2009/02/02
役になる、役を作る、変身、そして、目指すは憑依。


イリノイのリンカンの立ち稽古。稽古場が変わったので、用心して朝もはよから準備して、向かう。いかん、早く着きすぎたので、街を探検するも、喫茶店もな い街で、また駅に戻り、珈琲を飲む。あまりに時間があるので、稽古場の主、Tさんに電話をする。いつでも開いてますよ、と言ってくれたが、いや、ズーズー しいな、としばし、考え事をしたり、演出にメールをしたりして時間調整をした。
今日の荒立ち場面の出演者さんたちが三々五々集まり、稽古開始。衣裳の調べをしたり、テキレジしたり。あたしは下北沢で折り込みがあったので、抜けて折り 込み。折り込みも特技だ。終わり、今日は比較的のんびりと次の稽古場へ向かう。今日ははじめて今日の午前中に稽古にくるまでの課題を出しての開かれた稽古 場へ。役作り、役としてを意識した課題にする。参加者6名、見学1名。
まずはそれぞれの役者の感情のモチベーションをあげる訓練から開始。役者として、登場し、佇む。歩きはじめ、強い怒りをもつ、強い怒りをもって佇む。次の 手で、強い怒りを「型」にして、表現する。そして、怒りを収め、佇みに戻る。立ち去るまで。
Oやさん、Kさわがとてもいい。自然な呼吸、感情があがることで表情も変わる。U杉くんも感情が随分みえるようになった。佇みの呼吸が苦しい。Mなさん は、役者としての歩きや存在をもっと意識してほしい。N山さんは何かをやろうとしすぎる。歩きはとても自然になった。Yき、表面的で内面の情動がみえな い。それはよくない。型については、全員まだまだ。怒りのポーズ。そして、心に怒りがあること。それをやってほしい。
今日は何度か繰り返してみた。少人数の時はその場の修正ができるので。
身体をもっと駆使してほしい。舞台は全身がみえる表現である。
さらに、振り返り客席を煽る。観客をしっかり見て、煽ることだ。手。お互いに煽りあう。U杉くんVSOやちゃん、YきVSMなちゃん、KさわくんVSN山 さんという3組の煽り合い。ボルテージがあがり、よかった。次の手で大きな喜びに感情を変化させる。手により、シーンを変えていくことがうまくいかなかっ たので、アドバイスする。再度。喜びを表現することになってしまった。もっと心を埋めていきたい。表面的なことをとことん取り除きたい。
今日の課題。役作り。それぞれの役として、登場する。役として、シーンを創る。まず、役としての登場で、Oやさん以外、まったく普段のそれぞれのまま。癖 や歩き方、表情や持つ宇宙、それらを想像力で埋めてくることが今日の宿題。役作りという第一歩から身につけなければならないのかもしれないが、今後は続け ていく。Yき、細々とした動作で役を説明してしまう。内側を埋めることだ、佇まい、立ち居振る舞いが変わることを目指したい。シーン、Oやちゃんは役とし てシーンをはじめるが、それぞれがペアになってしまい、全然成り立たない。止めて、再度。U杉、Oやさんを切り取る。そこにそれぞれの役が加わること。U 杉の役がわからない。アドバイスをするが、わからない。Yきが加わり、Kさわが加わり、N山さんが加わりと進むが、役が見えない。一環しているのは、Oや さんのみ。だめだ。役として定位置まで。そこから、役として佇み、役として話す。まず、同時多発。それぞれからいい空気が出る。さらに、ひとりずつ。よき ところで手で渡す。全員よかった。さて、それを役としてどう繋げるか?しつこく、再度シーン創り。役として動き、話すことになるとシーンが続いていかな い。Oやさんに反応するKさわが、Kさわに見えてしまい、ダメ。続かなかったな。Yき、役作りが表面的だね。中身のない役は失敗するよ。衣裳を身につけた だけの役者にならぬよう。Oやさんは宿題を見逃していた。しかし、誰よりもよく埋まっていた。役作りとなるとやはり経験値がものを言う、難しいことなのだ と想うが、想像力でその人物の中身を埋めるということを繰り返せば、役作りは間違いなく身につく。諦めずに執着してほしい。彼はまず見目形を変えた。こう いうことが大事、変身。さらに憑依を目指してほしいね。
続いて、あたしが考えた設定での役作り。まず、殺意から。殺意をもって、振り返り、歩き、佇む。観客席が凍るようなものを求める。未だ弱い。人を殺したい と想う衝動、決意。これは想像して創ることだ。
続いて、殺人者。時間軸を変えていく。今、殺人を犯した。3ヶ月逃げ延びた。すべて、歩きで。殺したあとの感情を想像してみること。想像をもっともっと。 N山さん、Oやさんの怯えがまあまあ。ヒトヲコロシテサンカゲツニゲノビタ、それは終着点ではないという想像がほしい。前回からはじめた時間軸を絡めた課 題。納得のいくものがみたい。
