2009/01/12
このまま夏まで疾走したい。


本日、午後はイリノイのリンカンの美術打ち合わせ。駅に降りたら、ぼんやり舞台監督のTさんの顔が浮かぶ。なんとな〜く演出助手のNちゃんに電話を掛けてみる。そっか、舞台監督は来ないんだ・・・と事務所へ。演出と演出助手と稽古の調整を始めたら、ドアチャイム、ドアを開けると舞台監督のTさん。やった。
スタッフがお互いにこの芝居の話題をしてくれて、こうやって自主的に打ち合わせに来てくれるって、なんて素敵だろう。いい気を感じた午後のはじまり。
美術のTちゃんも俄然はりきってくれていて、温かい手書きのデザイン画の最新持参。コピーを取り、打ち合わせ。舞台監督さんの智恵も借り、いい打ち合わせで、また階段を昇った。一同に会しての打ち合わせはいい。後は出演者にも協力を仰いで、見事な転換といきたいところ。
打ち合わせを終わり、駅へ。美術のTちゃんに手を振り、演出、舞台監督と三人でホーム。風が冷たい。ホームに滑り込んだ電車から、友人の演出Nざが降りてきた。嬉しくなり、ハグ状態。舞台監督のTさんが紹介してくれて、Nざの事務所のM社長に出逢うことができて、きけば、Nざは演出Yさんのお弟子さんのような方と人と人が繋がっていた。陣を組み、しばし談笑する。さて、
こちとら、開かれた稽古場。参加者 7名、見学1名。今日はオーディション参加の女優も稽古に参加して貰う。
今日は役者になるための貪欲さや執着心がまったく足りていないと感じた稽古だった。掴んだら離さず、さらに掴みにいくような、そんな稽古がしたい。
それぞれにもっともっと貪欲に、夏までダッシュしたって、死にはしないよ。
空回りを感じながらも、稽古は繰り返すしかない。今日は人数も少なかったので、返せることは何度か止めながら、出来るだけの連続した課題とした。うまい、下手ではなく、敢闘精神が続かなければ、連続した課題は失速ばかりで、実りがないから。
まず、四股発声から。まず、身体の強靱さ、美しさという点では、Kさわくん、S田くん、U杉くんは安定してきた。形骸化されたいわば「型」は美しく保って欲しい。声、今日は強い声を認識するために、強い声、叫びと続けてみる。動きとも連動させてみる。やはり、まだまだ声が弱いので、叫びと発声の区別の聞きわけは難しいということ。声の天井をさらにあげなければ。初参加のSば田くん、声が弱い。発声から見直せば、彼の魅力はもっと活かせる。Tいさん、まったく声がきこえない。声はいずれにせよ、鍛えなければならない。Mき、とにかく声が弱いとここに書かれているのに、自主訓練をしてこない。ここだけで、声はできっこない。モチベーションを上げないと。
声の確認。まず、一番に念頭において、今後の稽古を進めたい。
声を鍛えながら、その声をセリフまで繋げていかなければならない。焦ろうよ。続いて、役者自身として、登場し、佇む。それぞれの宇宙を抱えて、ただそこに立つ。想像で自身の世界を埋めよう。舞台の上に、ただ立つことは、心が埋まらなければできない。Sばたくん、Tいさん、最初に説明をしても、心もとないものを意味不明な動きで埋めようとする。それが、間違い。2本の手と二本の足は、この身体と心に繋がったもの。小道具ではないということ。
Tいさんはカチカチに緊張している。だから、何かをしてしまう。じっと立てなかった。全員、息が苦しい。再度。佇み、メッセージ発信まで。
宇宙を広げる。全員、それを遂行してほしい。メッセージ発信で、寄りどころを他者に求めてしまい、論外。易すぎる。心がカラッポだから、想像力が足りていないから。止める。再度。ただ、これだけのこと、佇み、話す。繰り返すことで、自由に、確実に掴んでほしいから、繰り返す。Tいさん、何度繰り返して、同じスピード、そして静止してしまう。極度の緊張状態。Sば田くん、内に抱えること、次回からは意識していけるといい。N山さんは発信するメッセージが文字の羅列に過ぎない。劇的ということを探ってほしい。思いつきの感が拭えず。S田くん、内に抱えたものを外に発信してほしい。宇宙は見える。次は外へ、発信せよ。Kさわくん、心の叫びを感嘆詞だけではない、言葉のメッセージとして組み立てること、次の課題。U杉くん、叫ぶなら叫ぶ、叫び続ける。普通すぎてつまんない。Mき、中身がない。ごまかしがきかない。
