2008/10/13
何かをしようとするのではなく、心と身体を漂わせるだけでいい


開かれた稽古場。参加者6名、見学3名。
芝居は観客席とともに在る。観客席の心を動かしたい。そのためには、俳優自身は自由に舞台を動き、心を動かし、在らねばならない。
今日は、俳優の生理を考えて、流れを考えてみた。無数にあるスイッチを入れやすいように稽古を組み立ててみた。それは、俳優であるあたしの生理なので、あしからず。
歩く。何も考えずにではない。何かを考えていていいのだ。それは、それぞれの雰囲気を作り出す。歩き方に正解なんてない。息をして、歩く。どう見えているかも考えて、それぞれのらしさにつなげてほしい。
ここにくるメンバーは、皆魅力的だ。それぞれの魅力を俳優として魅力にしたい。何かをするときに、心をいつも動かしてほしい。
続いて、強い怒りをもつ。怒りを心にもつことで、息遣いが変わり、表情が変わり、歩き方が変わってくる。N山さん、K太郎くんの気の散り方が気になる。どう見えているかではない、心だ。何かをしようとしても、心は空になるだけだ。久しぶりのNちゃん、心が動くのを静かに待つ時間がある。それはいいけれど、拍車をかけてほしいと想う。心が動きはじめてからの表情も動きの変化もいい。が、やや技巧的にも見えてしまう。もっと自由に心が動く人のはず。Kさわくん、素直で本当にいい。
これから身につけるべき、知識も経験も必要。こじんまりとまとまらないためには、好奇心しかない。U杉くん、キャラクターが強いのだが、こころが硬い。心があふれなければ、キャラクターだけでは無理。Mモト、感情を表面に表そうとしているように見える。中に抱える感情をさらに強くしてほしい。
強い怒りをもったまま、シャッター前に歩く。振り向いたところから、アクティングエリアに登場し、佇む。
Kさわくん、N山さん、K太郎くん何かをしようとする。出は、誰でも意識が変わるものだ。しかし、それをさりげなく登場できるところまでいきたい。開かれた草原にあらわれるように。
U杉くんは逆に緊張感が足りない。それは俳優としての意識ということだ。Mもと、やはり正面への意識が身についてしまっている。自然に出てきたい。Nちゃん、これだけの経験値があっても、まだ固い。さらにふらりと登場して、そこの佇めるようになりたいね。
再度。次は、言葉を連動させてみる。相手役の言葉を聴く。スピードが一定でつまらない。聞く。何かを準備して言うことではない。
静寂を恐れている。静寂は物語を紡ぐのに。
言葉を発するときには、心も動くし、頭も言葉を捜すはず。自由になりたい。重ねていきたいイメージが小さくなっていくのは、殻が固いからだ。優等生意識が強すぎては、俳優になんてなれないさ。
相手役を見ないで、飛ばす言葉、その距離感、そんなところも身につけたい。
続いて、登場し、観客席を煽る。観客席は人間の、感情のるつぼだ。そこを煽っていく。覚悟が足りない。視線、居ずまい、言葉、もっと丁寧に。
登場、佇み、破壊まで。どんどん壊れてみる。壊れてみれば、見えてくるものがある。Mもと、かなりいい。まだ入り込んで壊してほしい。Nちゃん、もっと壊してみたい。Kさわくん、いい。N山さん、表面的なんだな。表情は作るのではない。結果として、表情がみえるのだ。表面的なことはきらい。K太郎くん、壊れようとはしている。しかし、立ち戻る。いいじゃないの、恥ずかしいとかなしにしてよ。かっこ悪いことはかっこいいのだよ。U杉くん、戸惑い、迷う。叫んでも、どう動いてもいい。やる。
続いて、泥酔。それぞれによくなってはいる。ここで追求していきたいのは、酔いのリアリズムだ。Nちゃん、酔いを感じている。次は言葉、動きを加算してみてほしい。Mもと、繋げて稽古をすると自身でポジションを変えていくことができない。次はそういう点、探ってほしい。たとえば、くず折れたところから次の課題に移るとくず折れたままの進行に終わってしまう。K太郎くん、N山さん、言葉のふたりだ。言葉をいくら重ねても、見えてこない。U杉くん、これは実感が伴うらしい。よかった。
極めて特技にしたらいい。Kさわくん、やろうとしていることと見えているもの、酔った人はぐにゃぐにゃにはならないよ。しっかりしようとするのが酔っている人の意識だから。しっかりしようとするけれど、ふらつく、ぶつかる。これがリアリズム。観察が足りない。経験が足りない。酔ったときは「大丈夫」と言いながら、次の瞬間に転んだりね。
