2009/02/16
目で見えない世界を視る、耳で聞こえない世界を聴く、言葉を無くした言葉を伝える。想像力の翼を持つために、削ぐ。


日中折り込み、衣裳のちとややこしい交渉事、やや頭痛。ひと呼吸おいて、主宰にメールをする。夕方からは、稽古場の近くの公園で発声を し、犬たちを眺め、稽古場へ行く。開かれた稽古場、本日参加者7名。今日はそれぞれの経験や抽出からは出ない感情を意識して貰うための課題とする。一連の 流れで組み立てていたのだが、ギリギリで遅刻の連絡2名、見学希望をあたしが拒絶した俳優の参加者1名というイレギュラーでの開始になったので、稽古直前 で組み立て直して、開始。何よりも今、役者たちの中で鍛えたいのは、想像力なのだ。
まず、すぐにどこかに置き忘れる、声の確認、身体の確認から。四股による発声。Kさわのように安定した姿勢がほしい。四股がすぐに崩れていく。様式はあた しに必要不可欠な演劇的要素である。声もまだまだ精一杯の感じがあり、日常訓練の不足を感じた。Hくんは安定した四股はできるのに、それに伴った声がな い。アル程度芝居をやってきた今ここで、声という武器を意識してほしい。Kさわの声はかなりいい。あとは、息の長さがほしい。あまりに短い。腹式の確認 を。N山さん、鍛えれば創れる声なのに、なまけもの。困った奴だ。
Mな、初参加のMく、さて、発声を1からだ。U杉もある時期ただただ声を出してほしい。ここだけでは、声は創れない。
続いて、誰でもない誰かになる。自意識をそぎ落としていくこと。歩きへの意識、表情への意識、見え方への意識。Hくんは形はオッケー。ただ、意識は動いて いる。それを消してほしいのだね。N山さん、Mな、Mくは自意識が強すぎて、歩きまでぎくしゃくしてしまう。削ぐこと。Kさわくんは、削いでは「これでい いのか」という自意識が働く。U杉くんは、歩くことで精一杯。
再度、スピードの指示、表情の指示。合わせて、それぞれにダメだし。Hくん、かなりよくなった。削がれたときの表情の美しさ、本人が気づけば尚いいね。何かをしないことの美しさってところね。Mく、視線が定まらない、それを次回安定させよう。
佇む。そして、それぞれの役者の魂を入れていく。自分の確認、それぞれの宇宙の確認。何かをしようとしてしまう。止める。再度。それぞれで歩き、佇むま で。2度目でU杉、かなりよくなった。まだまだ無駄な表現が多い。中身で勝負していきたいね。Kさわは、あきらかに広がる想像力が狭い。もっと飛び、もっ と夢みて。続いて、シーンを創る。それぞれの世界を共有させていく。1本目。ため息からはじめた役者2名、案の定、日常会話のつまらないレベル。即、止め る。2本目。U杉が、アクシデントを持ち込む。空気が動く。N山さんは相手に反応することができない。ただ、言葉を投げても成り立っていかない。そして、 落ちる。あたしは下ネタきらい。流れを変える。金がなくなったという実感をU杉に指示、さらに動かす。Hくんはアイディアはいいが、実感が弱いのだ。Kさ わ、感情の動きがわからない。何故か不機嫌になる。このところ感じるKさわのひとりよがりの感情の流れ、ひっかかる。さらに、指示。U杉の嘘。さらにKさ わの嘘。追い詰められるふたり。しかし、なかなかシーンは動いていかず、堂々巡りでつまらない。途中参加のYき、入る。Yきも反応を待てない。反応、芝居 はすべて反応なのだよ。相手が変われば、水のようにこちらも変わる。そういう関係を舞台の上に築けるかどうかね。決められたことはない。それが感情の流 れ。何度か手を入れて、追い詰められる、と指示。追い詰められる感情を創る、回りの人々は追い詰める。その両方はできていかない。途中参加のS田くん、入 る。すべての人々に実感がない。嘘をついている実感。芝居はすべてが嘘だからこそ、そこに実感を持てなければならないのだよ。
さらに手を入れて、追い詰める、という指示をしてみる。人が人を追い詰めるには?できなかった。すらすらと嘘の上塗りができるKさわに嫌悪感を感じた。素 直な心がほしい。純粋な心。それがあるから、何かを怖れたり、悲しんだり、哀れんだりできるのだと想わないか?歪むな。
U杉もとまどいまでは見えた。その先までいきたかったね。まあまあか。
Hくんの煽りは違うな。先の読めるドラマは劇的から遠いんだよ。
Mな、Mくは反応はしていたが、何を感じ、何を想っているのか、まったくわからなかった。ダメ。心を動かす。心を動かしてそこにいることからだね。N山さん、人への思い遣りがほしい。つまり、相手の状況への想像力ではないか?