次に他者を意識し、シーンを創る。佇む、強い怒りの感情を持つ。その感情で歩く。感情を上げていく。そして、その感情のまま、佇む。感情がぶつかり合い、絡み合うようなもの、強いものが見えてこない。つまり、心が感情で埋まっていかない。感情を動かすことが表現に繋がるのであり、表現だけでは心は埋まらないのだ。自己陶酔にすぎないのだ。この両者の違いを今回、噛みしめてほしい。腑に落としてほしい。怒りから哀しみへの移ろい。とにかく、表面的、断続的だった。気持ちを変化させなければならないので、そう簡単なことではない。けれど、きっかけを創り、気持ちを素直に動かしていくことしかない。Sばたくんは、いい瞬間はあるが、迷う、あまりに迷うので、一度止めて、それでいいのだとアドバイスしてみる。少しずつ継続するようになるが、言葉を発することで、心の空間を埋めようとする。なので、言葉を縛る。Tいさん、このあたりから少し表情が動き始める。けれど、表面的であり、もったいない。かわいい顔も5分で飽きてしまった。(失礼!)深い哀しみを抱え、歩く。佇む。振り向き、号泣。さらに、泣きながら、歩く。
とにかく、今日の稽古場は緩かった。なんだろう、ちょっと自分にピンときた瞬間があっても、それは役者のほんの点でしかない。自惚れ。
自惚れては、そこで立ちゆかなくなる。常に掴みにいく、油断するな。誰ひとり泣けていない。情けない。滂沱の涙を音もなく流しながら、歩くところが、あたしのてっぺんの目標です。全然、できていないよ。
動と静のハーモニー。まったく叶わず。ションボリ。ガッカリ。
大きな喜び。喜びで心を満たす。心から喜ぶこと、心から感謝すること、心から満たされること。芝居に必要なのは、温かさ。反骨精神だけじゃだめなんだよ。人の痛みや哀しみがわかる人間たれ、って、説教くさいけれど、これ、原点ではないか?Tいさん、想像するものが薄い。軽い。想像していこうとする精神は気持ちいいが。喜び溢れる空気感がどうしても産まれない。それぞれが確実に演ること。舞台はその連綿としたものなのだ。
続いて、喜びの佇み、そして、微笑み。
心が満たされたときの表情筋。心を満たせば、自然とできる。零れる笑みがほしい。冷たい。創り笑顔は冷たい。
S田くん、Kさわくん、Sばたくんの笑顔がよかった。
さらに、四方を壁が囲む、そして、1,5メートル四方の箱に閉じこめられていく。参加者の半数が実感のない動き。成り立たない。止める。再度。
迫り来る壁を実感してみる。うまくやろうとしなくていい。実感してほしいのだ、登場人物全員に。閉じこめられた箱の世界。それが日常であるとしたら。
箱の中の世界は、あたしのテーマ。箱の中の小さな宇宙。これも想像力の実感だ。これはTいさん、よかった。想像力の中で、不思議の国のアリスのように大きくなったり、小さくなったりできなくちゃ。箱の中に棲む箱人間。
箱人間たちの会話。あまりにつまらなく、10秒で止める。日常から離れたファンタジーに、つまらん日常的発想。あああ。アドバイス。再度。少しずつ面白くなる。S田くんSばたくんあたりが面白い動きをし始めた。
再度。Mき、舞台の上にいながら、ただひとり、他者に依存している。その無精さがたまらなく、止める。アドバイス。とにかく、実感してみること。口先だけでは何も生まれない。さらに、箱ごと落ちる。止まる。会話。少しずつ面白くなる。箱に火を放つ。実感が弱い。箱が消える。ただし、それぞれは火だるま。痛さ、熱さ、追求、追求。声。火だるまのまま、佇む。まだまだ、観たい世界にならない。天井から水。実感。水の圧力、火の消失、喜び、痛み。身体の状態。想像しろ、想像しろ、想像しろ。こんな感じ、は気持ち悪い。
