2009/08/17
本番を走り抜けると階段を昇っているから、次の階段を昇るために尚、訓練する。


開かれた稽古場。参加者4名。見学2名。相変わらず少数の日常訓練なので、繰り返し濃い稽古ができる。感情の瞬発力と持続と変化とリアリズムをあたしの課題にして稽古場に入った。参加者のひとりひとりに対して、アドバイスをしていった。
最近、表現することのひとつの要素として、話術や生き様や恥のかき方がとても大事なのではないかと想う。
言われたことをやるだけではなく、独創性は必要だ。そして、役者それぞれの持つ魅力を最大限に活かしてあげなければならないとも想う。
歩く、心を動かして、想像力を動かして、歩く。心のつぶやきを言葉にしてみる。Yな、まだ舞台には立っていない。だからこそ、正しい居方をまず覚えてほし い。歩き、想像するという姿に物語がみえるようになりたい。M目がは常に自然体で、心も身体も開いていることに好感。広がる世界が日常を離れていけると 尚、いい。O様、姿が素敵。ただ、外への表現に向かう傾向があり、やはり内面の宇宙を抱えてほしい。M本、今日は一環して「かなぶん」だった。
あれはなんだったのか、それはそれで面白かったが、それによる表現の変化には届いていない。歩く、指定の感情を持つ。落胆、絶望、殺意、殺意の実行、達成 感、激しい後悔まで。経過の中で言葉にして表現してみる。声にして表現してみる。その特定の感情を音で表現することで、感情が伝わる。用意された言葉の羅 列は時に感情を削ぐ。何度も繰り返しアドバイスをしていることであるが、生きてきた中で経験していない強い感情もある。その感情を己の中で創り上げるため には、記憶の抽出では足りない。想像の抽出を探すべし。つまり、状況や風景や背景を想像して、その中に己を置いてみるのだ。
殺意、という感情で、観客席を震え上がらせるところまで、強い感情をつかまえたい。さらに感情の変化を演じるのではなく、感じていく。何度か止めて、アド バイスして繰り返すうちに表情も動き、身体も動く。予想もしない表情が溢れてくる。素敵なことだ。瞬間という意識、感情が切り替わる時に内部が変わる瞬 間、それを産むきっかけをはっきり感じ、見ていくことだ。
殺意→実行→達成感。この一連の流れの中で、O様、M本から出てきた「笑い」、まだあたしを納得させてくれる笑いではなかった。今までどこでも聴いたこと のない、そんな笑いが聴きたい。M目がは繊細な表現でとてもいい。ただ、感情の沸点が今ひとつわからない。心がざわざわではなく、グランぐらんと動くよう になりたい。Yなは、まず諦めずにしがみついてみること。すぐにはできない。けれど、かならずできるようになる。しがみついて、しがみついて、繰り返せ。 強い後悔、それによる歩き、佇み。声か息づかいか涙か、到達していかない感あり。
続いて、エチュード。死体のある風景。愛する人の死に直面したときの感情の変化、他の異姓の存在に気づく、それに伴う感情の変化。以上を丁寧に。
エチュードをやることで、思いがけない感情の動きに気づくことがままある。頭で分析せずに、心の動きに準じてみる。
M本の対面はとてもよかった。O様のすべての力が抜けた泣きが近い将来みたい。M目が、秀逸、しかし、途中から頭が動き始めてしまい、感情が置き忘れられた。こういう流れは非常に惜しい。
O様M本が、感情を言葉で埋めすぎた。言葉のない漂う時間、そこに気持ちが動いていればいい、沈黙が欲しかった。
Yなは状況に実感がない。話を作っていかずに、まず深い哀しみの感情、嫉妬の感情を課題とする。
涙。必須。
台詞。金杉忠男 「説教強盗」より抜粋。光枝と男と説教強盗のシーン。
役作り、笑い、様式のどれもが必要とされる戯曲である。この3点がバランスよく共存してほしい。
どの役も生きた人間である。類型的にならずに人間臭い役作りをしてほしい。
Yなは声を出し、言葉をぶつけていく訓練のため、O様、M目が、M本には細かい役作りと笑いを求める。
台詞を分析はしないが、その人間でありたい。今後も役作りのために台詞も取り入れていく。
この戯曲には様式もある。様式が笑いを産む場合もある。徹底した型。
はじめに台詞ありきの戯曲を相手にいかに自由に存在するか、今後も課題にしていこうと想う。
役を入れ替えて、4連発してみた。何よりも楽しんでやってくれたので、活き活きしたいい稽古だった。
続いて、身体表現。今回の音は最高だった。Dさんもいいものを創ってくれるようになった。今後も楽しみ。さて、身体表現。全員よかった。集中していくこと しかない。前回より(公演後の課題も含め)踊りや表現としての訓練も入れている。陶酔し、集中していく中にテクニックも身につけたいのだ。
リズムを身体に入れていくために。
今回の表現の中で一体化が物足りなかった。他の表現者をもっと感じてほしい。
最後に恒例相関図。Yなを巡る。愛情シーンより入る。1分の愛情表現。
それぞれに味があった。
相関図。面白かった。それは笑いの要素だけではなく、感情の動きがそれぞれに見て取れたからだ。笑わせるためではない中での笑い、これもまた歯車ひとつで空回りする。意識と無意識とのバランスだな、と感じた。
たとえば、含みのある言い方で、何かを伝える方法、表情が何かを伝える場合もある。感情と理性と。だんだん面白いシーンが産まれるようになってきた。
稽古はつよかれ。
さらに階段を昇りたい。たとえば、来年の公演まで1年、日常訓練を忘れずに繰り返せば、かならず進歩する。やるしかないのね。
でも、けどはいらないので、稽古をする習慣、それはたとえば歯磨きのような日常的な習慣を身につけるべき。