2008/10/07
存在感のある俳優として


ちょいと諸々立て込んできて、細々とスケジュール調整やら郵送準備やら。昨日の稽古日記がなかなか書けない一日だった。さて、書くぞ。
開かれた稽古場。参加者5名。舞台監督が防音作業にきてくれたため、音響さんも稽古と同時進行で作業をしてくれた。なので、見学はなし。
本公演もそろそろ念頭におきながら、実際に舞台で活かしていくための技を身につけることとあたしが惚れ込んでいる俳優たちの魅力をさらに高めたいと想うのだ。個体としてのそれぞれでありたい。存在感のある俳優であってほしい。
まず、アクティングエリアに登場し、佇む。そこに居るという訓練から。シャッター前から一人ずつ登場し、佇む。Sげ田くん、余計なものが取れてきた。ルックスもいいし、なかなか。Mもと、俳優としての正面への意識が強すぎる。身体も自然体で、歩けるようになりたい。佇みは素敵。Kさわくん、なかなか堂々としてきた。初心者も経験値もない。存在感があればそれでいい。妙ないじけたものは捨てろ。N山さん、歩きが不自然。何度も自主稽古すること。日常で歩きを意識してみること。Yき、存在感はある。さらに得体の知れないものになってほしい。さらに、佇み、しばしの静寂。それぞれが言葉を飛ばす。さらに、佇み、しばしの静寂。他者の言葉からインスパイアされる。
繰り返してきた言葉の即興。それぞれの個性や主張が見え始めた。もっと強いものを持ちたい。影響しあうこと、反応、かなりできてきた。面白い。さらに、エリアを変えて、リアルではない距離感を付ける。リアルな距離感を打ち破る体感。Mもと、Yきはやはり思い切りがいい。演劇的に距離を縮めていける。Kさわくん、近づけない。入り込むこと。N山さん、なかなかな切り込み。Sげ田くん、いい。さらに言葉を発する。不自然な距離と形態に、アングラ風の嘘っぽさになる。そうではない。これができたら、最高に面白い。
歩く。イメージを持って歩く。イメージに突き動かされる。見えてくるものがまだまだ弱い。心にイメージを強く持つ、細部を追う、説明的な動きは必要ない。もっと強い、連続したイメージを持てるようになってほしい。イメージを追っているという説明的演技は一切いらない。想像力より高く飛べる鳥はいない。それしかない。イメージが足りない。日常を離れてみることを望む。あたしは日常的なイメージはつまらない。
続いて、感情の訓練。まず深い悲しみ。感情を持つ。歩く。指定した位置まで進む。その感情で振り返る。これも具体的なことを思い、見る、嗅ぐ、聴く、感じる。Yき、感情が上がり、下がり。上げていってほしい。Mもと、もっとつきつめて、もっと掘ってほしいんだ。Kさわくん、感情のスイッチはすぐに入るようになった。次はそれを抱え、持続させること。その先には、まだまだ動く感情があるのだから。N山さん、感情のスイッチをしっかり入れる事。Sげたくん、これはうまくいかなかった。頭が働いたのか?
