2008/12/01
芝居は想像力からはじまり、想像力で広がり、想像力で充たすしかない。


美術家宮原さんの葬儀にいく。献花の前にロビーに出ると宮原さんの描かれたエレベーションがたくさん飾られていた。
想像力に溢れた手描きのエレベーションと向き合って、信じて進もうと誓ってきた。
開かれた稽古場。参加者11名、見学1名。うち初参加2名。
気持ちを切り替えて、舞台に居続けなければならない時がある。明かりの変化だけで一瞬にして場面が変わる時がある。どんなにちぐはぐになってしまっても、明かりのあたっている間は、舞台の上にいなければならない。連続した課題にする。まず、気持ち、表情、自尊心。自意識すべてを消していく。誰でもない誰かになる。削いでいくこと。あたしは無表情を演じるということではないと考えている。削いでほしいのだ。
削ごうとすることが肝心。無駄なものを取り除きたい。Kさわくん、いい。Yき、Mもと、見られている意識の中で削ぐこと、それができたら素晴らしいのだが、見られていることに慣れている。まだまだ。Mなさん、戸惑いが見える。削ぐ。S田くん、U杉くん削ぎ始めている。そう、もっと。初参加のOみさん、Aなさん、自意識が何かをしようとしている。何かをすることが何かでしかないので、意味がなく、何をしているのかまったくわからない。それが不要な自意識なのね。
誰でもない誰かがある地点で佇み、振り返ると深い悲しみに満ちている。深い悲しみの感情を抱えて、歩き、佇む。Mもと、Yき、Kさわくん、N山さん 心が動いている。Mき、なかなか心が動き出さない。Mなさん、心が動かない。U杉くん、動かそうとしていることがみえるが、それは悲しみではない。S田くん、集中と弛緩が繰り返される。集中がとてもいいので、保つこと。ある感情を止めるのではなく、その感情を動かしていればいい。Oみさん、心が動かない。Mなさん、悲しいという表現をする。悲しいという上っ面な表現はいらない。
その感情のまま、ある1点に集まる。感情の潮。感情の渦。ひとつのシーンを仕上げていくには、全員が確実にその感情を持ち続けることでしか成立しない。嘘は跳ね飛ばしたくなる。心が動いていることだけを望む。他の表現はない。悲しみを声にする。それぞれから予想のつかない声が出るようになった。どういう声を出そうと考えている俳優はすぐわかる。違う。
手を打ち、再びすべての感情をそぎ落とし、誰でもない誰かで歩き、佇む。手で、その俳優自身として佇む。削がれたものからその俳優自身が溢れてくるようでありたい。Mもと、Kさわくん、Yき。変化がわかり、いい。もっとそれぞれが立ち上るようになりたい。Mき、少しずつ心が動きはじめて、表情が和らぐ。S田くん、U杉くん、削ぎ方が不足しているので、存在感が鈍るのだと思う。Oみさん、心や体から力が抜け始めた。
Aなさん、何かをしなければそこにいられないのだろう。違う。
手。俳優各自からメッセージを発信する。手。観客席を煽る。芝居は観客席とともにある。観客ひとりひとりの心は動いている。俳優はその心をもっと動かせなければならない。上っ面なメッセージや煽りじゃ、動きっこない。ふりや型なんて、くそ食らえだよ。
手。演劇的に他者と会話。劇的であることとは何か?常に考えてほしい。常に、常に。劇的な体験をすること、体験を劇的と感じること、劇的なものに敏感でいること。自身の宇宙は果てしなく広げなければならない。
感情の訓練。強い怒り。怒りの対象をはっきりと持つ。怒りの理由をはっきりともつ。歩く。感情があがっていくとき、感情はどう変化していくか?感情を丁寧に追えばおうほど、感情は変化していくのだ。
Kさわくんは本当によくなっている。強く、太くなれ。S田くん、激しい炎が見えるのに、落ちる。燃やし続けろ。N山さん、はっきり感情がみえるが、固まる。おそらく、感情を保とうとし過ぎてしまうのだろう。感情は動くもの、変わるもの。U杉くん、持続するようになりつつある。さらに集中して、持続してみる、その先に光はある。Mなさん、やろうとしているが固まる。踏ん張れ。Oみさんはこれから感情を動かすこと、持ち続けることを身につけていきたい。Aなさん、芝居を取り違えているのだと想う。申し訳ないが、すべて嘘にしかみえない。
手をうち、その感情のまま、他者と会話。手、つまりきっかけからの瞬発力がないので、止める。再度。感情をぶつけあうこと、他者に反応すること。手、歩く。再度。感情は他者と関わることでも変化する。自分勝手な感情だけでは成立していかない。
