2008/11/17
想像して想像して想像して感じて感じて感じて、極限までいきたい。それからまた想像して想像して想像して想像して、感じる


想像力と言葉にしても、なかなか伝わらない。右脳が「そうぞうりょく」と打ち始める。これでは、どこまでいっても想像の世界は見えやしない。
そう想い始めて、やっと課題を作り上げる事ができた。
開かれた稽古場。参加者8名。見学1名。復活組、はじめての方もありの稽古場になった。
そこにいること、そこにいるだけで宇宙が見える俳優になりたい。想像力で満たされて溢れる俳優でありたい。
心と身体を極めて極めて追い込んでみる。今回は一連でそういう稽古を組んだ。
まず、アクティングエリア、観客の目への意識。どこから見られても耐えうる宇宙。シャッター前からアクティングエリアに登場し、そこにいる課題。俳優としての個性。正解のない宇宙。俳優自身が宇宙を抱えて、そこにいることができるかどうか、それしかない。余計な自意識は断ち切る。何度も繰り返しているうちに小さな宇宙は育って来ている。Mもと、Yき、Kさわくん。しかし、全体から息が聴こえない。呼吸することはとても大事。呼吸は鼓動だ。鼓動が観客に伝わるのだ。Mき、心は微動しているのだが、凍る。無表情になっていく。Mなさん、キョロキョロと目が動く。これはいらない自意識だ。S田くん、心がまだ動いていない。身体のあらゆる箇所に緊張が残り続ける。U杉くん、カメラの前で息を止めている印象。心が動いていない。心が動いたときには表情も変化する。大げさなことは一切いらない。
繰り返す。息を意識する。息を聴く。息に意識を向けて、息を感じる。自身の鼓動を感じるという試み。
諦めとか悲しみとか、感情を動かす。感情は感情が動いていくうちに感情が変化していく。これまでのはっきりした感情の指定を今日からすこしあやふやにしてみる。感情の変化、つまり感情はどこかで留まらないということを感じてもらう試み。自身の中で感情が動き、変化していくこと、それが肝心要。
そのまま指定した場所に歩く。その感情のまま、アクティングエリアにいる。ただ、心を動かして、立つ。さらに手を入れ、その感情のまま、言葉を発してみる。感情が言葉につながっていくとき、そこには用意されない言葉が溢れ始める。そこへいきたい。と、Mきが澱みなくつらつらとしゃべり続ける。息つぎも考える間も一切ないもの。とても気に入る。聞き入る。Mきだけを切り取り、他の俳優がその言葉をきいて、自身の中にその言葉や言葉から想像されるなにかが生まれたら、動きだし、そのアクティングエリアに共存していく試み。Mきの言葉は途切れることなく続く。まるでからくり人形のように見えた。自動言葉製造人形のように。Mきの表情、心は動いているのか?と哀しいものを感じる。しかし、そこにMきは存在る。それぞれが加わってくる。周りの気配とか音とか、聞けている皮膚感覚と感覚と。そこがポイントなのだね。
少しずつ反応できる者とやはり自身の世界に埋没するもの。向かい合って言葉を交わさなくても、そこに伝わるものはある。それが実現したいのだ。
N山さん、U杉くんは自身の世界を強引に作る。が、N山さんがMきの言葉に反応した。それだ。Kさわくん、強い声が出る。それだ。S田くん、何かを共有しているいい瞬間、そして醒める瞬間。迷うな。Mもと、もっともっと皮膚を感覚をソバ立ててほしい。何かを起こしていかなくてもいい。Yき、つぶやく。つぶやく。Mなさん、戸惑いと迷いしかみえない。連続して、破壊。壊れていく。もっと壊せ、壊していけ、壊して、壊して、壊して、見えてくるものを掴んでほしい。壊れる表現ではなく、壊れてほしい。繰り返してきたYきのある表現が瞬間できた。ぞくっとした。それを捕まえればいい。のに、また何かをしはじめてしまった。ひとつのことを極める事、それが大事。たくさんの手を見せてくれなくてもそれは充分もつ。真実であること。それしかない。真実を補えば、嘘に風化してしまう。これでもか、これでもかと伝えなくても、太く強い「何か」がそこにあればいいのだ。そうすれば、かならず伝わる。
Mもと、内面を壊していくことに軌道修正していた。そうだ。N山さん、まだまだ技巧的。まず、壊れる。そして、身体が動く。それを掴めばいい。掴んだものは技巧にできる。Mなさん、壊れていることを形にするのではない。S田くん、いいのだけれど、途切れる。死守。壊して、壊して、壊して。U杉くん、だんだん壊れそうにはなる。持続しない。考えても絶対できない。
Mき、壊れそうで、壊していけない。この線を越えたら、とコワい事はたくさんあるだろう、しかし、そこでやっちまう、それがあたしたちの仕事。
それが、あたしの方法論だ。
壊れたところから立ち上がり、佇む。今日、感じてほしいかったのは、ここだ。佇んだときの身体の脱力、心の開放。誰もが感じることができたはず。
舞台に出る第一歩から、その自由さを持ち合わせよう。