あたしのイメージでは黒こげの状態。そこから、手足頭が崩れ落ち、もげ落ちる。一連の課題として、創ってきたので、やってみる。連続した想像力が持てていないとできないね。
休憩。
ダンスから再開。音、ビートに乗って、踊る。しばらく踊ってみるが、あまりのリズム感の悪さに止めて貰う。アドバイスして、再度。まずはリズムに乗ろうよ。見せることを考えていこうよ、表情を考えていこうよ。
ここに立ったら、役者として踊って欲しい。照れは取り除いて。
Sばたくん、リズム感よし。Kさわくん、すべてのことを身につけていくこと。全部、全部。Tいさん、大きく動き、果敢ではあるが、リズム感悪くて、がっかり。先走りせずに、音に、リズムに乗ればいいのに。
ダンスから佇みへ。音の中での連動した動き。音アウト。(暗転)
エチュード。絶望、諦め。シーンを創るということ。
何かを見つける、そこからシーンを創る。
さらに死の願望。シーンを創る。どれもシーンになりきれない。さらに極めていきたい。こういうことは1000本ノックしかない。根気よくやるよ。
続いて、舞台つらから殺意。背中から観る。何も立ちのぼってこない。でも、立ちのぼるようになろう。集中していこう。踵を返して、再度。殺意。U杉、Kさわ、S田、Sば田くんいい表情だ。感情を積み重ねること。N山さん、表面的になってきた。中身、中身。まだ何もできないのだから、中身から溢れるものを大事にするしかないのだよ。Mき、中身がなさ過ぎる。それをごまかしている。いただけない。そういう解決方法は役者にとって墓穴だと想うな。
Tいさん、今後、中身を埋めて、今できている動きを活かすことかと想う。
器用ではある。
破壊。内面を壊す。Sげたくん、秀逸。なぞりにならないところが素晴らしい。今度はその先の状態へ、かな。Tいさん、表面的には表現、居ずまいとしてありだが、中身がない。そこに息づかいがなければね。N山さん、どこかでストッパーがかかり、形になる。Kさわくん、今日は壊れきれない。U杉くん、できなくちゃね〜。表現として見えてなんぼよね?
破壊したまま、佇む。そして、放心する。彷徨い歩く。次第に心がぬけていく、身体の力が抜けていく。彷徨いながら、唄う。U杉、秀逸。声がきこえてこないので、そのへんも常に意識におく。けれど、全体としていいシーンになった。
さらに身体表現。今日のだぶさんの音は神経を逆撫でるいい音だった。S田くん、Sばたくんはよく音を聴いた。よって、表現もよかった。後の役者は自分のみの表現。音との連動。音を聴く。音にはメッセージがある。特にこのところは音を創るだぶさんのメッセージもある。
Tいさん、途中出た声はよかった。
最後は愛情のエチュード。シーンを変えたときの探り合いが気持ち悪い。いらっとして、止める。アドバイス。再度。余りに表面的な仲良し会みたいなシーンで、あたしはきらい。あたしの趣味で止める。それぞれの心の変化がみたいのだ。再度。Sばたくん、Tいさん、Kさわくん、N山さん、S田くんでシーンが広がり、非常に良い流れ。それを感じたU杉くんが食い込む。
そこをMきが醒めた感じで仕切って割る。U杉くんに対して、醒めた目線で関わる。せっかくのシーンが崩れてしまった。感情的に手を打つ。
共演者同士の共同作業、他者への意識、思い遣り、そして、もちろん、それぞれが課題(やるべきこと)の達成。それが訓練であり、稽古だ。
自己満足のためならば、稽古に参加する意味がない。はっきりとダメを出す。
役者になるんだ、絶対なるんだ、芝居が好きで好きで堪らないんだ。
まず、その想いがないなら、芝居はやめた方がいい。
あたしは夏までなんてすぐだと想う。埋められる点はどんどん埋めたい。いい状態で本公演の稽古に入りたい。
あたしはもっと狂っていきますので、あしからず、疾走してほしい。