2008/12/15
魅力的な役者を育てるよ


あたしは宣言する。芝居屋・劇団羊のしっぽとして、この国に数多ない本物の役者を育てあげる。あたしが責任を持つ。決めた。情熱を持ち続けて、あたしについてくればいい。あたしは劇団羊のしっぽの役者を胸を張って売り出していく。
開かれた稽古場。参加者8名。見学1名。俳優として、自由に感情を動かすこと、そして、それを舞台上で表現していくこと、それを観客席に伝えること。
この3点に着眼して、課題を行う。
舞台奥と舞台ツラに男優、女優向き合う。まず、俳優自身として、舞台上を歩く。すれ違い。すれ違う時に他者を感じる。3往復したら、演劇的に会話する。最終的に全員のシーンにする課題。
Kさわくん、S田くん、U杉くん、Yきの男優陣、いい。それぞれに存在できている。女優陣、弱い。はっきりした自己顕示でないものは、芯のない、ふわふわして、あやふやなものにしかみえない。何かをすることではなく、中身を満たすことだ。
共演者同志の距離感、バランス感覚が悪い。演劇的会話、何が劇的であるか?劇的宇宙がない。日常会話なんて、いらない。挨拶なんていらない。虚構の世界を産むものは、あなたたちの想像力なのだ。続いて、観客席を煽る。男優陣、とてもよくなってきた。N山さんもよかった。すかしていないで、ただ煽ればいい。息を抜く度に弱くなる。形では煽れない。目線。眼。続いて、共演者同志で煽り合う。俳優同士の煽りあいになったときに、それは劇的なシーンに変化するべき。
場所を入れ替わり、向き合う。
娼婦と借金取り。それぞれに役として、歩く。役として、すれ違う。形骸化するのであれば、もっとはっきり。途中止めて、アドバイス。再度。同様、三往復したら、役として会話する。男優陣、いい。歩き方、目線ががらりと変わった。女優陣、品を創るのであれば(シナ)ちゃんとやるべき、腰を振って歩くなら、腰を振って歩く。何をやっているのかわからない小手先の動きはまったく伝わらない。会話になり、面白くなる。Kさわくんの「もう何回もやってんよ」の台詞に惹きつけられた。Yき、若干型芝居である。それが様になってはいるが、中身がほしい。そういう役者になってほしいのだ。U杉くん、シーンを産み、ドライブさせることに頭がついていかない。雰囲気はいいのだが。
S田くん、言葉が聞こえない。はっきりやること。N山さん、なかなか面白いのだが、調子が出ると言葉が増えすぎる。Oみさん、口が回るのは、あなたの緊張だ。相手に反応していくことを意識してみること。Mなさん、言葉が聞こえない、シーンが続かない。ひとりで何かをやってもだめ。相手にのっていくこと。Mき、耳をそば立てるとなかなかいいところもあり、一番シナが作れているのだが、やりながら、照れたり、迷ったり。あなたが迷えば、観客も迷う。恫喝とか媚び、よく考えてほしい。大きな声で怒鳴るだけでは恐くない。相手の反応にのっかっていく、それが脅し。同じ動線で、感情の歩行。憎悪。憎悪の感情で歩く。すれ違う。アドバイスをすると型芝居が入る。そんなもんは無用。空気を感じること、感情を強くここに持つこと。3往復、会話。
憎悪という感情を産む環境、設定は想像力でつくる。たかが少しのそれぞれの経験からなんて、よっぽどのすげえ体験でもしていなければ出るわけがない。
あたしは、これをこのところしつこく言う。あたしは俳優は魅力的であってほしいが、舞台上に乗せたいのは、俳優の生身の感情なんかではないのだ。経験の抽出からは出てこない感情を自身の中で産むのだ。産めるのだよ、想像力という武器によってね。
続いて、感情の歩行。殺意。殺意を持って、ただ歩く。すれ違う。何も見えてこないので、止め、再度。三往復して、会話。殺気、怖さが見えず、つかみ合うのみ。止めて、動きを規制する。殺意の歩行のまま、立ち止まり、振り向き、相手を認識し、殺す、まで。気配への意識が希薄。相手との心のつかみあいの間がない。芝居を劇的にしていくのは、こういう瞬間のリアリティである。止まる、動くの切り替え。ただ、流れてしまう。殺意、S田くん、やや形骸化が見られたがそれはそれであたしは好きだった。