続いて、今日の課題。削ぐ。連続した想像力のための、想像力からの実感のための課題。
盲目。めくらの吹きだまり。目が見えないことを想像してみる、実感してみる。まず、歩く。これは実感が強くなることで、観客にはめくらに見えるということなのだ。めくらを演じるのではなく、実感すること。
全然ダメね。しかし、それぞれに実感ができていた瞬間はあった。Hくんは追求が足りない、拡散していく。これ、矯正したいね。途中に見えた自暴自棄ぶり が、次にはゼロになるのはダメだよね。N山さん、何度か声を投げたけれど、実感ゼロ。何かをやろうとするが、それは奇妙な人間じゃないものでしかない。で きているつもり、やっているつもりほどみじめなものはないよ。Yき、なかなかいい。さらに削ぐために。手をたたくと次に目が見えなくなっているという課 題。連発する。できるまで、実感できるまでと何度も繰り返してみた。目が見えないという、どん底。伝わってこない。Yき、よかった。観客がみて、そんなも ん?と想う程度じゃ、実感と想像力が足りていないのだと想う。
次はきこえない、話せない人。きこえないこと、話せないこと。さらにシーン創り。このシーンに求められる繊細さ。さらに、愛情表現。言葉を奪われたこと で、気持ちをどう伝えるか。心は伝わる。目は語る。あたしが求めた答えはそれ。身振り、手振りは課程としてはありかな、と考えていたが、あまりに短絡的。 必死な思いが見えなかった。見えないこと、きこえないこと、研ぎ澄まされる、気配という感覚に気づけなかったね。
さらに四肢のどこかの自由がない人。N山さんの想像は面白いと想ったのだが、言葉が先行してしまう。だから、そこに実感をのせていくのだ。とにかく、やっ てみてよ!それぞれに動かない肉体の表現。手を縛っても、足を縛っても日常で訓練できるのに。Hくん、発想はいいんだよな。ネタに終わらないために、そこ に実感。そうすれば、今日の両手が動かないんだよ、の一言は泣けたのに。わかる?Mな。Mく、とにかくやらないとね。
さらに、AID。全員AID。実感があまりに湧かないようだったので、それを知らされる場面に変えてみる。連発。それぞれに想像力と実感が埋まっていっ た。S田くんのどうしようもなさが目を惹いた。U杉のやるせなさ、情けなさが目を惹いた。そこから、家路につく。重い足取り。Yきの泣き、よかったね。続 いて、それぞれが決めた具体的な誰かに告白する。同時に。それぞれの叫び、次第に上がり、良い。さらに歩く。定位置で佇むまで。
続いて、振り返り、死への行軍。死に向かう歩き。表現していくのだが、実感から表現。S田くんの両手が動き出す。これ、よかった。ぎくりとした。こういうものがみたい。けれど、全員次第に実感が強くなり、いいものだった。
死は畏れるものだから。軽く扱いたくない。これ、あたしの持論。
そのまま、破壊。役者自身の中身を壊す。それを身体で表現する。U杉、S田、Hくん、よくなった。Kさわ、もっといけ。Yき、これまでやろうとしてきたことよりもよかった。まず、壊れてみることかもしれないね。
壊れた中身を抱えて佇む。う〜〜〜む。まだまだ壊れ方が足りないのかな。到達は叶わず。さらに、発狂。狂ってみる。狂え、狂え。そして、狂った中身のま ま、佇む。そう簡単なことではないが、それができる役者たちになってほしい。佇むだけで狂っている、なんて、できたら最高さ。あたしもね。
狂気の芝居とか、糞喰らえだよね。(あら、御下品?笑)
最後に恒例相関図。S田くん、Mくちゃんの愛情表現から。設定が彼女の部屋という恐るべき状況から。彼女の部屋にそれぞれの他の相手が集まってくる。
全体を視ているので、面白い流れだった。Hくんの冷血な切り返し、こういうことはぞっとする。それが愛情の結果だったのか?そこまでは見えなかったが。U 杉の独占欲と嫉妬、もうそれをどう表現していくかをやってみてもいいのではないか?相手にぶつけていく勢いがもうひとつ、ほしい。N山さん、今日は執着で きた。それだと想う。Mなちゃん、指示をいれないと次の動線が創っていけない。次回からは自発的にね。
Kさわが混線する。暴走する。まったく意味のない動きになったので、止める。目の前でパンと手を叩いた感。ここで、気づかせておかないとへんな方向に走るだろうから。思い切りよく、と自分勝手な暴走は違う。
劇的なことって、何?これからも探っていこうじゃないか!
Mくちゃん、それぞれに反応でき、戸惑い、ずるく立ち回り、かわいくもあり、なかなか面白い子だったね。
想像力がすべて。自由がすべて。
本物になろう。