらに、稽古日記で細部に渡り、再び稽古のダメだし、所感を書いてもきた。が、稽古の日記に参加者の足跡は付くが、それをさらに日常訓練しているのか?研究しているのか、はなはだ疑問である。それぞれに確実によくなってきているが、そんなところにあたしは甘んじたくない。昔に比べて、どうだ、こうだを言って、甘やかしたくない。上を見て、抜きんでて、いかなくてどうする。
誰だって誉められたことは嬉しい。だったら、誉められたことは確実に身につけていなければ、だめなのだ。稽古日記が上がらなくて、少しでも昨日の稽古を振り返ったか?
ダメだしを活かすも殺すも、貴方次第ってこと。ダメ出しを聞いたら、とっとと何とかするための日常訓練を始める、これ必然。
積み重ねしかない。積み重ねて、本物の俳優になってほしい。耳をそばだて、感覚を研ぎ澄まして、日々を送ってほしい。
それができないなら、俳優なんてとっととあきらめるべし。
参加者 8名、見学3名。
稽古のメニューも毎回毎回組み直している。これは、あたしの当然の義務だから。まず、リズムに乗って、スタイリッシュに歩く。あたしの稽古の基本は想像力と表現力だ。あたし言語をいくつも使うが、その言語の説明は繰り返している。そして、あたし自身も考え続ける。スタイリッシュとは?それぞれの俳優を魅力的に見せたい、己のスタイルを生み出してほしい。一つの言葉からの想像力だ。まず、気持ちを高め、いい気持ちになったところから稽古をはじめてみようとトライ。ここに来て、この曲がなった時だけやっていてもできっこない。時にはドレスアップして、街を闊歩してみろってんだ。
松本渉、これまで俳優として何をやってきたのかな、とまだ憎まれ口を投げておくが、この稽古場を開いてから、本番以外はコツコツと参加しているが、素晴らしい個を、もちろん俳優としての、確立してきた。ウォーキングからオーラが立つ。いくつもの点が一気に繋がってきた。こうなるとさらにこうしてみたら?と彼の魅力を引っ張り出したくなる。Yき、スタイルはいい。恵まれた体躯にさらにリズムと個性が欲しい。Mこ、もうダンサーの線引きはやめてみている。以前にアドバイスしたことが全部抜けているよ。想い出して。得意なことだけでは何も産まれてこないね。N山さん、ときどきゼンマイ仕掛けにようになる以外はよかった。さらにスムーズに。気分で、ゼロか100かはだめだね。Kさわくん、表情が決まってきた。表情から照れが消えてきた。が、リズムに乗れていない。リズムに合わせることではない。高揚し、乗ればいい。Eな、遅刻。遅刻は厳禁。加わる。やりながら、前に言われたことを慌てて想い出す。それではいつまでも身に付かないね。視線、首、アドバイスはしてきた。まとめてくるのは当たり前。ウオーキング終了でストップ。そこから、シーンを作る。演劇的モチベーションの後にどんな言葉が零れるか?それぞれから言葉が飛び出す。はっきりしたものはないが、面白かった。Hでも加わり、3連発。Hでは自由になれる。それはいいね。
イメージの訓練。一直線に並んだところから、イメージに引っぱられる。イメージをはっきりみて、さらに伝えること。イメージを強く持つこと、それを追うこと、そして、さらに表現すること。心に何もないもの、イメージの何もないものよりも、イメージを持つことから立ち上がる火柱はかならずある。しかし、それを観客席の伝えなければならないということ。Yき、まず見ようとするものがある。それははっきりわかる。しかし、それは静止画のよう。蠢いたり、動いたり、動くイメージになるといい。Mこ、心に見えているものがある。それは身体にも表情にも溢れる。それをもっと表に見せてほしい。大袈裟な身振り、手振りではない。ということは、そのイメージを強くすることか?
Hで、言葉で説明する。言葉を取り上げる。心にイメージをみること。Kさわくん、イメージをもっとはっきりかな。しっかり見ようとしているが、いかんせん弱い。好奇心をもっと持つ。Eな、誰よりも早く動き出すが、そこには何もない。こちらにはお見通し。いつまで見栄を張るのかな?Mもと、とてもいい。イメージをいつまでも追い続けることができるので、眼が奪われていく。
N山さん、イメージを集中してみようとしているので、今日はその一生懸命さのみ。それは日常でやってきてほしい。その先の劇的なものを探しているので。Kたろうくん、素直にイメージを追い始めた。いい感触。
同時進行でイメージのドア。シーンとして成立させたい。まだまだ。
Mもとのドアを切り取り、シーン作り。Yきの刺激的な場面展開、面白い。
N山さんの入り方、いい。しかし、あまりにアイディアのみなので、止める。再度。まず、観客を巻き込み、信じさせるリアリズムが欲しい。それは、何か。俳優が信じること、イメージに己を入れることだ。
そして、雑な表現では醒めてしまう。身体のリアリズム。会話のリアリズム。
Mもとに必死さがもっと欲しかった。Eな、それを言ってしまったら、すべて現実になってしまう。暗幕をいかに暗闇に見せるか、それがあたしたちの仕事だ。他の俳優も「やっちまった」と想っただろう。シーンは続いたが、失速だ。