全員が佇んだところからシーンドライブ。自然にシーンが動き始める。止める。
続いて、もうひとつの一連の課題。これは来夏本公演への下地作りでもあり、シーンともなる。ある状況を手を打つたびに極限にしていく試み。
実感と想像力。想像する、感じる。記憶する。どんどん追いつめてみる。時間軸は手のたびにかわっていく。日常の時間の流れではない時間とどう向き合い、どう想像するかの試みだ。こうなると考えて決めていてもちぐはぐになる。身体の痛み、歪み、温度、心の歪み、温度、そして、つぶやき、叫び、声。そして、極限のあとの急展開。嘘がひとつずつ削ぎ落ちていった。ただ、だれからも声が聴こえなかった。次回は声も自由にしてみるべし。
想像力で極限を実感していくことで、いいものがみえるんだよね。
急展開への反応、大げさな動きもセリフもすでに削ぎ落とされていたから、とてもよかった。涙が出た。人間の感情も身体も割り切れるものではない。それが劇的なことを生む。夏には完成にもっていきたい。誰も嘘をやらないで。
もっと極めてみたい。何の役に変身するのでなくていい。どんなことでも想像力で満たして、実感を伴える俳優たれ。それをやれば、変身は叶っているというわけだよ。
前半1時間、ここまで。すべて連続した一連の課題終了。休憩。たばこ1本。
後半はまず声の確認。まだまだ声が弱い。エチュードの声もともすればきこえなくなる。最低条件としての俳優の声を持ちたい。
腹式の確認。各自、進歩はみえる。加速してほしい。おなかに大きな器を作る。これは毎日の発声しかない。声が出せなければ、腹式呼吸だけでも毎日。
腹式呼吸、おなかの器はごまかせないよ。N山さん、単純な訓練を続けること、それがあなたには欠けている。いきなり大女優になんてなれるわけないんだね。Mなさん、これから鍛える。U杉くんも鍛える。シャウトだけでは言葉は伝わらない。声は必須だよ。Yき、頑強な声帯を持つ。そこに頼ってきたのだろう、腹式から見直して。Mもと、随分おなかの器は大きくなった。けれど、そこから強い声を鍛えなければならないね。Kさわくん、シーンでも声が出ている。発声をせりふに繋げるためにさらに精進ね。Mき、腹式から鍛えなければ。声は大事。腹式、声、腹式、声の連続。腹式を意識できたはず。ブリッジによる声の受け渡し。腹式は同じ、さらに腹筋強化。声の強化への早道。Mなさん、完全なのど声。
エチュード。愛情表現。告白、求愛。女優三人に同時に。俳優同士で強いビームが見えない。抱きしめ合う前に、みたいのは強い感情のやりとりだ。それがなければ、観客席にとどきっこないぜ。
続き、エチュード。嫌悪とか憎悪とか。つまり、愛情があり、嫌悪を感じ、憎悪する。これは感情動線の課題である。
S田くん、N山さん。2連発する。S田くんに感情の変化がみえた。いい。N山さん、感情があやふや。心がみえない。強い言葉や嫌みだけでは違う。
Mもと、Mき。憎悪まで見えない。細かい感情の変化。
U杉くん、Mなさん。ほんとにいやになる瞬間だけ、それが憎悪に変わる瞬間だけ、見えればいい。
Kさわくん、Mなさん。ふたりとも感情がはっきりしない。ひとりで作ろうとしない。相手のひとことに心を揺らしてみること。
Mき、Yき。そこには過去の愛が見えて、とてもよかった。あたしがやりたいこと、みたいものは、愛故の嫌悪、憎悪。それはいやな感情ではなく、せつなく、哀しいでしょ?
人は思い出を塗り替えるのさ。嫌悪や憎悪を忘れ去り、愛だけが残るのさ。
愛情のエチュードが形で終わっているので、愛情からの嫌悪、憎悪に連動していかった。これはあたしだけが知っていた流れだが。俳優はシーン毎に感情を捨てたり、重ねたり。どちらも必要。重ねるときはやりやすいはずだけどなあ。ひとつひとつを丁寧にね。
身体表現。身体に音を入れていく。そして表現する。今日はリズムに変化が続くコラージュにしてもらった。案の定、リズムを身体で表現する。そうではないのね。Mもと秀逸。S田くん、いい。U杉くん、身体で表現してみること。
Kさわくん、振り付けではないので、音をしっかり聴くことね。N山さん、Mなさん身体は動かせるふたり、罠にはまる。身体表現は振り付けではない、音と一体になっていく新たな表現がほしいのだ。いじわるな音でごめん。
Yき、今日は動けず。表現していくことと陶酔と、両方ね。
今回はセリフ、奴碑訓にて締め。まず、言葉の確認。ランダムに歩きながら。指定した箇所のみ、身体表現。身体の余計な癖をとり、言葉に向き合うための訓練なのだが、それぞれにいらない動きが出る。これはセリフ癖と同じ。もっとランダムな動きに徹してほしい。
全員でダリア、下男配役。う〜む、会話、やりとりになっていかない。泣。諦めずに、また。読み込んできてくれ!!先に進みたいのであれば、やってくるのは当たり前よね?
以上。
あたしも求めるものははっきりあるので、訓練の方法は際限なく考えていきたい。可能性のねじをできるだけ早く開けてあげたいと想う。
稽古、稽古、稽古しかない。