2008/12/22
感情を動かし、さらに表現していくために。


もの凄い渋滞に巻き込まれる。市ヶ谷駅でパニックのまま、車を飛び降り、走る。稽古に遅れることは、死ぬことよりいやだ。階段の人混みを大声で蹴散らし、閉まり掛けた電車のドアの隙間をこじ開けた。大好きな映画の名シーン、
「stop the train!!!!」が頭できこえて、シーンが浮かんだ。駅からも走り、それでも2分遅刻した。くやしい。
冷たい雨をやっと感じた。
開かれた稽古場。参加者9名、見学1名。
今日は年内の稽古納めに向けて、到達を確認しておきたい課題があったので、身体表現はプログラムから外す。
声、感情、身体の連動をテーマで組み立てた。強靱かつ繊細な表現のできる声をまず持ちたい。絶対持ちたい。稽古のはじめに声の確認とそれを課題の中でも常に念頭に置くことを話して、開始する。
外郎売り。歩きながら。外郎売りは発声であり、調音であり、せりふである。
発声で声を出しながら、長い台詞をこなすための訓練。Yき、Kさわくんは声がいい。Kさわくんは、さらにどう聴かせていくかの表現をしてほしい。初参加のSらさん、声はとてもいい。さらに鍛えたい声。Mき、Mなさん声がない。日常から発声をしてほしい。S田くんは声もあるが、この外郎売りに対しては取り組みが甘い。途中で息切れている。Oみさん、強い声を台詞に繋げることがまったくできていない。教材を知っているだけで安心していてはいけない。訓練を継続すること。発声や滑舌はやるしかない。S井くん、魅力的な声だし、魅力的な役者なのだが、声が弱い。声を獲得したら、尚いいのだと気づいてくれ。Kさわくん以外、いつになったら覚えるの?うんざり。
連続した課題。役者ひとりずつ、登場し、佇む。他者の気配を感じ、会話する。そして、また佇む。さらに叫ぶ。
役者それぞれがどこから観られてもいい宇宙を持つこと。そこにいるだけで輝ける役者になりたい。Kさわくん、とても堂々としてきた。ぶれがない。Oみさん、除いていかなければならないものにがんじがらめになっている。Mき、ぶれまいとする意識が見えてしまう。けれど、その意識はいい。S田くん、いい。Mなさん、表情も和らぎ、よくなりつつある。S井くん、ただそこに立つこと、まだできない。Yき、もっともっと内面が動きたい。静止画的。Sらさん、もっと自由になっていきたい。他者を感じることは、佇む中から感じていくことなのだけれど、できていたかな?感じることを言葉にする、声にする。そういうシーンが見たかったが、技巧的だった。Oみさん、感じること。言葉が勝りすぎるのだ。佇みへの切り替えが、それぞれの中でちゃんとあること。
叫びは、全員よかった。もう少し言葉そのものがきこえたい。声大事。精一杯を劇的なところにしたいのだ。
さらに連続して、佇む、そして、くずおれる。さらに破壊する。
連続した訓練にしているのは、切り替えていくことと舞台上での迷いを取り除いていくため。くずおれて、身体と心をまず解き放つため。そこから、さらに内面を破壊し、それをどう表現していくかを探るため。
役者それぞれは掴んだ感覚を思い出して、活かしてほしい。S井くんを壊してみたい。S田くん、いい。
続いて、深い哀しみを持って歩く。心に哀しみを持つこと。想像力をもっともっと。指定した地点まで歩く。振り返り、号泣。S田くん、Kさわくん、Yきよかった。Mき、Mなさん弱い。U杉くん、心が全然動いていない。ダメ。
Sらさん、いいものを持っている。感情がもっと自由に動かせるようになれると想う。S井くん、自分の中を煽り、引き出そうとしている、絞り出ている感じ。まずはそこからではあるが、見ていてきつい。Oみさん、どうやるかのところをまず抜け出してほしい。哀しみの原因を具体的に想像すること、細部まで想像することしかない。
その深い哀しみの感情のまま、シーンを動かす。それぞれの感情が空気を動かし、とてもいいシーンになった。言葉を発しなくても、シーンは劇的になることが、やっと出来てきた。感情を他者とどう共有できるか、あるいはできないか?