そのまま、火の中。今日は最初に説明を加えた。火事ではない。自身が火の中に放り込まれるエチュード。Nちゃん、Mもと、Kさわくん、とてもよかった。まず見たいのは地獄絵図。ほかの俳優は実感が足りない。実感ったって、こんな課題は想像力よ。
たとえば、熱いはずの火が気持ちよくてもいいのが、想像力。いいものをみたい。
続いて、首吊り死体の発見。反応。Nちゃん、首をあげて、もう少し早く見えるようになりたい。うそをやるまいという気概はいいが、その時間軸が死に間に見えてもったいない。見えてからは、スローモーションのようで、感動。Mもと、欲を言えば、瞬間、瞬間で反応できてほしい。瞬間がまだまだ弱い。Kさわくん、感受性の豊かさが見える。いい。U杉くん、心の動きがまったく見えない。おそらく、心の中の心というものがあるのだろうな。その外側まで動かしてちょうだい。
再度。叫び、声を指定。どこでもいいから、声がほしいと指示する。
Nちゃん、ますますよくなった。声は重要とあたしも知る。声は声、言葉で説明したU杉くん、彼の言葉を心にほしいと話す。声を出すことで感じたこと、こちらに見えたもの。声のあとの心の動きがあれば成功。
そのまま、感情の訓練。深い悲しみ。深い悲しみが身体に見えたい。身体で何かをするのではない、心が身体ににじみ出る。そういうものがほしい。深い悲しみを泣きに繋げたいが、繋がらない。ううううう。
シャッター前に歩く。その感情のまま、エリアに登場し、佇む。全員が強い感情を持ってくれなければ、成立しない。できないと想った瞬間にシーンは死ぬ。怖いと想え。
芝居はどのシーンもそれぞれが責任を果たさなければだめなのだ。
次へも繋がっていかなくなる。観客席の心も冷める。心してほしい。
続いて身体表現。音を身体に取り込む訓練。踊るのではない、身体と音を融合させていく。真空状態になる。これを続けてきてよかった。結果ができ始めた。振り付け、ダンスではない、自由に動く身体、筋肉、心があたしの求めるもの。Mもと、秀逸。Kさわくん、秀逸。Nちゃん、久しぶりだったためか乗りはじめるまでに時間がかかる。惜しい。U杉くん、意外に頭が働く。自由に音に交じればいい。N山さん、Kたろうくん、ここにい続けることがだめ。飛んで下さい。
シーン作り。やくざ事務所。人間観察と役作り。
1本目。緊張感なく、どこかで見たVシネごっこ。止める。
2本目。はあ、Mもと、巧くなったな。U杉くん、緊張感あり、とてもよかった。N山さん、相手役を感じなすぎ。舞台は手柄をあげるところではないんだよな。K太郎くん、シーンを作るということは相手役を感じること、しゃべり続けることではない。しかし、松本の「だまっとらんかい」でシーンは素敵に動いた。Kさわくん、Nちゃん、加わらず。いいシーンだったので、終える。入らなかったおふたり、また次回。
舞台上で空気が動く瞬間、大好きだ。今日はいい瞬間を見ることができた。さらに綿密に創りたい。
台詞。奴碑訓by寺山修司より。まず、言葉を読む訓練。ダリア Nちゃん、N山さん。ほかの俳優下男。同時に。各自、言葉、シーンのイメージを探れたか?
Nちゃん、ダリア。Mもと、Kさわくん、U杉くん、K太郎くん下男。Nちゃんさすがでんな。やっとダリアが見えた。下男たちも群衆劇にしてしまったが、効果大。誰も気を抜かず、やっと台詞の稽古ではなく、シーンの稽古になれた。ダリア、今度は癖がほしいです、よろしく。ダリアは綺麗な人じゃないていい。女中であり、女主人役だという点、留意くだされ。
恒例相関図。N山さんとそれぞれの相関図。それぞれの裏切りへのなさけなさ、執着、愛情、嫉妬、あきらめ等々見えたい。
U杉くん、いいんだよな。素直で愛すべき。N山さん、俳優それぞれに勝手な色を塗りすぎ。相手役ののりしろを減らしてはだめだ。
途中、遅れてきた見学者のため、再度。
緊迫した空気ができていかない。2回ともNちゃんという存在が不可解。
なんだかつまらなかったな。Nちゃんは別格なんですか?おかしいよ。
稽古場に力関係なんてありません、先輩後輩なんてありません。それぞれがぶつかりあう稽古でなくちゃ、誰にもプラスにならんよ。
最後は発声。
四股による声の増殖。息から声。ぜんぜんだめ。
以上。
よくなり、戻り、また昇り、
いい俳優になって下さい。
あたしは、稽古が大好きです。誰かがいい瞬間を見せてくれるのを毎回楽しみにしています。
頼みますよ、皆さん。