2009/12/14
時には女優を思い出してみる

開かれた稽古場。懐刀になりつつあるM本とあたしのふたりだったので、2時間、あたしは女優として稽古に参加した。
日常訓練の稽古場を開いているもうひとつの意味は、あたしこそ稽古をすることを忘れないためでもある。
歩く。歩くというところからのシーン作り、連発して3シーンは創ろうと想って挑む。1シーンずつリスタートする。歩く、他者の存在を感じる。そこから、さ らに劇的シーンを創っていく。1本目、視線を感じる。振り返る。探る。誰だろう?呼び止められる。逃げる。執拗に追われる。あ、知っていた、知っていた、 過去に。そして、去る。2本目、歩く、風景をみる。あれは何?赤い太陽と相手は答えた。太陽を見ると耐えられない熱さ、身体が熱く、そして痛い。七転八倒 する。助けてよ。青い太陽を見る。身体から熱が逃げていく。歩きはじめる。ふと気付くと太陽が落ちてくる。大きな大きな物体、まるで風船。戯れる。繰り返 しているうちに指先が熱くなる、痛む。押し潰される。身体がやけだだれる。
3本目、まず様々な感情を動かし、歩く。そこから、シーンを創った。どこにいっていた?と男は恐ろしい形相、そんな顔で見ないで、答えたくない。その顔、 その声、やめて、もういや。あたしはもうここにいられない、いたくない。男が止める。いやだ、いやだ、いやだ。男はわかったよ、と言う。出て行けよと言 う、いやだ、出ていきたくない。あなたは壊すことが好きで、あたしは壊すことが嫌い。どうすればいいのかわからなくなる。男は聞く、どこに行っていたのか と。どこにも行っていない。ここにいたくないだけ。
ジグソーパズル。男は壊す。これをもう一度創れと言うの?
死の発見から諦めまでの表現と感情の課題。M本、素晴らしかった。
続いて、懇願3連発。あたしは反応と役作りに徹した。面白かった。
さらにエチュード。余命。切り出した死が現実と虚構の狭間で揺れる。M本の反応が繊細でよかったので、あたしの中にも実感がどんどん増えていった。
余命、M本、無対象の相手に。からりとした宣告で哀しかった。大袈裟な表現よりもやはり実感だと感じた。
ひとつひとつのシーンに没頭できたので、シーンはよく動いていった。
収穫多し。
台詞。先週から取り組んでいるピンター作品。男と女の会話。途中記憶のずれとジェラシー、愛情についてバランスを話し合いながらやってみた。
4回。少しずつ掴めてきた感触。
間口が広くて、正解がいろいろあるようで、この作家は面白い。さらに挑みたい。
2時間、ほぼ全部に参加してみた。さび付きたくないから、磨くのだ。
ただ、それだけ。楽しかった。稽古はいいな。