2008/01/14
ひとつ

芝居は勝ち負けじゃないんだよ。これ、あたしの口癖だ。そして、芝居への想いだ。誰がよかった、とか悪かったとか、そういう劇評ばかりの評論家さんたち、大嫌いさ。誰がよかった、を見せたくて芝居を創ってるんじゃないし、芝居に出てるんじゃない。若い頃からよく言われたな、あいつに負けてる。あいつに勝て。その頃から、あたしの目指すものは「アイツ」という特定の俳優ではなかったので、ちっとも効き目なしだったけど。
だヵら、あたしはある特定の女優さんに嫉妬したりはしないわけ。だって、あの芝居はよかったね、とそう言われたい。きっとそういういい芝居は登場人物、全員がいいのだ。卵が先か、にわとりが先か、論法ではなく、絶対そう信じる。
だから、たとえばうちの座組で「勝ち負け」の話が出れば、制する。これからもそうだ。みんなで勝っていこうじゃないか、ええじゃないか。
勝ち負けで引っ張り合う足を無くせば、きっといい芝居になる。みんなががむしゃらになる。みんなが己を真摯にみる。他の俳優をまっすぐに認める。
これよ、これ。良い芝居はこれにつきるのよ。
今日は、恒例開かれた稽古場。あたしが稽古で目指しているもの、それは「芝居は共同作業である」という意識だ。今日の稽古で、少しレベルアップしてきた。嬉しかった。はじめての人もいたけれど、みんなについていた余計な見栄やはったりがボロボロと落ちてきた。この稽古場、最高よ。
まず、発声。とにかく強い声を獲得していきたい。いつかニューヨークの大舞台に立っても、マイクのいらないアングラ芝居がやりたいからね。
少しづつ、メニューをきつくしていく予定でいる。新年2回目、腹筋を使いながらの声の伝達。声を伝達していくので、リタイアしない。身体がふんばる。意識もふんばる。そして、声も強くなるのだなぁ。
立つ。不安定な格好で立つ。身体の使わない筋肉への意識、筋肉を意識しながらの声。これも声を伝達する。つまり、他の俳優の声を感じていく。さらに不安定を維持しながら、歩く。歩くという行為の発展。イメージを持つ。というより、イメージが連鎖して生まれてくるのだ。これは皆の表情まで変わり、効果大。M本はじける。Kぞう、混沌としていく。Nちゃんは具体的なイメージを追う、つまりイメージの維持ができるので、これからは一度そこから飛び出してみてはどうか、と想っている。
音を身体に入れて、楽器になる訓練。何度も繰り返してきたので、今日の相方の選曲は複雑なもの。予想を裏切る曲、とも言えない音の連鎖。あたしもやってみたが、こうなると頭で何かを考えていては身体は反応していかない。
声、他の俳優からの刺激への反応、能動的な刺激、どんどん広がっていく。これも成果がみえてきた。今日のM本はよかったなぁ。
しかし、お互いに刺激しあう、それに対して反応するということまでは、まだまだ。きっかけの声を飛ばすとそれぞれが呼応するが、それが自発的に出てくるようになりたい。まだまだ時間はかかるかもしれないけれど、かならずいい表現が生まれるだろう。踏ん張ろう。
めざせ、混沌だ。
エチュード連発。まず、愛情の伝達。言葉での説明が愛情を希薄にしてしまう。説明はいらないな。的確な言葉選びも必要かもしれない。
ひとりの女優に俳優全員が愛情を伝達する。無理に反応しなくてもよい。
最初の連発。言葉が空を舞う。Yとから言葉を取り上げてみる。二言だけ、と縛る。少しよくなる。が、燃える様な愛がみたいなぁ。
男優に女優が愛情表現。Tえは、相手を見つめ続けることで愛情を自分の中から引き出そうとする。それは、つらい。きっと相手もつらい。何度もやっているNちゃんでも反応が出ない。いつか捨て身で人を愛してほしいと親心のような感じ。
参加2回目のEなの体当たりながら、優しい愛情表現はよかった。相手役の手がすっと伸びた。いい表現だったね。
愛情も一方的ではないのだよね。
丁々発止といかずとも相手が見えて、相手を感じてということね。
N山さんも少しずつ柔らかくなってきた。固いガードを破りたいね。
M本、今日は連鎖なのか、愛情も優しかったねぇ。本人、気づかずかしらん。
死への反応。自殺の発見。まず、発見した瞬間、みんなできてきた。その先が問題だ。次に何かをしようとしてしまう。こころのざわざわをそのまま、そのまま。いつか叶うかな。
Nちゃんはイメージがどんどん強くなる。そうだ、こういうエチュードを繰り返すと死んだ人のもの凄い顔まで見えてくるようになるんだよね。もっともっともっと極めて下さいませ。
Tえちゃん、いいんだ。あの嗚咽、叫び。それをなぜ押さえてしまう?何が怖い?ここにはあたしがいる。もっといっていいよと言う。さてさて。
あがきながら、バランスをとればいいんだから。
みんな、きちがいさ。
初参加のMこ、愛情を受ける反応はとてもよかった。死への反応がかなりの叫び声を連続したが、あたしは納得できなかった。何故だろうなぁ。
恒例、交歓図エチュード。あん、愛情が見えない。なんだ、みんな、そんな風にうまく人生渡ってきちゃったぁ?という感じ。平和もいいけれど、戦闘も大事だと想ったり。
ただ、演劇意識が声からも会話からも見えてきた。思わず吹いてしまう。これは目的違いだけれど、それはそれで収穫。みんなが柔らかくなりはじめた結果。しかしだ、気持ち、こころ、愛情、嫉妬、憎悪、独占、悲嘆、そんな感情の渦がみた〜い。
コメディとしては、良い場面2シーンほどありだけど。苦笑。
Kぞう、あなたは芝居が好きなんだね。これって、すごく素敵なことだ。感心した。
Nちゃんは逆ギレをする。これが愛しい。人間っぽい。好きだわ。
理屈じゃないよね、感情って。そんなシーンがいつか叶うかな?
そうそう、久しぶりに精神病院、それぞれとこれからも探っていきたい。狂うこと、および狂気。
今日は、晴れやかな気分、良い稽古だった。
しかし、もっともっともっともっと。