続いて、喜び。2連発。まず、喜びの原因をこれも具体的に想像すること、そして、それにただ反応すること。その気持ちのまま、そこに居ればいいのだが、全員さらに何かをしようとして、どんどんその感情が逃げていく。再度。
Kさわくん、S井くん俄然よくなった。
さらにシーンを限定する。全員が同じ演目のキャスティングを見る。そして、反応する。喜び起点で、各自の感情の動きは特に指定しないと指示してみる。
そのまま、他者と会話する。
全体的に具体的なイメージがみえない。全体的に欲(もちろん、役者としての、配役に対する)がなさすぎて、つまらない。ふ〜ん、そんなものかと感じてしまった。貪欲であってほしい。どんなことでも。
続いて、顔合わせ。顔合わせという緊張感がまったくない。全員でその空気を生み出すことができていない。自己紹介。劇的であること、どう表現していくかということ、常に考えてほしい。他者への反応、探り合い、自己顕示、何も見えてこなくて、あまりにチープだった。しかも、自己紹介が終わったら、シーンを勝手に終えてしまった。失笑。
休憩。強い怒り。強い怒りを持って歩く。これも同様、何に対しての怒りなのか?もっと湯気が見えたい。ただ、皆、歩きに変化が出てきて、よい。声が指示の声を入れないと出てこない。自ら生み出してほしい。怒りの感情をもって、舞台中央に集まる。強い怒りの塊がみたいのだ。もっと凝縮していきたい。表現すること、そこにいけなければ、あたしたちの創り出すものとして、提示できない。続いて、赦す。怒りの感情が赦しに変化することを丁寧にやること。観客が見たいものは、その課程であり、瞬間である。S田くんがよかった。U杉くんはまったく心が動いていない。さらに、見えない相手のある行動、言動によって、再び、強い怒りに変わる。きこえていたか?見えていたか?さらに、殺意。殺意をもって、動き出す。感情の変化がはっきりみえたい。感情を変化させることを獲得してほしい。
今日はS田くん、Kさわくんの感情が見事に動いていた。どの役者も常にそのモチベーションでいてほしい。
Sらさんは瞬間は持てるが、動かし、持続していくことがまだできていない。
Mなさん、少しずつ動きはじめてきたかな。
殺人者と娼婦。実感し、役作りに繋げる訓練。それ風のことはいらない。想像力で、実感につなげていくこと。シーン創り。役になりきることができていないと、シーンをドライブさせても歯痒い。男優は全員よかったが、さらに埋めたい。女優は全員、中途半端。やるなら、ちゃんとやらないと照れくさくてとても見ていられない。演じる側でいえば、形だけでは中身が埋まらないから、照れてしまうのだ。Mき、挑戦していく姿は好感。鏡の前で全身をみて、その姿がどう見えるか、その表情がどう見えるか、そういう日常訓練をするべし。
おそらく、やろうとしていることがこちらにはそう見えていないから。
刑事がそれぞれの前に現れる。反応の訓練。役作りとその役の反応。いまいち。繰り返していき、掴んでいってほしい。
シーンを創るときの言葉選び、劇的センスがほしい。
そして、あきらめ、絶望、絶望の声まで。絶望を声にしてみる、これもどう表現していくかの入り口として。
Oみさん、Mなさん、Sらさん、Mきさん。シーンが変わるときにその前のシーン繋がりになってしまう。アドバイスし、再度。
続いて、発狂。S田くん、最高。いいね。続いて、精神病院。役作りと狂気のための課題。5分。アドバイスを飛ばしてみる。狂気については、あたしにとっても課題である。切り込めずにきたが、年末に向け、思い切る。精神病院の人たちをどう表現するか、を課題として提案してみた。ピンとくるところまではいけなかったが、見えてきたものはあった。S井くん、S田くんにいい一瞬があり、心が緊張した。それぞれも探ってみてほしい。
続いて、奇妙な部屋。自分の部屋に他者がいるエチュード。日常動作、他者の発見、混乱。すべてリアリズムでいきたい。なかなか面白くなってきた。
Mなさん、まだ反応も動きも弱い。Oみさんは面白い時があるのだが、集中していない。舞台上は異空間である。Kさわくんもよくなったね。さらに面白くしたい。噛み合わない会話、噛み合わない空間が見えていきたいのだ。
最後に愛情表現から相関図。S田くん、Sらさんから。愛情が通じあい、抱擁まで。お互いに磁石のように惹かれあい、の抱擁に辿り着きたい。
まあまあ。
相関図。それぞれが感情をよく追い、反応した。Sらさんの反応がとてもよかった。U杉くん、やっと心が動いた。おい、おい。日常を引きずって、稽古に来ないでね。Kさわくんの入り方が、今日は発見までとてもよく見えて、決まった。しかし、ドライブするうちに暴力になってしまう。Oみさんのこの要素は大事にしてあげたいが、手や足を出し、暴力のみになってしまうのは、実は楽なこと。見たいのは、反応であること。まったく他者が見えていなくなってしまい、これではだめ。必死に応酬しては、とばされるMきが痛々しく、でも滑稽でもあった。S田くんの反応は、ありだろう。シーンの整理をする。2度とめ、指示し、続行してみた。今日は結論を指示してみた。Sらさんの走り込みがよかった。S田くんの覚悟と感情がもう少し見えればよかったかな。
去る男、呆然とする男、そこに会話も言葉もいらなかった。
以上。