想像力と実感の訓練。時間経過から想像して実感すること。経験のないことを演じることは、それ風のことをすることではなく、想像力を広げて実感することだという考え。繰り返して、繰り返して、実感する。実感すれば、それは信じられるもの表現になるのだ。今回感じた体感、感覚を捕まえておくべし。
休憩5分。魅力的に歩く。音あり。俳優自身の魅力を知ること、魅力的であること。魅力的見せること。己を知ること、客観的な目を持つことのための訓練。Yき、Mもと、Kさわくん、U杉くん、S田くん、存在感が出てきた。それぞれに魅力的だ。N山さん、まだ弱い。恵まれたルックス、もっと活かせる。Mなさん、小さな体を活かす。表情が難い。Mきちゃん、素敵だから自信を持って。おどおどしない。Oみさん、笑顔がいい。Aなさん、できることを極めなければ武器にはなっていない。見るならしっかり見る。盗むなら、しっかり盗む。
四股発声による声の増殖。Yき、Kさわくん、声、動きともに素晴らしい。さらに鍛えたら、センターあげるよ。全体的に声が弱い、弱すぎる。日常訓練!頼みます。ものすごい声が絶対ほしいの。
ブリッジによる声の受け渡し。Kさわくん、余りに短い。が、声はどんどん出来ている。Yき、強くなった。Mき、腹式から日々の努力が足りない。細い体に強い声を持とうよ。最強の武器になる。
破壊。自身を壊していく。どれくらい壊れていたかはあたしにはわからない。それぞれが壊れたかどうか?Yき、方向を決めてしまっていることがそろそろ壁になってみえるよ。壊れているような動きをみたいのではない。きちがいのふりと同じだね。壊れてみると飽和するのよ。壊れてみる。壊せ。壊せ。声が出ないなあ。う〜む。N山さんがよくなった。
壊れたところから、泥酔。Mもと以外その体勢から変化しない。課題や表現することが変わったときの加算も必要だし、切り替えも必要。
あまり変化がないので、それぞれが酔いの体感はできたとして、あとは指示に切り替えていく。帰宅するという指示。意志と酔い。身体と右脳。絶妙なバランスが見たいのだ。部屋にたどり着き、眠る。日常動作。部屋の具体的なイメージ。続いて、目覚めたら自身が死んでいたというエチュード。想像力。みないものをどう想像していくかだ。
Mもと、はっきりわからなかった。Kさわくん、面白かったが、発展していかなかったね。全体的に想像が足りない。
続いて、他者の死への反応。発見、そして反応。首吊りを見つける。2連発。反応を丁寧にすること。それぞれに発見の瞬間がはっきりしてきた。その人との関係が見えるようになりたい。Mき、秀逸。感情が激しく動き、声が出た。それでいい。Oみさん、第一声がよかったが、あとが作り事になってしまう。アドバイスしたら、第一声もだめになった。反応するだけでいい。U杉くんもよくなりつつある。
続いて音による身体表現。素晴らしい音、素晴らしい身体表現。音による表現への影響の大きさを改めて感じた。Dさんがもっともっと芝居を愛してくれたら嬉しい。U杉くん、N山さん、Mもと、Yきよかった。Mなさん、うん、まあまあ。もっと音を聴く。Kさわくん、動けるようになった。さらに音を聴く。Mき、表現していく。
エチュード。愛情シーンから手を入れ、連続して憎悪のシーン。男女、男同士、女同士で10連発。愛情は強い愛が見えたい。まだ叶わない。Hき、ここから参加。もっと強い表現ができれば、憎悪になるのだが、弱い。アドバイスしたが、完全に失速。Mもと、今日は言葉が嘘のない音で出ていた。心がそのまま声になり、声が言葉になる。さらに。
Oみさん、憎悪がよかったかな。しかし、全員日常レベルの喧嘩ではなく、憎悪とは?考えてみてほしい。Kさわくんの冷たい顔、よかった。
Mなちゃん、思い切りが足りない。
ここ10回くらいでやってきたこと、感情を動かすこと、そして想像し、実感していくことをせりふにつなげてみたくて、新しい課題。
テネシーウイリアムズ「話してくれ、雨のように」
まず、言葉を感じ、読むための稽古から。参加してみる。それぞれの言葉が聞こえてこない。言葉、状況、どう読むかではないのね。せりふへの関わり方もね。とても好きな戯曲。読んでおいてほしい。
彼女は、彼は 心がどう動く?どう動かすではないのね、どう動く?
せりふから連動して、相関図と考えてきたが、無理かなとオモイナガラ。恒例相関図。
かなり表面的ではあったが、混線した面白さはあった。途中、一度止めてアドバイスし、続行してみる。同時に起こる物語、そこがすべての心が動けば、成立していく。それぞれの言葉も聞こえてくる。
芝居は面白いもの。成立させることを、またあたしは課題としていただいた。
以上。
理屈はない。心を動かし、想像し、実感してくれれば、いい。
素敵な俳優になるために。