2009/03/30
夏本公演に向かって。


本日、開かれた稽古場。男優のみ6名の参加。見学2名。いつものように稽古日記を書くが、すでに夏公演の出演者参加の稽古場になったこと もあり、台本より稽古を組み立てた。もちろん、夏公演のためではなく、日常的に訓練するための稽古である。が、上演台本の一部でもあり、さて、どう書くか な。まず、舞台の上で、それぞれの役者が花開くために、存在するためにの訓練。それぞれの宇宙が錯綜することで、そこに宇宙が広がっていく。何かを創り、 表現することは無論芝居であるが、あたしは、そこに存在する役者の魅力を最大限に提出していきたいのだ。ただ歩く、その歩く役者が自由になるまで、繰り返 す。確実に息をして、その舞台空間を楽しむことができたら、たとえそれが1時間続いてもその劇的宇宙はそこにある、とそこを切り取った断片がひとつのシー ンになりたい。
先を予測しないこと、先を観客に想像させること。いきなり、カットされるものでありたい。今日参加の役者たちはそれぞれに存在感を持つ。しかし、その存在 感をさらに強いものにしていきたい。そのためには、それぞれの宇宙を動かし続けることしかない。あたしが惚れている役者たちの魅力は、もっと際限ないもの であってほしい。息使いと身体の美しさと強靱さと心の蠢きを観客席の伝えたい。息が苦しい。止める。もっと自由にと再度。佇みまで。そこから、感情表現ま で。深い哀しみ、強い怒り、大きな喜び。心の蠢きをみせる。決してそれは大袈裟な身振り手振りではないものだ。あたしの芝居に説明はいらない。ただ、確実 に心を動かすことは、観客のこころをざわざわとくすぐる。それでいい。Hくん、少しずつ心が動くようになったが、まだまだ表面的に決着をつけようとしてし まう。Oやさんはもっと深いものになれればいい。しばらくぶりの参加のHでは、これまでにやってきたことが集約できていた。おそらく、まわりにも触発され たに違いない。誰もが、一つ押せば溢れる。そのスイッチを手に入れるのは、想像力しかない。ここでは、晒される。だからこそ、丁寧に想像していけばいい。 何に対して怒るのか、何に対して悲しむのか、何に対して喜ぶのか。もっともっと細部まで、もっとね。
あなたたちは、それができていけば、光り輝く。感情が高ぶった時に次の表現へ変える。心を動かすことを次第に表現にしていく。デフォルメーションしていく。舞台の上で容赦ないぶつかりあいの火花を散らしてみればいい。
Kさわはもっと挑んでいく。折れない。誰一人、折れない持続だ。
格闘技のような、瞬間が欲しいのだ。
観客席への挑戦もしたい。観客席をなめてはいけない。真剣勝負で挑めばいい。観客の筋肉をも緊張させてしまうほどに。
燃えさかる火は熱い。真っ向から火を見せる芝居があっていいじゃないか!
気取るな、すかすな、加減するな。ってこと。
もっと本気で、もっとだな。とにかく、今夏、とことんやってみようと想う。
加減はしない、そんな芝居を。観客の心を揺さぶってクタクタにしたい。
続いて役者をシーン作りから追い込む課題。追い込む、追い込む、追い込む。
ストッパーが外れるまで、しつこく、追い込んでみた。ほんの少し、見えたものがあったくらい。もっと追い込む。それは生への執着や死への畏れにも繋がるほどのもの。
声。声を鍛える。声で刺激したい。声はいい。素晴らしい表現形態だ。
誰にもかなわない声を手に入れてほしいのだ。
形骸化、様式、デフォルメーションの訓練。老人、泥酔者。老人シーン、3連発。リアリズムとデフォルメーションの共存を求める。次第に面白くなった。泥酔 がなかなか面白くならない。酒乱、絡みとアドバイスを重ねて連発してみるが、思い切りが悪い印象だった。思い切りよくやってみる、というところからかな。
さらに殺意の連動課題。殺意を持つためには、想像し、想像し、「ころしてやりたい」感情に辿り着くことだ。殺意を持つ。そして、歩く。佇む。にほいたつ、 殺意の渦。観客が逃げ出したら、最高さ。かならず何かが起こるのが劇的なのではなく、それを予感させることが劇的なのである。
殺意の実行、後悔、発狂。狂気の動線を探るためのエチュード。経過と結果。
狂気の表現、デフォルメーションを試みる。皆、いいものがみえた。さらに追求してみたい。
そして、声。
エチュード。愛情表現とか秋波とか。無対象の相手をおく。無対象のその女性が見えるには、役者が想像力で確実なデッサンをすること。連発するうちに見えてきた。
身体表現。今日の音は土着な印象。想像通りのジャパニーズな動き。あたしはおしゃれに決めたい。おしゃれな混沌とでもいうのかと。
Mもとが混線し、必死で立て直すが、印象としては分析的だった。音から受けるイメージにも広がりがほしい。音との一体感が欠落した本日。
続いて、リアリズムの追求。奇妙な部屋、3連発。今日は掴んだリアリズムを反復することでさらに埋めてほしいと想い、3連発の時間を作ってみた。回を重ね ることで、役者それぞれがそれぞれに埋めたので、面白くなった。自分の部屋に他人がいることの恐怖をMもとは的確に表現した。リアリズムのポイントは非常 にピンポイントなものだと感じた。
混乱したHでがよかった。Kさわは常に冷静な印象。Oやさんは話の組み立てはうまいが、そこにもっとリアリズムがほしい。丁寧な創りを試してみては?
Sたくんは確実にリアリズムを追っているのは好感だが、決め所が弱い。そこを意識してはどうか。Hくんは一カ所、いい驚きをみせた。それが、リアリズムだ。後は軽くいなしてしまう。
警官へのそれぞれの対応。はっきりしないとシーンが濁ってしまう。
何が起きても、そこは自分の部屋なのだと想おうとしている碇。そこからの混乱であってほしい。
最後に相関図。2連発。面白かった。これも対象を具体的に決めていくこと。
水のように自由にシーンを動かしていくこと。愛情が希薄だった。Hくんの2連発目がいいところまできたが、そこより深い愛情がほしい。
泣いてみせるのではなく、泣けてくる。。。そこに辿り着けたら、素敵だ。
時に人の真剣さは滑稽であるのだ。笑わせにいかなくても。

とにかく、スタートラインにスタンバイできた稽古だった。