2008/12/08
感情を動かす、切り替える、足していく、感情を自由に操作できる俳優になるための、感情のソネット


師走。毎日仕事、仕事、仕事で、きっと一気に年末だろう。明日は来夏の劇場の契約にいく。一万円札を数えた。何とか行ける。
毎週コンスタントに稽古がある。これはとてもいい。あたしにとっても、この稽古場を開けてからの一年はとても有意義だった。これから100年でも200年でも続けていきたい。
開かれた稽古場。参加者10名。見学2名。久しぶりのあたしの大好きな役者も参加してくれて、稽古場に向かう道すがら、にやにやしてしまう。
今日は一連の感情のためのソネット。感情劇のような、短い、しかし、連続した課題。まず、俳優たちの登場から。それぞれの宇宙を抱えて、そこに俳優たちが集まってきたい。今日は魅せるということ、つまり、観客を惹きつけていくことを課題として指示して開始。Mなちゃん、Kさわくんは心許ない。強いオーラを持つ俳優たちに埋もれてしまう。はっきりした自身を創るところから、一日一日俳優として磨くべし。まだ若い。しかし、若さはあっというまに消失する。S田くん、U杉くん、随分はっきりしてきた。初参加のMほさん、何かをしようとしている。演じるということ、芝居、そのものへの勘違いをしている俳優のいかに多いことかとあたしは声を大にしたい。Yき、Mもと、Oやさん、素敵だね。Mきちゃん、発するものはとてもいいのだが、非常に弱い。狭い。観客席の向こうまで、そのにほいを届けなければね。舞台上の俳優たちから火柱が立ちたい。佇みから、観客席を煽る。これは、あたしが創りたい芝居のネックだ。観客を煽るということ。観客への意識が低い。Oやさんは言葉はないが、確実に眼が観客を煽る。流石だ。止め、アドバイス、再度。
U杉くんの眼に観客が見え始めた。格段によくなる。Mもと、発する声が本当になっている。観客に届く言葉を発しはじめた。Mき、Mな、観客のたったひとりにでも届く声があればいい。Mほさん、型にはまったことにお客様は乗りはしない。眼に表情がない。Kさわくんの必死さが裏目に出ている。煽るということは挑むということ。S田くん、心のマグマが外に出てこない、ほじくり出せ!N山さん、人に届く声、音。そんなところへ意識を持っていくこと。ひとりよがりでは、届いていかない。
手。俳優同士で煽り合う。煽る、そして、それに反応すること。全体的に怯みが見えすぎる。舞台の上では覚悟を決めていくことだ。
U杉くんは反応が非常にいい俳優だ。これに折れない強さがほしいところだ。Mな、Mき、Mほ、N山さんの女優陣は、弱い、弱い。かかっていけ。中途半端なものは気味がよろしくない。感情を動かし、足していく。強い怒り。強い怒りをもって、歩く。あたしはOやさんの感情がもっと強い、太いものになってほしいと想っている。そうなれば、何周りもいい役者になると想う。このところ、こちらから声の指示をする前に自然に声が出てくるようになってきた。こういうことは稽古を重ね、実感を重ねていくことで掴めていくのだ。
Mなさんは感情を動かしていくことを何とか掴んでほしい。Kさわくんの怒りが泣きに流れていく。怒りが悔しさに変化し、泣きになるのだろうか?必死さの方向が少しずれて見えた。U杉くんから無駄なものが抜けて、感情が際だってきた。いいことだ。S田くん、ふつふつとした怒り。もっとふつふつとふつふつと。Yき、感情がとてもよく動いている。Mもと、外へ外へとあらわしていたものを内に抱え始めた。それだ。怒りを抱えて、佇む。手。怒りの感情をもって、舞台センターに集まる。怒りの渦。全員が強い怒りを心に抱えなければ、これは完成しない。手。感情、自意識、身体の力を削いで、誰でもない誰かになる。誰でもない誰かが立ち去る。シャッター前、後ろ向き。手。振り返ると深い悲しみ。悲しみをイメージするのではなく、悲しい原因をイメージする。想像する。悲しい気持ちを抱くということ。Yき、Mき、Mもと、いい。Oやさんはいいのだけれど、どこかでここまでというストッパーがかかる。それを外してほしい。きっともっと大きくなる。U杉くん、悲しいということ。何があなたの身に起きたら悲しいと想うのか?具体的に考えてみてほしい。心が動いていない。S田くんは、悲しむことがコワイのかもしれない。しかし、俳優として、悲しいところへいかなければね。Mほさん、初めての挑戦で、心が動かない。どう表現するかではないことに戸惑い。Mなさん、少し動く心をもっと動かしてほしい。伝わらない。N山さん、瞬間あがる感情はできる。それを動かすことが課題。手。舞台センターに深い悲しみの渦を集め、号泣。くずおれることを禁止してみる。まだまだ頂上に届かない。手。誰でもない誰かになる。手。笑い。具体的に笑う。笑いの空々しさをなくしたい。笑うことが目的ではない。何かが面白くて、笑う。再度。続いて、笑いをセンターに集める。Oやさん、とてもいい。Yき、Mもとが引っぱられて笑いの渦が大きくなる。笑いの渦で、観客席を巻き込む。役者の感情が観客の感情を動かすことへの挑戦なのだ。まあまあの成果。少し引っぱられた。