さらに、その感情のまま、前進する。佇む。泣く。泣きが泣ききれない。涙を流したい、確実に。それぞれにいい瞬間はあるが、失速してしまう。Mもと、持っている感情と表情のバランスがずれている気がする。表に表現することを少し遠ざけてみてもいいかもしれない。
実感の訓練。想像力による実感。火の中を歩く。まず全員が火事の想像か。あたしの求めるものとは違うが、まずはそこから。しかし、さらに追求してほしい。
さらに、シャッター前から火の中を実感しながら前進する。Mもとが余計なことをのぞき、実感で進もうとしてよい。他の俳優は先ほどの延長線上。
実感をしながら、まっすぐ歩くとさらに。熱い火の中を歩く人々が見えたい。大げさな身振りは火を小さくしてしまう。
Yき、またもや何かを考えていて、前に進まない。そこは歩いてほしいのだよね。何をやりたいのかわからない。実感してほしい。ただ、それだけ。難しい演出はしなくてよい。
合図で、手足頭がもがれていくという即興。Sけ田くんがとてもよい。Mもと、表現することより実感がほしい。Yき、何をやりたいのかわからん。何かを考えているのだが、ひとりよがり。N山さん、劇画的。実感がない。経験だけでは補えないものがある。それは痛みや熱さや恐怖や感触を想像するのだ。Kさわくん、実感を追う根性、よし。もっと深く。
手足頭がもがれ、胴体だけが転がるところまで。いいシーンになった。手。
胴体からの遊体離脱。イマジネーションの即興。言葉を発してみる。実際はないはずの手足頭が見えなかった。日常から離れたところに飛んでほしいんだけどね。
身体への意識をして、続いて身体障害者。これは何度やっても中途半端。体の自由が利かないことを極めてみないと、気持ち悪いのだ。暗闇、手足を縛る、なんでも自主稽古はできるよ。真摯な目で観察も結構だと想う。
中途半端はダメ。
感情の訓練。憤慨。何に対しての憤慨なのか?各自、もっと具体的に。声、動き、変化が出るまでに。再び、シャッター前から憤慨の感情で登場し、佇む。Mもとの怒りが嘆き、や悲しみに変わってしまう。感情の変化としてはわかるが、見えるものが違う。Sげ田くん、また頭が働く。一瞬、非常にいい表情をした。この一瞬を膨らませるべきだね。Yき、何かをやりたいらしいが、わからん。憤慨してくれればいいのだ。N山さん、表面に出そうとする意識が強すぎる。感情、心。わかってほしい。Kさわくん、持続しない。感情がまだまだ弱い。
声の増殖。おばけのようなすごいものにしたい。まず、息使いから訓練。息を聴こえる息にすること。アドバイス。これも自主稽古して下さい。
四股で声の増殖。息から。皆、表情、体の動き、声と伴い、よくなった。N山さんの声が弱い。いや、声はみんなまだ弱い。Kさわくん、表情が硬い。表情筋を意識して動かす。口を自由に動かす。声をもっと前に、遠くへ押し出す。
身体表現。音に身体を融合させる訓練。今日の音はメロディラインがあり、タンタンとしていたので、皆の動きも滞り気味。Mもとにも難しいようだった。
あたし自身も動きにくかったが。Kさわくん、N山さんは身体の自由度が足りない。筋肉各部への意識をアドバイスする。Yきがよかった。表情を創りすぎないようにね。Sげ田くん、今日はいまいち乗り切れず。
エチュード。決別の瞬間。Sげ田くん、雑だがまあまあ。Yき、2本。最初は落差を創り過ぎ、不自然。2つの言葉はとてもよかった。次は気持ちの動きはよかった。が、言葉がふたつともなくなってしまい、残念。
Mもと、よかった。しかし、もっとみっともないものも見せてよ。Kさわくん、いいのだが、こじんまり。かっこつけない。相手の声が聴こえない。
N山さん、印象として軽い。もっと打ちのめされてみてほしい。
首つりを発見する。大事な人の首つり。全員で。死体の位置を決める。
発見の瞬間、息、声。まだまだ。こちらの背筋を凍らせるためには、涙を誘うためには実感が足りない。死が軽い印象、まだまだ。
やくざの組事務所、即興。なり切る事。面白かったね。賭場。なかなか。手入れの反応は面白かったが、後がグダグダ。止める。歩き方とか目とか、もっと探求してみたら?
Sげ田くん、N山さんで愛情表現。熱いものがほしいのよ、N山さん。小慣れたものはいらないな。
引き続き、恒例相関図。女の部屋に次々に男の即興。そうね、殺気立つものがほしい。そこは信じている、愛している女の部屋。あたしなら、発狂するけどな。みんな、割り切りちゃんなのか?あまりに平和主義なシーンで、あたしは好きじゃなかった。
以上。
俳優それぞれは魅力的であってほしい。あたしの考えは役よりも俳優自身なのだ。
目指せ、本物、目指せ、オリジナリティ。目指せ、存在感。
俳優諸氏、日常訓練はあなたを邪魔しません。自由に稽古にきてほしい。
あなたの魅力、かならず惹きだしますよ。