続いて、感情の訓練。感情をその場で持つことの訓練。まず、強い怒り、憤怒。最近それぞれに感情が持てるようになってきた。さらにはっきり。強く。持ち続けて。変化して。声で煽り、上がっていく。動きにも変化が見えてきた。仕組まれない緩急・静止。うん、そういうことだ。Mもとから声が出る。Yきから声が出る。息使いが変わる。もっともっと、火柱を立てるんだ。
手で、他者と演劇的に会話する。これはその感情をストレートにぶつけることだと想うな。台本を描くことではないのよ!なかなかよかった。それぞれの感情が強くなってきた結果。
さらに、諦め。今日は感情の連鎖を体感してほしいと考えた流れ。
自然に表情が変わる。空気が変わる。けれど、Yき、Hでは表面的というのか、感情のようなもの。表現として、それはありなのか?あたしはやはりその感情を持ってほしいのだ。Eな、感情をいつも失速させたり、投げ出したりしてきたのではないか?笑いも涙もひといろにしかみえない。厳しいけど。
Kたろうくん、俄然集中してきた。いいことだ。Kさわくん、確実にどの感情も持つ。素直。次はもっと強く、深く。俳優だよね?その先の階段に足をかけてくれ。N山さん、心を大事にしているが、もっと強く、はっきりなのだな。
Mもと、感情の袋を増やしてほしい。得意な感情と苦手な感情、これは克服してしまった方がいい。
感情の連鎖。深い悲しみ。やりきれない悲しみ。絶望でもいい。う〜ん、煮え切らない。ものすごく安っぽい、冷たい人たちに見えた。
その感情を声にする。Mもとの声のみ。感情の声、渦巻く感情の声が目標なのだけど。
続いて、感情のエチュード。訃報を聞く。その反応。
Yき、よかった。しかし、余計な動作がゼロにする。再度。今度はさっきの感情をなぞる。うまくいかなかった。
N山さん、これとてもよかった。ほんとによかった。泣けた。
Mこ、わからない。見えない。再度。よくみるとわかる揺れ。堅い。
Kさわくん、いいね。表情の自然な変化。こういうリアリズムを積み重ねることだよ。
Kたろうくん、少しずつ余計なことをしなくなっている。いいこと。けれど、照れや迷いが見えすぎる。
Eな、眼が動かない。それは違う。心、心、心。
Mもと、よかったが、切り替わりがもう少し見えたい。見え方、を考えるべし。
全員同時に。間合いの稽古。Eなが激しくずれる。芝居はつねに共演者との共存である。自己顕示はいらない。シーンのそれぞれの責任感ってことかな。
その「瞬間」が演劇的である。
発声。四股による声の増幅。身体も。息から。息から声への移行。Hで、息がよかった。増幅した声がしょぼい。もっともっと。全然だめ。
エチュード。喧嘩。YきVSKたろうくん Kたろうくんが引かなかった。はじめてのこと。そこから。
KたろうVSN山さん もっとぶつかれ。N山さん、もっと弾けてみて。
M子VSHで。 3連発。Mこのぶつかりが持続しない。あと一息。Hで、ぶつかる。手を考えているのが見えると醒める。感情を追う。
MもとVSひD よかった。
KさわVSHで 変化していくぶつかりあいがよかった。このふたり、いいんだよね。
HでVSEな 感情のぶつかりあいは暴力ではないね。
身体表現。身体を楽器にする。身体と俳優の意識と音の融合。他者との連動。
声は身体の一部である。無音のある音。俳優自身の中にリズムを作り出せばいい。無音は、音だぜよ。
無音は音。しつこいけど。そこをわかってほしい。ストップ、の音待ちはノーサンキュー!今日はしつこくお願いしたお陰、他者との連動が少し見えた。
Mもと、意識も表現もブラボー!Hで、ずっと探っていて、最後のすこしトランス状態に入りかけた。次は連動していくように。Yきも世界が築けつつある。陶酔してみてはどうかな?忘我。Kたろうくん、いい表情していた。
Mこ、どうした!もっとやれてくれ。Kさわくん、筋肉を意識し、動かすこと
身体表現を考えてきて。BGMではない。
Eな、没頭すること。それだけ。その壁も越えなくちゃね。
障害者、泥酔。エチュード。人間観察。とにかく人間観察が足りない。めくらで日々を生きないで。観察し、表現することを徹底しないものは揶揄になる。
真摯に向き合うべき。泥酔。あまりに当てぶりレベル。止める。酒乱。ハンパ。暴れてみる。酔ってみる。観察でも経験でもいい。研究してくること。
Yき、Mもと、少しよくなった。Mこも大胆でいい。もっと繊細に正確に。
そう、ドラマを持って。
愛情表現。Mもと、Mこ。正対し、秋波を感じたら、抱き合う。さぐり合いが見えた。熱いものにMもととMこは欠ける。
続いて、恒例相関図。今日のように人数の多いときこそ、各自が丁寧に感情を追ってほしい。そして、今日はシーンへの加わり方もさらに追加。表現として、ということを常に考えていきたい。
連発。Kさわくんは、入り方が影になりすぎる。追っている、見えている感情は素敵なのに。Mコ、表情が動いていい。Mもと、だんだん所在がなくなってしまった。Yき、裏ドラマン、却下。なんだろうな、病的な独占欲、嫉妬。あたしは好きなのよね。Hで、今日は妙にやけっぱちでキュートだった。女性不信にならないで。(笑)Eな、う〜ん、愛情表現って何だと思う?愛とか嫉妬とか、理屈じゃないと想うよ。Kたろうくん、熱いものが見えない。
というわけで、稽古日記を遅らせてみた。大した効果はないと想うけど。
稽古場で感じたこと、言われたこと、稽古日記に書いたこと、活かしてくれ。
うかうかしていられない。本物になるんだから。疾走するのだ。