さらに、真ん中に見えない壁を設定する。同じ感情を重ねていくうちにそれぞれに見えてくるものがあった。殺してやる、で壁に遮断される。
手。赦す。殺意が赦しに変わる瞬間がみえない。手。喜び。大きな喜び。心をその感情にするためには、心を喜びの想像で、できるだけ具体的に埋めること。
笑い。笑いのテクニックを求めていない。本当に笑っている姿を見せたい。それに加えて、観客席への意識。笑いの伝搬。舞台中央に笑いの種を作る。観客席に向けて笑う。笑いを共有して、広げる。笑う、笑えば、どんどん笑いは膨らんでいくよ。随分自然に笑えるようになった。
破壊。内面から壊していく。壊れて、壊れて、その先の姿を見せたいのだ。まだ壊れることに必死で、そこまで辿り着けない。頭も心も筋肉もからっぽに摺るんだ状態が見たい、見せたい。
声もほしい。
火の中に入っていくエチュード。実際にはない火を観客席に伝える表現の追求。想像による実感と表現と。今回からの挑戦。2連発。あたしにピンときたのは、N山さん、Yき。想像による実感と身体、表情による表現だと想う。
登場し、佇み、四股。声の増殖。声はまだまだ。見せ方をもっと身につけたい。発声、強化せよ。
声の精一杯の天井を上げていこう。まだまだあああ。
奇妙な部屋。日常(あくまでも芝居の上で)の再現の構築によるシュールなシーン創りへの挑戦。無対象行動ももっともっと正確さがほしいし、それぞれの部屋のイメージももっとはっきりさせてほしい。他者への驚き。主張。混乱。Kさわくんは、ダメをよく読んでいるのだが、混乱を目標にしてしまったね。もう少し他の部分を丁寧に追えば、それもありだというところ。Yきが丁寧でとてもよかった。あれ?という瞬間、よくわかった。表札を確認しに黙っていく姿、滑稽でよかったな。N山さん、またまたしゃべりすぎ。Oみさん、きっと緊張していて、何かをやらなくちゃと想いすぎていて、周りが見えていない。ただ、ただ、部屋で過ごすことをまず、やる。そこに他の存在を入れる。まず、かならず必要なのは驚きとか恐怖とか。自分の部屋に7人も他の人がいるんだよ、みんな!またやってみる。
魅力的に、リズミカルにセクシーに歩くから、佇み、そして、身体表現まで。
色気のある役者が好き。色気を身につけよう。連動した、動き。Yき、今回は創りすぎ。もっと等身大でいいのでは?N山さん、今日は全然だめじゃん!!
身体表現は、今日の音はアイディア倒れの感あり。俳優たちもリズムにひっぱられ、当てぶりのようになる。音と身体表現の競作でありたいのだ。Mなさん、まず音を聞く。U杉くん、よかった。S田くん、音に引きズラレ混乱したか?Yき、共存する他者を取り込めず。いつものパートナー不在のせいかな?N山さん、リズムに乗っては、それを中途でやめたり、わけわからん。
けれど、Dさんも試行錯誤してくれるので、とても嬉しい。
愛情表現から恒例相関図。Yき、Mきから。愛情を伝えあい、キャッチし、抱き合うまで。なんとも不器用な動き。スピードの切り替えをアドバイス。心を通わせ、見せるテクニックも磨きたい。
相関図。必要なのは「まさか」の反応と愛情。今回は誰も彼もが言葉遊びに過ぎなかった。みんなよくしゃべったが、上滑りのシーンだった。Oみさんのネタはオッケーだが、それに辿り着いた妻の中身が伴わない。アイディアをいかに形にして、中身を埋めていくかが芝居だね。
役の中に役者が見える。そういう役者になってほしい。そのへんを歩いているあなたが舞台の上に上がることはできないんだ。そこをゆめゆめ間違えることなかれ。だから、修行する。
本物になる。本物にする。 芝居屋・劇団羊のしっぽは、かならず頂点に立つ。