続いて、三ヶ月と二日後。ついに捕まる瞬間。反応の課題。状況を瞬時にイメージできるか?反応がみえない。再度。Oやさん、大ざっぱすぎる感もあるが、許 容範囲。もっと細かく心理を描けたらいいね。N山さん、Mなさん、Kさわくん、少しずつ状況をイメージできた。まあ到達点。Yき、イメージが遅い。瞬間に イメージできるよう。U杉くんはイメージが浮かんでは消える。よって、このふたりは表情がまったく動かなかった。
今日、やってみようと決めていた殺人者エチュードの最後は殺人者のふきだまり。指名手配されて逃げている殺人者たちが吹き溜まる。シーンドライブ。
まあ、面白かったが、ここに実感がほしい。どうもヒューマンな運びになってしまう綺麗さが、面白くはあっても娯楽という方向性になり、あたしは好きじゃな い。そこにずるさやさぐりあいが加算されたら、背筋凍り、さらに笑える運びになる。常に芝居は実感を伴いたい。
今度は殺される。後ろ向きの背後から、恋人に殺される。反応。どう殺されるのか、どう想うのか?身体はどう反応するのか、そんなところまでみたい。
全員に欠如していたのは、驚愕と恐怖だ。殺されることへの抵抗だ。
再度。少しずつ、埋まる。まあまあ。もっと想像していくことだけど。
続いて、死後。死んだ魂を、死んだ身体をどう表現していくかの試み。そして、気持ちを。Oやさんは表現力があるし、アイディアがある。それを今後、何で埋 めていくか。もっと中身のつまった役者になれそう。ぬけがらに拘ったシーン運びは面白かったが、その先の展開があったかもね。他の役者は想像力とアイディ アをもっと絞り出せ。芝居は日常からいくらでもかけ離れたことを想像し、さらに表現していかなければならないのだから。魂同志の会話がみたい。なんだか綺 麗事なんだなあ。
続いて奇妙な部屋。自分の部屋に5人の他人がいる。Oやさんがドアを開けた途端に他者に気づく。これは面白かった。Kさわも実感が持ててきた。N山さんの 自分の部屋への執着は面白かった。ただ、もっと感じてほしいのは、自分の部屋に他人がいることへの反応だ。これは芝居であり、シーンである。だからこそ、 細かく拘る。そうすれば、もっと奇妙で面白いシーンになるということだ。Yきが全然ダメ。そこに実際に5人の他人がいるのに、自分のこじつけだけでシーン を進める。これはいかん。相手の反応への柔軟性をもたなければ。とにかく、全員が自分の部屋であると最後まで主張して、混乱していくことだよね。確実にや る。そうすれば、面白くなるのだから。
さらに破壊。内面も身体も破壊して、佇むまで。壊れ方が足りない。壊れたはてに佇むができる。もっといこう。
そのまま、精神病院。破壊がまだできていないので、厳しいが、繋げやすいと考えて、この流れにする。とにかく、中途半端なことをやらない。やってみる。 やってみた果てに答えがみえてくる。Kさわくんがよかった。
さらに精神病院の会話。そう、空気感が生まれれば、それは会話として成立する。さらに探求してみよう。
ブリッジによる声の増殖から身体表現まで。夏には完成させる。声、声、まだまだ。身体表現は今日もいい音だった。Dぶさん、わかってきたかも。嬉しい。こ の音は公演で到達したいのだ。音と一体になる。身体で表現する。Kさわは非常に自由になってきた。楽しみだ。今回は身体がとても自由で柔軟で表情豊かで オッケー。Oやさん、全体の移動に抜けた部分がありもったいないが、音と一体感あり。N山さん、Mなさん、Yきは形になっている。違う。U杉くんは音には 溶け込んでいるのだが、表現を考えて欲しい。手足表情、身体、声への意識をさらに。
最後は相関図。3連発。それぞれの心の動き。U杉くん、無言の圧力、とてもいい。鬼気迫る。言葉がひとつ決まりたい。Oやさん、最後で非常に強い愛情が見 えた。へえ、こんな愛いいなと想った。N山さん、今日は何本も繰り返したことで表情が自然に動き、綺麗だった。言葉がいらない惜しい部分がまだあるが。K さわくん、入り方は良くなったが、その後の心の動きがぶつぎれになる。埋めていこう。Mなさん、強い感情がなかなか見えない。指示によって引き出てくるの だから、最初から心を動かしていけばいい。
Yき、心が見えない。人の心は、心でしか動かないよ。
以上。今日は役作りのためのエチュードを繋いでみた。
しかし、要は心、気持ちだ。ゆめゆめ忘れることなかれ、ってことで、さらに鍛錬。