休憩。再開。リズムにのって、スタイリッシュに色気を持って歩く。観客席への売り込み、媚び。役者ひとりひとりの魅力を全開させたい。贔屓目といわれようが、やはりOやさまは素敵だ。こんなにセクシーな役者はいないという域までもっと素敵になってほしい。Mもと、スタイルもいいし、顔もいいし、なにより役者然としてきて、歩きもいい。N山さん、訓練の継続は成果を生んだ。非常に綺麗で素敵だった。Kさわくん、まわりの勢いに負けて、今日は自身を見失う。U杉くん、魅力ある。S田くん、もう少しアクティビティがほしいかな。Mき、開いていくこと。Yき、かっこいい。以前の静止したかっこよさから動くかっこよさになった。Mほさん、これから自身をよく知り、魅力的になっていこう。Mなさん、張り切りすぎ。小さな身体を活かすようにアドバイス。続いて、破壊。とことん、壊す。Oやさん、S田くん、Mもとがいい。切り取る。再度。それぞれも加わり、さらに壊れてみる試み。とてもいい成果。最後に声。よかった。泥酔。酔いの実感。なかなか見えてこない。
さらにリアルな表現の面白さということを課題にして、再度。泥酔者の吹きだまり。よくある風景、よくある日常を舞台の上で、再現すること。丁寧に再現することで、面白くなる。一部は面白くなるが、周りで寝てしまったり、こちょこちょこと何をやっているのかわからない表現。これでは面白くはない。
再度。これは演劇であるということを常に念頭におく。何が面白いか?
ただただ日常の再現だけでは、演劇的とは言えないのだ。
続いて、死。他者の死。自身の死。死への願望。それに付随する恐怖、葛藤など。大切な人の首つりを発見する。発見と反応。これはまず、首をつっているその姿が見えなければ、あとはどう足掻いても失敗。はっきりと想像するしかない。想像する、想像する、繰り返せば、見えてくるのだから。
前回よかったMきちゃんがあまりよくなかった。同じシーンを何度繰り返しても、その瞬間であること。なぞってはならない。Mなさんが今日はよく見えていた。Oやさんは、芝居ができすぎる。この課題についてはイメージ不足だった。Yき、はっきりしなかった。S田くん、みていく。イメージしていく。いけ。U杉くん、ふと醒める。それをやめてほしい。
手足首がもがれていく、そして、死。経験しないことを想像で実感していく試み。痛みを感じていたか?
それそれに想い出してほしい。まだまだ、もっとではないかとこれはあたしのイメージとは違った。続いて、銃殺、刺殺。実感。
これは抵抗や恐怖が見えなかった。また次回。
死への願望。死にたいと想う。こういう感情を引き出すには、自身の経験だけではどうにもならない。状況への想像力だ。
俳優は自身の経験や自身の感情だけではやれない。想像力で経験や感情の抽出を増やすしかない。これが役作りに繋がるのだ。
今日はこの点をアドバイスする。
身体表現。身体と音の融合。これは身体表現であり、感情表現であるのだよ。
ダブさんの音に熱が入ってきた。丁寧に音を作り続けて欲しい。Mもとが静に気づく。音の無音は音であるように、身体表現の静止も表現であるということ。ストップではない、静止の状態までいきそうだね。
しかし、今日の身体表現はよかった。Mなさん、身体能力は高いが、音と分断されていることが惜しい。音と他者ともっと刺激しあうこと。Kさわくん、S田くん、Mきちゃんよかった。Oやさんの集中力はすごいし、表現力はすごい。よかった。ほんとにいい。Mもと、Yき、U杉くん非常にいい。N山さん、かなりよくなったがまだまだ集中力が足りない。Mほさん、初回。迷いが見えているうちに終わった感。これからかな。
感情のソネット。身体表現まですべて。
それを総動員して。話してくれ、雨のように。規則的の動きながら、発声を意識して、台詞の訓練。男優の声はきこえてくるが、女優の声が弱い。言葉がきこえてこない。戯曲を読んでくること。稽古にならん。
秋波、愛情表現。今日は間にいくつか入れたみた。愛しているから、人は憎む。気持ちがあるから、感情を使う。これ、あたしの持論だが。
そういうわけで、愛情がとても大事だと想う。
お互い送られる愛情をどう感じて、どう受け止めることができたか。
想い出してほしい。Mき、Yきの求愛のエチュード。
感情が動くこと、いいシーンだった。本当に心が動いたことを記憶して、さらに精進。
恒例相関図。感情が入り乱れる。感情が混線する。ずるさ。戸惑い。哀しさ。怒り。嫉妬。さまざまな感情が動くエチュードである。まだまだ感情が一方通行だったり、共有されてしまうものだったりと綺麗事の印象。途中で手を入れ、会話を分けてみる。それそれの感情がどう動いているか、もっとみたい。
さらに丁寧な作業をしていきたいね。
以上。
感情を動かし、切り替えていくことを正味115分。俳優それぞれが反芻をししてみてほしいと想う。
この稽古場にきて、そして、公演に出ていく。公演で少しでも感情が動かせて、その役を演じてほしいと願う。